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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あなたと一緒なら

作者: Flow☆

今回はそれなりに長いです。メールで友達に送りつけていたのを改変してるので若干文章に不備があるかもしれません。それと最初から最後までよくわからない単語しか出てきません。そういうの苦手だよーって人は注意。

世界観とかはそうなんだ程度で感じてくれればなおよしです。

後史歴1536年8月14日、カッカド平野。

ここはウェンラッドとイーヴェの国境線が存在する両国の外れの地。ここでは幾度となく両国の攻防が繰り広げられている。


「…作戦は以上だ。各自上手くやれ」


部下の返事を聞いた大尉でありこの第3小隊隊長である彼女は、長く続く侵攻戦をこれ以上続けるのは如何なものかと考えながら、晴れ渡った空を眺め一月ほど前のとある出来事を思い返していた。



たしかその日も気持ちのよい快晴天だった。

そのときは一時休戦中で、たまたま次の侵攻戦の作戦を考えるためにその地へ赴いていた。


「広い平野地帯だけあって、使えそうな地形はほぼ無いな…」


驚くほど平らで傾斜のない地面をしばらく眺める。


「ダメだな。やはり統率力と火力を強化するしかないか…」


諦めて帰ろうとしたとき、視界のはしに何か動くものが映り込んだ。

近くに行ってみると、20代くらいの女性が仰向けになって寝転がっていた。


「おい…大丈夫か?」


寝転がっていた女性は体勢はそのままに、瞳だけをこちらに向けた。


「私がそんなに危険に見えて?」


「いや、そんなことはないが…いくら休戦中と言っても、ここは国境付近だ。早く自分の国へ帰った方がいいと思うのだが」


「あら、あなた優しいのね。軍人ってみんな怖い人ばかりだと思っていたわ」

彼女の言葉で自分が軍服姿と言うことに気がついた。やはり毎日の癖はそう簡単に直らないか。


「そういうあなたはどうなのだろうか」


「私?私は…どちらかしら。あんまり深く考えたことなかったわ」


彼女は身を起こして立ち上がった。並んでみると、身長は彼女の方が少し小さいくらいか。


「そういえば、お互いにまだ自己紹介してないわよね」


「そういえばそうだな。私はメルヴェ・アルペティカ。ウェンラッド公国軍所属士官だ」


「私はアイリス・シエル・オルスター。イーヴェ王国に籍を置いてるわ」


「イーヴェ王国…つまりあなたは」


「あなたの敵国側の人間、と言うことになるかしら」


「…」


不覚にも、私は敵に話しかけてしまったわけか…


「そんな怖い顔なさらないで?私はあなたの事を騎士団に教えるつもりはないし、あなたとはもっとお話をしたいと思ってますわ」


「しかし…私たちは仮にも敵国同士。もし他の誰かに見られたら…」


「その時は私が適当にごましますわ。だから、これからも私の話し相手になってくれませんか?」


「わ、私でいいのなら構わないが…」


「じゃあ決まりですわ♪これからよろしく、メルヴェ」


この日から私たちは毎日のようにこっそりと会い、お互いの他愛もない世間話に華を咲かせるようになった。そして日を重ねて会うごとに、私たちはお互いに惹かれ合っていった。その恋は一般的にも、政治的にも許されざるものだったが、それでも私たちはこの憩いを止めることはなかった。


