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遙かなるかな空と海 外伝  作者: かなみ
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序章

遙かなるかな空と海 外伝『海と空と船に』


序章



「ついに ねんがんの ぶつを てにいれた ぞ!!!!!!!!!!!!!」

「うるさいにゃ!!!」

「アイスソゥッ!!!」

にゃっぱっか!!!

冒頭から下顎揺らしてくるなよ!いきなり話終わっちゃうだろ!!

「んん。フェス君、このバッジェーオ伯プリーコに何をするのかね」

金髪碧眼ド級イケメンのこの私、プリーコ・バッジェーオ伯爵は、ここキュイーズ共和国に居を構えている。

土地柄もあり、主に交易品の流通を扱っているのだが、どっちかってーと商人だなこれ。

まあ副業ですよ副業。だって伯爵としての仕事なんてほぼねーし。

「伯爵だろうが何だろうが、うるさいものはうるさいにゃ」

そして今このイケメンににゃぱかー…猫の亜人が繰り出すアッパーをかもしてくれたのが、私の付き人であるフェスティーナ君だ。

彼女はヴィリヤンティエの奥地に隠れ住む亜人の出らしい。

なんで出てきたのかは知らんが、とりあえず仕事くれっていうから付き人にしてみた。

いやだって珍しいじゃん。レアな猫を懐に収める器量持ちっていうステータスよステータス!!

これで箔がつくってもんですよ!伯爵だけにな!!

「うるさいからっていきなり手出すのは付き人としてどうかと思うな私ぁ」

「付き人だからこそ、主の馬鹿な振る舞いを諌める義務があるにゃ」

耳含めて私の肩くらいしか無い背のフェス君が、下から睨めつけてくる。

これが潤んだ瞳で上目遣いだったら萌えキュンなのになぁ。

「んまぁ、それはいいや」

「いいにゃか」

「それよりも、だ。可及的速やかに出かけるぞ」

帝国自由市テゴリーボワーに居る友人に頼まれていたブツが、ようやく手に入った。

中身は…まぁ、ちょっとやばいブツなんで厳重に木箱の中に収めてある。

「どこ行くにゃ」

「テゴリーボワーのプスィコに届け物だ。そのためにまずクトリヨンまで行く」

「プスィコって、プスィコ・パーティコ伯爵にゃ?」

「そのパープー」

我ながらナイスネーミング。

「で、なんでわざわざクトリヨン行くにゃ」

何だか今日はやけに詮索するね!

「ちょっとやばいブツなんでな…道中何があるかわからんので、念には念をな」

「それは、投獄されるレベルなのかにゃ…?」

「んん…そこまではいかんだろうが……まぁ、たまにはこういうのも扱わんと真っ当な商売だけじゃちと苦しいし」

実際、言うほど苦しいって程ではないのだが、豊かになるほどでもない。

なので、たまーにこういうちょっと法に触れたりかすったりする物も扱う事がある。勿論内緒でな!

で、今回は友人でもあるプスィコからの依頼ってのもあって、万全を期したい。

「まぁ、その辺については別に突っ込む気は無いにゃ」

すぐ手が出る事を除けば割りと優秀なんだよな。色々と。

「そんな訳で、ちょいと輸送を依頼しに行く。勿論我々も同行する形でな」

「で、なんでわざわざクトリヨン行くにゃ」

それ2回目な?

「情報を得てな。今クトリヨンに三月のウサギ号が居るらしい」

「三月のウサギ号って……海賊にゃ!!」

「そうだよ?」

「海賊に輸送頼むにゃ…?」

すげーなんとも言えない目で見てくる猫。

「やばいブツだから、真っ当なルートは使えん。なら、どうする?」

「んん、まぁ…そうなるのか、にゃ…?」

こういう危険な橋渡るのは初めてだからなぁこいつ。まぁしり込みする気持ちもわからんでもない。

海賊といえば、荒くれ者の代名詞だ。人様の船襲って生計立ててるようなアレな連中だからな。

俺だってあんま関わり合いたくはねーけどな?

「ただ、三月のウサギ号は今、エルヌコンスの私掠船という扱いになっている」

「つまり?」

「ちゃんと金を払えば信用に値するって事さ」

おk?

「んー…その辺はよくわからにゃいから、任せるにゃ」

良い意味で適当だよなお前。そういうとこ、好きだぜ。

「ラビュー!!!」

突然壁に掛かっていた剣の柄の方で下から殴られた!剣の使い方違うっていうか中心殴っちゃダメだろ男として!!!

「何か変なこと考えてたにゃね」

別に変じゃねぇし!ていうか心読むなし!!!

「えぇい、そんな訳ですぐに出かけるから用意をするのだ!」

「はぁ…まったく。今日は花壇の手入れでもしようと想って居たにゃのに…」

ぶちぶち言いながら部屋を出て行く猫。あいつ本当に俺の付き人なのかな。


「という訳でやって参りましたクトリヨン!磯くせぇ!」

「当たり前の事をいちいち叫ぶにゃ!!」

「ワカメッ!!!」

突然全身に海藻がまとわりついてきた!ぬるぬるするぅ!!

お前これミネラルたっぷりとかうるさいよ!ミネラル系男子とかどこに需要あんだよ!

「で、目的の船はどれにゃ」

「さぁ」

あ、待って。サンゴはきっと痛いからやめて。

「こないだのルヴィシー丘陵攻防戦で傷ついたの直してるって話だし、海賊船が堂々と港にいるのもアレだし、旗下ろしてんじゃねぇかな」

いくら私掠船っつっても、さすがにねぇ。

「あそこの人に聴いてみるにゃ」

言いつつ走り始める猫。いきなり野生全開か!これは期待していいのかな?何に?

「ん?なんだお前ら」

ていうか、凄く『我こそ海賊』を地で行ってる感じなんですけどこの人。赤髪隻眼だし。

「それは偏見の類だと思うにゃ」

「だから心読むなし」

「何か用か?」

あぁほらおっさんに完全にターゲッティングされちゃったし。

「えーと、三月のウサギ号ってどれか知ってます?」

未知との遭遇。ファーストなんちゃら大事。

「ん…?何か用か?」

このおっさんNPCか。同じセリフ吐いたぞ。

「ですから、三月のウサギ号をですね?」

「俺はそこで掌帆長やってるベリスカージってもんだ」

いきなりビンゴ!!野生あなどれねぇな…おいフェス君なんで市場の方見てるのかね。いきなりやる気ゼロとか泣いちゃうよ?

「これは失礼。私はキュイーズ共和国のバッジェーオ伯プリーコという者です。三月のウサギ号に依頼があって参りました」

「お前丁寧語とか知ってたにゃか」

「水指すなよぅ!海だからってよぅ!ていうかいきなり戻ってくんなよぅ!そもそもお前って言うなよぅ!」

「うるさいにゃね…」

何この扱い!新しいプレイか何かなの?!

「あー、なんだ。芸人かお前ら」

「あいや、ちゃいます。マジモンで依頼です」

ほらキョドって言葉変になった!!

「ふぅん…」

何かアツイ視線で俺たちを眺めているベリなんとかさん。そっちの嗜みはないよ?

「…まぁ、依頼ならうちの船長に話してくれや」

そう言って背を向けて歩き出す。とりあえずついてきゃいーのかな?

ああこれフェス君。そっちは市場であって逆方向だよ?


―――序章 完

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