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遙かなるかな空と海 外伝  作者: かなみ
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第一節 あの高い雲を追い

遙かなるかな空と海 外伝『海と空と船に』


第一節 あの高い雲を追い



ルヴィシー丘陵攻防戦が終わり、再び三月のウサギ号は空へと飛び立つ。

再びエルヌコンスの騎士達を乗せ、リツカが気まずそうに、妙に笑顔のプラニエを迎えた。

船体に負った損傷の補修のためひとまずクトリヨンの港へと帰港した三月のウサギ号。

それから日が経ち船の補修も目処がついた頃、キュイーズ共和国からの客を迎える所から事は始まった。


「テゴリーボワーまで輸送?」

この船、三月のウサギ号の船長というリツカちゃんが怪訝そうな顔をする。イイ。

「そう。この箱と、我々二人を送り届けて貰いたいのだが」

船長室でテーブルを挟み相対する俺とリツカちゃん。あと猫とベリなんとかさんがそれぞれ後ろに控えている。

「報酬は?」

「そうだな…前金としてシュトゥン金貨五万。成功報酬でさらに五万で如何か」

「相場の倍以上…ね。しかもシュトゥン金貨と。それが、大人しくレユニース通らないでウチに来た理由?」

リツカちゃんが黒縁の眼鏡をキラリと光らせる。船長らしい責任感の現れって所かな。

「その辺は推察にお任せを…ま、当然危険手当込みです」

「危険手当ねぇ……」

そう言って後ろに控えているベリ何とかさんをチラ見する。それに不敵な笑みで返すベリなんとか氏。

軽く舌打ちをして向き直る。ツンデレ?

「…ま、いいわ。受けてあげる」

「それはありがたい」

「ただし、この船に乗る以上はあたしの指示には従ってもらうから」

「それは勿論」

メガネ美人の言いなりっていうプレイも悪くないな…女王様か、女教師か……!

「フレームッ!!!」

「あ」

「おいちょっとこの猫いきなり延髄に蹴り叩き込んだ挙句『あ』とか言いやがりましたよ?!」

勢い任せに立ち上がる!首がちょっと曲がってる気がするけど気のせい!

「……」

「……」

「……あ」

リツカちゃんとベリなんとかさんの視線が突き刺さる。ちょっと快感。

「本性出しちゃったにゃね」

「お前のせいだろぉぉお?!」

この猫どうしたらいいの?!

「…やっぱり断っていい?」

思いっきり顔を引き攣らせつつリツカちゃんが言う。

「あ、いえ、すいませんごめんなさいお願いします」

ここはプライドを捨てて土下座するタイミング!

土下座っていうのは商人の間では必殺技なんだぜ!

「……先に言っておくけど。うちの船員に変なことしたら空に放り出すからね」

「いやまぁそっちの気は無いんで」

リツカちゃんなら超おkなんだけど。

「…部屋は集会室を使って。ベリスカージ、後は任せるわ」

疲れた様な、もうどうでもいいみたいな感じで手をひらひらさせる。

「あい、お嬢。ご案内いたしやしょう」

「ありがとうございます」

というわけで、THE海賊さんについて部屋を出る。出際にリツカちゃんに流し目を送るもこっちを見ていなかった!残念!


ベリ何とかさんについて通路を歩いていると、先の方から良い匂いがしてきた。

これは…出会いの予感…?!

「ん…ベリスカージ殿。客人ですか?」

「おうお姫様。今回の依頼人さぁ」

綺麗に結われた金髪にまだ幼い顔立ち。ドレスが似合いそうな細身の身体には騎士の平服を着用している。

これは是非ともお近づきになりたい!否、ならねばならぬ!!

「お初にお目に掛かります。私、キュイーズ共和国にて物流の一端を担っております、バッジェーオ伯プリーコと申します。以後お見知り置きを」

できるだけ丁寧に一礼をする。第一印象大事。

「これはご丁寧に痛み入る。余は、万神の加護厚き偉大なるエルヌコンス王の忠臣クロンヌヴィル侯爵ジュリアル・ダルタン・ランサミュラン=ブリュシモールが娘。プラニエ・ファヌー・ランサミュラン=ブリュシモールと申す」

プラニエちゃんも騎士としての一礼を返してくれる。ロリ騎士超かわええ。何このエロゲ。

ん?クロンヌヴィル侯爵?

「思いがけず大物が出てきたにゃね」

後ろに居たはずの猫が突然出てきた。

「ちょ、おま、主人差し置いて前に出るとかどういう教育受けてきたわけ?」

「え…猫の、耳……?」

フェスの頭でぴこぴこ動いている耳に目を奪われている姫騎士たん。

何か軽く恋してるような目になってるよ?でも視線の先が違わないかな?

「フェスは猫の亜人にゃよ。ヴィリヤンティエに住んでたけど、ちょっと事情があってこの変態の所で働いてるにゃ」

「ナチュラルに人を貶めるのはやめないか」

「猫の亜人…初めて見ました。ヴィリヤンティエの奥地には亜人種が住んでいるというのは本当だったのですね」

姫騎士たんもナチュラルにスルーするし!いきなりの放置プレイ!!胸熱!!!

「フェスはフェスティーナっていうにゃよ。フェスでいいにゃ。プラニエさんよろしくなのにゃ」

「あ、こ、こちらこそ」

フェスが差し出した手に、慌てて応じる。

あれ?何か態度が騎士っぽくなくね?普通の女の子っぽいよ?

「時に、クロンヌヴィル侯爵家のご令嬢ということは、先のルヴィシー丘陵攻防戦での英雄?」

「あ…いえ。英雄などと、過分な風潮に過ぎませぬ。余はエルヌコンス王の忠臣として、当然のことをしたまで」

驕るわけではなく、しかしどこか誇らしげに胸を張り答える。危うく張ったがまだまだ発展途上な胸に手が伸びそうだったぜ…!

「それでも、ご活躍は聞き及んでおりますよ。わずか一握りの手勢で、かのオージュサブリス聖騎士団の猛攻を食い止めたと」

「それは誇張が過ぎるというもの。実際の所は、この三月のウサギ号の助けあってこその勝利でした」

『三月のウサギ号』ってあたりが一番誇らしげだった。よほど信頼とか愛情とか深いんだな。

「なんて良い子…何かこう、膝に乗せて撫で回したい…!」

「え…っ?」

「変なもの漏らすにゃ!!」

「モエキュンッ!!!」

お前こんな狭い通路で回し蹴りとかやめろよ!ほらプラニエたん目まん丸くしちゃってるし!超かわいい!

「そろそろいいか?とりあえず案内しちまいてぇんだが」

一連の流れを笑いながら見ていたベリ何とかさんが肩に手を置く。

実際に触れるとやたらごつくて怖いなこの手!トマトみたいにブチャァしそう!!

「たまに中身ぶちまけるといいにゃ」

「一回やったらおしまいだよ!!あと心の中読むなし!」

「がっはっは!中々楽しい事になりそうじゃねぇか!」

「え、えと…」

ベリ何とかさんが大笑いし、プラニエたんが未だにおろおろしている。


何はともあれ、ひとまずは依頼受けて貰って最初の山場は越えたかな…

残る問題は………と。

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