「また、ここで戦いが起きるのよね…」


「ああ。もう布告は行われたから、一月の内に始まるだろう。また、大勢の尊い命が失われてしまう」


「それだけじゃありませんわ」


アイリスは私に寄り添って下を向いた。


「あなたと、メルヴェと過ごすこの時間もなくなってしまいます…」


「アイリス…」


「イーヴェとウェンラッドも、私たちのように手を取り合って歩んで行けばいいのに…」


「上の連中は、自国の領土と権限を広めることしか頭に無いんだ」

以前、私も何度か同じようなことを上に言ったことがある。しかし返ってくるのは「却下」の二文字ばかりだった。


「イーヴェも同じようなものですわ。和解の可能性は皆無、侵攻には報復を…の一点張りのようで…」


「せめて私たちだけは手を取り合っていよう。国同士が対立して、私たちの絆を引き裂こうとしたとしても」


「ええ。約束です」


そして、私たちはこの世で最も重く、絶対的な誓いを交わした。



「隊長!敵です!!」


部下の声で我に返ったときには、敵は視認できるところまで迫っていた。


「よし、A班は右翼、B班は左翼、残りは私と共に中央突破だ。作戦開始!!」


「ラジャッ!!」


前回の侵攻戦で猛威を振るったアクセル式居合銃刀「シラヌイ」を、今回の侵攻戦では量産型モデル「コンゴウ」に改良し、全尖兵及び前線小隊各員に貸与、使用訓練させている。今回はイーヴェ戦線に大打撃を与えられるだろう。

問題はイーヴェ王国騎士団の士気の要、全戦全勝を誇る勝利の象徴…王女直轄小隊マリアングラード。

イーヴェ王国王女が直に指揮を執り、戦線を駆け巡るその姿についた異名は「汚れ無き勝利の風」。ここさえ崩すことができればイーヴェ軍は壊滅したと言っていい。この無駄な争いもここで終わらせることができる。王女は殺してはダメだ。生きたまま捕えることに意味がある。


「!!」


あの白い甲冑は…間違いない、マリアングラード!!


「これよりマリアングラード無力化作戦を開始する!第3小隊各員は第4、第5小隊と共に敵の攻撃を凌げ!!合図があり次第マリアングラードを包囲、各個撃破せよ!いいか、殺さず捕虜にするのだ!!」


