~帰り道~
要先輩に押し切られ、なぜか4人で帰ることになってしまった。
「おいっ馬鹿女っ!聞いてんのか?!」
しかもアイツは私を落とす目的は本気らしく、私の隣りにいる。
可愛い可愛い由梨は先輩に預けたとして、なんでこんなことに…
「………」
「おいっ!」
私がだんまりしていると、しびれを切らしたアイツが覗きこんできた。
「お前なぁ。俺様を無視していいと思ってんの?」
「私は、要先輩に言われたから、仕方なく一緒に帰ってるだけなので」
「お前さぁ。要のこと好きなの?」
「はあっ?!」
いきなり要先輩を恋愛対象に引き出されて、思わずアイツの顔を見てしまった。
「好きって言うか。別にアンタに関係ないでしょっ」
「ふ~ん」
アイツは前を向いて歩き出した。何が聞きたかったんだろ?
「悠、しずかちゃん。じゃあ僕、由梨ちゃんの家こっちだから家まで送ってくね?」
後ろを歩いていた要先輩が恐ろしいことを言い出した。
「はっ?いや。私も由梨を送っていくので!!」
「いいよいいよ~。じゃあ、悠。しずかちゃんよろしくね~」
「おう」
アイツ返事してるしっ!
「いやっ由梨!ねっ。帰りに道場行こうって言ってたじゃんっ!ね?」
「ん?いいよ~静香。今日は先輩と道場行って来てくれて」
「え?いや。由梨?」
なぜに……由梨。もしや要先輩に洗脳…??
「じゃあ由梨ちゃんもこう言ってる訳だし。また明日ね~しずかちゃん」
「バイバイ~また明日ね。静香」
笑顔で去っていく2人を見つめながら、私は呆然としてしまった。
呆然としている私の頭をアイツが叩いてきた。
「痛っ、なにする…」
「おい。馬鹿女。帰るぞ」
「はぁ…いいよもう。一人で帰るし。さっき言ってたの聞いてたでしょ?
これから道場に寄って帰るから」
「俺様も行ってやってもいい」
「いらないっ!」
私はアイツを振り切って帰り道を歩き出した。
しばらくして、道場に着いた。
「ふぅ~。みんな頑張ってるかな~?」
受験があったため、最近ほとんど来れなかったから凄く久しぶりで
私はテンション高めで部屋に入った。
部屋の中では、小さいクラスの幼稚園~小学生までの子供達が一生懸命練習している。
私も、幼稚園からこの道場に通っている。思い出がたくさん詰まっている部屋だ。
「あっ!しず姉ちゃんだっ!」
「ほんとだー!」
「勉強終わったの~?」
私に気づいた子供達が、こっちへ集まってくる。
「うん。今学校の帰り。みんな頑張ってるかな~?って」
自然と笑みが溢れてくる。やっぱり好きだな~この場所。
「ねぇねぇ・・・しず姉ちゃんの後ろにいる人、彼氏??」
「え?」
後ろと言われ、振り向くとアイツがいた。
「え?帰ったんじゃ?」
私があの時振り切ったはずのアイツがなぜか私の後ろに居た。
「ふ~ん。ここか馬鹿力女の原点は」
私にしか聞こえないくらいの声でアイツがつぶやく。
「なっあのね!」
言い返そうとすると、子供たちの声がかぶさった。
「ねぇ。お兄ちゃん。しず姉が好きなの?」
「しず姉ちゃんの彼氏なんでしょ?」
「しず姉の彼氏。イケメンだなっ」
子供達が楽しそうに話始めてしまい、否定するタイミングを逃した。
「そうだぞ。静香は俺の女だ。俺様のことは、悠さまと呼べ」
今、アイツはなんと言った…??
「悠さま?」
「悠さまだ~!」
「なんだチビ。賢いじゃないか」
そんなやり取りをしていたアイツの腕を私は掴んだ。
「いい加減にしてっ。ちょっと来なさい!みんなごめんね。
また来るからっ。練習頑張ってね!」
私は無理矢理アイツを道場の部屋から連れ出した。