そして愛は確かめられた
登ってきたときの石段の数は41 段。
「降りるか」
そう言って拓也は由美の手を握ろうとする。しかし、由美は素早く手を引っ込めた。
「降りるときは、手を繋がないんだよ」
「そ、そうだったな」
拓也はこの石段を降りるのが怖かった。それでつい、由美に触れたいと思ったのだ。
もう拓也は石段だけを凝視していた。
「じゃあ、いくよ、 せーの」
大丈夫だ。何も起こらない。
拓也は自分にそう言い聞かせて、震える足で一段目を降りようとしたそのとき。
ドンッ
拓也は何者かに押されて石段を転げ落ちた。
拓也は石段の下まで落ちていた。かすかに意識はあるものの、体は痛みで動かなかった。
コツ、コツ、コツ
「・・・さんじゅうはち、さんじゅく、よんじゅ」
誰かがゆっくりと、石段を数えながら降りてくる。
グリッ
その何者かは横たえる拓也を
「よんじゅういち」
と言いながら踏み
「よんじゅうに、っと」
と言ってその何者かには石段を降り終えた。
「あーあ、段数、違ったね。拓也」
ゾクッ
またあの視線を感じた拓也がなんとか見上げると、無表情の由美が殺意ある目で見下ろしていた。拓也は石段から突き落としたのは由美だと悟った。
「ゆ、ゆみ・・・」
「私たちの愛は偽りだったね。そりゃそうだよね、だって拓也は私に隠れてこんなことしてたんだもんね」
抑揚のない声でそう言うと由美はしゃがみこみ、カバンから一枚の写真を取りだし、虫の息の拓也に見せた。
拓也は目を見開く。写真には拓也と由美ではない女の子が、公園のベンチで体を寄せあい、あつい口付けをしている場面が写っていた。
「私は本当に拓也だけを愛してたのに、拓也は私をもてあそんでただけだった」
由美は今度はカバンから鈍く光る金槌を取り出す。
ウウウ・・・
拓也は恐怖で顔が固まった。
「私だけを愛してくれない拓也なんて、いらない」
由美は金槌を振り上げる。
「さよなら、拓也」
そう言って、動けない拓也の頭めがけて金槌は振り下ろされた。
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