「ラジャ!!」


「行くぞっ!!」


マリアングラードの兵たちから王女を引き離し孤立させる。

王女は一人だけ兜も被っていて、顔は見えなかった。


迷うなメルヴェ。迷わず素早く王女の戦力を奪うんだ。


「はぁぁぁっ!!」


「っ!!」


戦場にかん高い金属音が響く。

初撃は王女の剣によって弾かれた。ここまでは想定通り。勝負はここからだ。


「はっ!はぁっ!はぁぁっ!!」


流れを殺さず、間髪入れずに刀を振るう。しかし王女は冷静に、的確に攻撃を弾いてくる。これもまた想定済みだ。時間的にはそろそろか…


「!?」


一発の信号弾。それと同時に部下たちがマリアングラードを一斉に囲った。それに一瞬怯んだ王女の隙を、私は見逃さなかった。


「そこだっ!!」


渾身の一撃で王女の顔を被っていた兜は弾き飛ばされた。そして、兜の下の顔を見て、私は驚愕した。


「お、お前は…!?」


兜の下から出てきたのは、私が見間違う筈がない、私が最も愛するアイリスそのものだった。


「なぜアイリスがマリアングラードに…!?」


「ごめんなさいメルヴェ…私はアイリス・シエル・オルスター。もう一つの呼び名は、イーヴェ王国王女アイリス…」


「なっ…!?」


なん…だと…


「隠してた訳じゃないの!!あなたの事もお父様には話してない!ただ、私が王女だって知ったら、あなたが遠くへ行ってしまいそうで…離れられるのが怖くて、それで…」


「アイリス、私は…」


私は今まであらゆる策を練り、講じてきた。いままではそれが自分達のためになると思っていた。しかし、二つの国を…私たちを救う方法は、もはや一つしか思い付かなかった。


「メルヴェ、何を…」


「すまない、アイリス…っ!!」


アイリスの足元に鮮血が流れ落ちる。


「なん…で…メルヴェ…メルヴェ!!」


彼女の剣で自らの腹を貫いた私は、痛みを堪えながら地面に膝をついた。


「聞いてくれアイリス…私は軍の戦術兵器開発に深く携わっている…上も私をそう簡単に見殺しにしないし、技術漏洩も全力で阻止するだろう。だから…」


だから、これから私の言う通りに動いてくれ…


「ウェンラッドの者たちよ、あなたたちの指揮官は私が討ち取りました。これ以上の抵抗はもはや無意味です」


「そんな…隊長が…!?」


アイリスは血まみれでもはや虫の息のメルヴェを地面に置いた。


「隊長!!」


「私も無益な殺生は避けたい。そこで、この方を助ける代わりにウェンラッド公国軍の最高指揮官の方に提案を持ちかけようと思います。どなたか繋げる方はいますか?」


「…」


「立場を勘違いしないでください。これはお願いではなく譲歩です。あなた方にその気がないのなら、私たちは躊躇い無くあなた方を殲滅し、ウェンラッド公国を滅ぼします。帰る国を無くしたくなければ、おとなしく従いなさい」


「くっ…わかった。少し待ってくれ」


兵士たちは観念したのか、アイリスの言うことを聞き入れた。


「国境侵攻隊から本部へ。非常事態につき取り急ぎアレイスター中将へ繋いでくれ。繰り返す…」

一、二分後、兵士は通信機をアイリスに渡した。


「私はイーヴェ王国騎士団、アイリス・シエル・オルスター。そちらのメルヴェ・アルペティカ大尉を先刻確保いたしました。そちらの機密を持ち出されたくなければ、私と対談していただきたい」


二、三回言葉を買わした後、アイリスは通信を切った。


「彼女の手当てをお願いします。終わり次第、私含め太陽の騎士はウェンラッドへ向かいます」


「イエス、マイロード」


止血はすでに済ませていたため、メルヴェは辛うじて一命を取り留めた。


「では、案内していただけますか?くれぐれも変な気は起こさないように」


「くっ…」


アイリスたちマリアングラードは、メルヴェを連れてウェンラッド公国軍本部へ向かった。


ウェンラッド公国軍侵攻戦本部、アルトハイネス基地


「聡明な判断、感謝致しますわ。アレイスター・マクレーン中将」


「…で、何が望みだ?」


「大したことじゃありませんわ。我がイーヴェ王国への侵攻を断念していただきたい…ただそれだけですの」


「はっ、簡単にいってくれるわ。我々ウェンラッドがどれほど貴殿の領域を欲しているかはわかっているだろうに」


イーヴェ王国領には貴金属、レアメタル、燃料資源などの埋蔵資源が向こう1万年以上も眠っていると言われている資源大国である。一方ウェンラッドでは資源の枯渇が社会問題になっており、ほとんどを輸入に頼った今の状態ですらもう何年も持たないと言われている。隣接した国同士でも政情は天と地ほどの差があるのだ。


「もちろん存じておりますわ。ですから、ただ侵攻を止めろとは言いません。侵攻を止め、なおかつこちらの提案をもう一つ呑んでいただければ、相応の対価を差し上げますわ」


「…言ってみろ」


「同盟締結、および諸技術の開示、共有。こちらの書類にサインしてくださるなら、イーヴェ王国はウェンラッド公国へ各種資源を格安で提供致しましょう。すでにお父様…イーヴェ王国国王の許可も取ってあります」


