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~最悪な出会い~

 真新しい制服に身を包み桜が舞う中、都立三笠みかさ高等学校へ登校途中

 私は決意を声にする。

「入学式は無事終わったけど。今日から、さらに気合い入れてかないと!」

 握り拳を空に向け、横に跳ねるくせっ毛を振りかざしながら仁王立ちで叫ぶと、

 隣りから小さく笑い声が聞こえる。

「くすっ。静香、楽しそうだね。そうだね~たくさん友達できるといいね。」

「由梨ぃ~。可愛いすぎるっ!」

「っっ!静香っ??」 

 ついつい抱き付いてしまった…だってこの小動物可愛いんだもん。

 私の名前は倉持静香くらもちしずか、テンション高めには理由ありの女子高校生。

 そして隣りのミニマムふわ髪、癒し系女子高校生は、幼馴染みの美崎由梨みさきゆり

 由梨とは、生まれた時からの16年来の大親友。

 ちなみに、由梨は私と違い勉強は出来るし、可愛いし。

 ぎゅ~っとしたくなる癒し系のため、小さい頃からめちゃくちゃモテた。

 ただ当の本人は、天然すぎて鈍すぎて告白されても

「???」 がいっぱい飛んでたな…。恐るべし天然。

 そんな天然な由梨に必要以上に迫ってくる輩には、私の鉄拳が飛んだとか飛ばなかったとか。

 小さい頃から柔道をしていた私は、明日香姫の騎士ナイト

 騎士だったら絶対由梨と同じ高校に行くんでしょ~、とやたらまわりに言われ

 単純な私は「そっか!」と言われた通り、由梨と一緒の学校に行くために大っ嫌いな

 勉強をした。

 そして…見事合格!友情勝利!頑張った自分を褒め倒したいっ。

 無理だ無理だと言い続けた担任の本気で驚いた顔、面白かったな~。

 でもいくら側に居ると言っても由梨は根っからの天然だから、すごく心配はつきない。

「由梨。友達は作るべきだと思うけど、もし変な奴だったら私にすぐ言うように!

 絶対守ってあげるから、もしくは倒してあげるから!」

「変な奴?大丈夫だよ。そんな人居ないよ~」

 にこにこ笑う天然幼馴染みの可愛い笑顔にため息が出そうになる。

「……分かってないな。」 

 そうこうしている内に学校に到着した。

 私達一年生の教室は、C棟で一番奥に位置していて

 その校舎に向かう途中由梨が言った。

「あっ、そういえば。この前は、入学式とクラス発表だけだったけど。

 今日の1限目は新入生歓迎会だったよね~」

「あ~そっか。なら、確か直接体育館集合だったはず。行こっか」

 私たちは歩いて来た道を戻り、A棟とB棟の間にある体育館に向かった。

 そこで最悪な出会いがあるとも知らずに…

 

 

 













 体育館についた私達は、すでに並んでいる新入生の中に入って行った。

「1年2組どこ?」

「あっあそこだ!」

 一応、進学校と言われるように頭の比較的良い人を集めただけあって

 クラスは1学年6組あるが、20人の小規模なので、見つけやすかった。

 ちなみに私と由梨は同じ2組なので、2組を目指す。

 その時突然頭の上から声が聞こえた。

「ねぇ。君、名前は?」 

 声が聞こえたと同時に隣りで由梨が小さく悲鳴をあげた。

「きゃっ!」

 何が起こったのか分からず驚いているのも束の間、

「由梨っ?!」

 なぜか横で由梨が男に腕を掴まれている。

 すると不審そうな声が聞こえた。

「なぁ。俺の話聞いてる?名前なんて言うのって聞いてるのに」

 やっと状況を理解した私の目の前で由梨の腕を掴み、その上なんと由梨の可愛い顔を

 覗きこんでいた。

「由梨っっ!」

「ふ~ん。名前はゆりちゃんか…」

 私は由梨の腕を掴んでいるソイツの手を払いのけ、相手を睨む。

「つか。なにお前?誰?」

 (なに…こいつ…めちゃくちゃ…)

 私が払いのけた手を見ながら、目線をこちらに向けてきた長身の男は

 まさに女子に騒がれそうな…

 切れ長の目に180cmはあるだろう身長に、スレンダーだが鍛えてる感じがする

 体つき。世間一般的には、格好いい分類に入るだろう。

 まあ、世間一般に属さない私には残念ながら、無駄にキラキラするウザイ奴!!