「…」


アレイスター中将はしばらく熟考し、歯切れの悪そうに口を開いた。


「しかし外交となるとこちらも首相の承認が必要に…」


「それなら、今すぐに話をつけてきていただけないかしら。私はそれまで、ここで彼女を監視していますので」


「ちっ…いいだろう。少しでも変な真似をしたら、貴様の命はないと思え」


「あら、それはお互い様ですわ」


アレイスター中将は急ぎ足で部屋を出ていった。


「ここは私一人で十分です。あなたたちは外で警備を」


「イエス、マイロード」


アイリスについてきた太陽の騎士たちも退出し、部屋にはアイリスとメルヴェの二人だけとなった。


「…メルヴェ、メルヴェっ」


「ん…アイリス、か…」


肩を揺すられ、メルヴェは意識を取り戻した。


「よかった…傷は大丈夫?」


「ああ。このくらいなんともないさ」


「あなたの言った通り、書面にサインを迫るとこまで来たわ。でもなんであれほど和解しないって言っていたお父様が、同盟を結ぶことを許してくれたのかしら?」


「なに、国王クラスの人間が少し考えれば簡単にわかることさ」


メルヴェはまだ少し朦朧とした意識の中、アイリスにことのからくりを話し始めた。


「端から見ればこれはただの軍事同盟だ。しかしさっきの取引の内容を思い出してみてくれ。ウェンラッド側の条件は軍事技術の開示と事実上の提供。対するイーヴェ側は物資の提供。この違いは?」


「あ…!」


「そう。平等な交換条件に見えるが、政情的に見るとイーヴェ側が圧倒的に有利だ。物資の供給を絶てばウェンラッドは壊滅したも同然だからな。必然的にウェンラッドはイーヴェに屈する形になる。だからイーヴェ国王も承認したのさ」


メルヴェはアイリスの手を借りてよろけながらも立ち上がった。


「手首の縄はもう少し待ってね」


「ああ」


その時、アレイスター中将が勢いよくドアを開けて入ってきた。


「…これで満足か?」


アレイスター中将が見せつけてきた書類には、はっきりとウェンラッド首相のサインが。


「首相が決定したからには我々も従わざるを得ない。不本意だが、先程の無礼を詫びよう」


「はい。素早い対応に感謝致しますわ。約束通り、彼女はお返しします。と言っても、すぐにまたお借りすることになると思いますが」


「どう言うことだ?」


「イーヴェ・ウェンラッド軍事同盟を締結するに当たり、両国から一人ずつ共同指導者を選任しなければなりませんの。そこで、そちら側の共同指導者に彼女を指名致しますわ。手当ての時やこちらに来るときに何度かお話をしていますので、全く知らない方が来るより気が楽ですので」


「ふむ…そういうことなら仕方あるまい。技術提供も彼女がいれば円滑に進むだろうしな」


「はい。それでは、これからよろしくお願いしますね。アルペティカ大尉」


「あ、ああ。こちらこそ」


後史歴1536年8月15日。この日の公文書発布で、正式にイーヴェ王国、ウェンラッド公国の両国間に軍事同盟が締結。

この軍事同盟は、この時代の勢力図を大きく塗り替える歴史的な大ニュースとなった。

この同盟を率いるのは、第9代イーヴェ王国国王アイリス・シエル・オルスターと、ウェンラッド公国軍国境警備隊隊長兼特別技術開発顧問、メルヴェ・アルペティカ中佐。


「本当に良かったのか?公の会見であんなことを言ってしまって」


「もちろん。後悔はしていませんわ」


それは、今から小一時間ほど前に遡る。


イーヴェ国王継承式典にて


「今の発言は次代国王としての発言と捉えて宜しいのでしょうか!?」


「ええ。イーヴェ王国の発展のため、牽いては全人類繁栄のため、私はウェンラッド公国軍のメルヴェ・アルペティカ中佐と協力し、この地を拠点とした大連邦国の設立を目指します」



「やれるのか?この周辺は独自の文化を持つ列強ばかりだぞ」


「きっとやれますわ。だって私には、メルヴェがついていますもの」


「!…ああ、そうだな…」


二人は手を取り合い、もう一度誓いの儀式を行った。

基本的に単発出落ちなので続きやら過去話はありません。こういったテイストで書いてみたいなっていう単なる思いつきの思いつきによる作品なので。

作中の「誓い」がなんなのかは(一応これっていう正解はありますが)読者の想像力におまかせしますよー

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