 でしかないが…

 そのキラキラに更にイライラしてさらに睨みつける私を見てその男が小さく

 ため息をつく。

「はぁ……なんなの?」

「はぁっ?!『なんなの』はあんたでしょっ!由梨に何してんの!!」

 私は、目の前の男子生徒に掴みかかろう…とした。

「わっっ!」

 次に叫んだのは、私だった。なんと得意の一本背負いをお見舞いしてやろうとしたのに、

 技をかけようとした両手首を掴まれ、攻撃をなんなく止められてしまった。

「俺に勝てると思ってんの…?」

 そして、私の手首をぎゅーっと締め付けてきやがった~~~!!

「痛っ。離し…」

ゆう、何してるの?ん?女の子……?えっ?こらっ、悠!」 

 締め付けられた手首の圧迫が消えたかと思うと頭の上から優しい声が聞こえた。

「ごめんね?大丈夫だった?新入生なのに。怖がらせちゃったね?」

 そう言いながら、頭をポンッと叩かれ、慌ててお礼を言う。

「あ…ありがとうござい…」

 お礼を言いながら頭をあげると、目の前には由梨に負けない(性別は違えど)

 認めざるを得ない程の美男子が目の前に居た。

「きれい……」

 思わず声に出てしまった言葉を目の前に美男子様は

「あっは。そんな直接言われたの初めて。ありがと。そんなことより大丈夫??

 ホントごめんね?」

 そう言って少し困ったような照れたような…そんな…そんな綺麗な笑顔…っ。

 本から出てきた王子様だ…。

 その王子様が思い出したかのよう後ろを向きヤツと話し始めた。

「悠。いなくなったと思ったら…なんで女の子泣かしてるの?

 今日はちゃんとするって約束…」

かなめっ!こいつが先に手ぇ出してきたんだよ!俺のせいじゃねえよっ!」

 ヤツの声が聞こえた途端、私の怒りが頂点に達した。

「あんたこそなんなのよ!由梨にいきなり何すんのよ!サイテーっ!」

「何って…名前聞いただけだろ~が。サイテーはお前だっ!

 いきなり人を一本背負いだぁ?それでも女かよっ!!」

「んなっ…あんたね~!」

 叫ぼうと思った時、向こうから先生がやってきた。

「お前らっ!何やってんだ?!歓迎会始まるから席に着きなさい!」

 私達は強制的に席に連れて行かれた。私はイライラが収まらずにいた。

「静香…ごめんね?大丈夫?」

 隣りの席で由梨が心配そうに覗きこんでくる。

「ううん…由梨こそ大丈夫だった?ごめんね?守るとか言っときながら」

「ありがとう。静香」

 由梨がにっこり微笑みかけてくれる。私の心はそれだけでスーッと軽くなっていった。

「由梨ィ~。癒しっ!」

 私は思わず由梨に抱きついてしまった。

「こらっ」

 担任の先生に怒られてしまったけれど、とりあえず新入生歓迎会が始まった。

 

『それではこれより、新入生歓迎会を開催します。初めに生徒会長よりご挨拶があります。』

 一人の男子生徒が、舞台へ上がっていく。その顔を見て私は愕然となった。

「都立三笠高等学校生徒会会長、片瀬悠かたせゆうです。

 本日はお日柄も良く…………」

 舞台に上がった生徒会長…それは、先ほどケンカをふっかけられた、あの男が。

「あいつが、生徒会会長っ?!」

 思わず声に出してしまったことを後悔しても遅かった…

 舞台から射抜くような視線を感じたと思った直後にあいつは言った。

「みなさんと仲良く……なんかするはずねぇだろっ。お前らは俺の下っ端。

 俺に逆らった奴は絶対後悔させてやる。あ~それと1年2組 ゆりちゃん。

 生徒会書記に任命する。ちなみに俺の仕切る生徒会は、美男美女限定だから。

 残念だったな、ゆりちゃんのお友達さんよぉ~。

 じゃっせいぜい高校生活楽しめよな。一年生諸君」

 そう好き勝手なことを言い、さっさと舞台の上から下り、あいつは去っていった。

「なんなのアイツ…ちょっと待って…今、なんて?」

「静香ぁ…私、生徒会書記だって…どうしよう~」

「アイツ~~~!!!許さんっ!!!」

 あの傲慢な態度。無理矢理な感じっ。絶対許せないっ!!!

 私はこの学校に入ったこと、後悔し始めていた。

 でも…由梨を守らなきゃっ。

 私とアイツの最低最悪な出会いだった。

 

 

 


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