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王妃様の副業  作者:
9/40

王妃さまと宴6 または誤解と解釈の違い(天然は空気を読まない)


「ふぅ。サッパリさっぱり。………おまたせ~~~~って何、この空気」


思わす己の親友兼侍女頭と似たような言葉を呟いてしまった凪はその光景に目を見開いた。

お湯で酒を落とし、服を着替えた凪がサッパリした顔で戻ってきてみれば何故だか目をうるうるさせながら真奈に向かって「負けてはいけません」だの「微力ながらあ、あたしも力になります」だの盛大に励ましの言葉をかけている琥珀とひなたの姿があった。

凪の目が点になるのも仕方がないだろう。


「何が起きたの?」


「私にも状況の把握はできておりません」


揃って首を傾げる主従に琥珀が握り締めていた真奈の手をはずしながら凪に声をかける。


「そういえばナナさんも王妃様付きなのですか?」


「へっ!?あ、ええ……ちが………ぐぅ………わないです。はい。王妃付きの侍女やってるナナです……」


咄嗟に否定しようとしたら真奈に足を踏まれた。涙目になりながらも笑顔で頷いた自分を凪は褒めたかった。


こうして王妃付きの侍女 ナナが成り行きで誕生した。


ナナが王妃付きと知った琥珀とひなた。反応は王妃に対する拒否感か嫌悪感か無関心か。遠い目でそう思っていた凪だったがその予想は大きく裏切られた。

がしりっ!!と貴族のお嬢様とは思えないほどの力で両手を掴まれたかと思うと何故だかうるうるお目目で見上げられた。


睫なが~~い。目、大きい。可愛い。今度の主人公小動物系のお嬢様にしよう。


己の欲望をそのままネタに消化した凪。現実逃避とも言う。


「ナナさん。周囲の心ない風評などに負けず、お互いに王妃様を支えていきましょう!」


「へっ?」


熱く語る琥珀の言葉にひなたが握りこぶしを勇ましく天に突き上げながら乗っかってくる。


「負けちゃだめです!だって王妃様何も悪いことしてないのにどうして悪く言われているんですか!堂々としていればいいんです!間違っているのは悪口言っている周りです~~~!」


「…………………真奈」


「なんでしょうか?」


「何が起きているの?」


「何度も繰り返しますが、私にも把握できていません」


結局、琥珀とひなたに散々励まされた真奈と凪であった。

何故だか分からないが真奈やナナ………王妃に同情的かつ好意的である二人に困惑を隠せない。


「えっと………お気持ちは嬉しいです。だけど、琥珀様はそろそろ宴に戻らないといけないのでは?」


「あ、そうですね」


凪の言葉に可愛らしく口元を手を当てる琥珀。………その姿の可愛さに「次の小説は絶対に琥珀様をモデルにしよう。もえる、もえるよ。この子」と呟いていたことは凪の秘密だ。そして、内心そんなことを考えていたせいで琥珀の瞳に翳りが浮かんだことを見逃してしまった。


「ではドレスの染み抜きをはじめます。そこの貴女………」


「ひなたです!真奈様!」


冷静な真奈の言葉にピコピコと手を挙げ己を主張するひなた。その顔はキラキラと期待に輝いていた。

真奈の無表情が心なしか気圧されているように見えるのは気のせいか?

だが、そこは真奈。すぐに小さな変化を隠しいつものように淡々と指示を飛ばした。


「…………ひなたさん。ワゴンの下の段にある染み抜きが用意されています。それを取ってきて、そこに置いてください」


「はいです!」


嬉しくて仕方がないと全開で現していたひなたがたたっとワゴンに駆け寄る。その後姿にはち切れんばかりに振られた子犬の尻尾が見えた、と密に真奈は思ったとか思わないとか。


「真奈様!持ってきました!」


「ありがとうございます。それでは琥珀様、少し、失礼をします」


急いで琥珀のドレスに付いた染み抜きに掛かる。テキパキと手馴れた様子でシミを抜いていく真奈。


「真奈、どう?シミ取れそう?」


「な………貴女が盾となり庇ったので殆ど掛かってないこと、掛かった範囲も狭い。これなら落とすことは可能です」


とんとんと布で汚れを叩きながら答えた真奈の言葉にその場にいた全員がなんとなくほっと息を吐いた。


「よかったです~。せっかく綺麗なドレスで宴に来ているのに出られなくなったら大変ですもんね!」


「え、ええ………」


明るいひなたの声にこたえる琥珀はなぜか浮かない顔。

真奈と凪はなんとなく戻るのが嫌なんだろうなぁと察して(あの嫌味お嬢様方の対応は面倒)口を閉ざす。

とんとんと一定の間隔でシミを抜く音だけがしばし場に響く。


「ん~~~~?」


一人場の空気のおかしさに首を傾げていたひなただったがその内何かに気づいたのかパンッ!と手を叩いた。


「ああ!そうか!琥珀様宴に戻られるのがいやなんですねぇ~~~~~~~」


あんな目に遭ってそりゃ嫌ですよねぇ~と一人納得するひなたに残りの面々は無言。


「「「……………………」」」


絶句呆れ呆然。


しーーーーーーんと一気に静まった場にひなたが手をがくがくさせながら右往左往した。


「あ、あれ?あれれ?あ、あたし何かいけないことを言いっちゃいました!?」


青白い顔。完全に萎縮しているひなた。なにやら放置しておけば泣きながら土下座しそうな空気に凪・真奈が同時に首を振る。困った顔の琥珀は目で制することも忘れない。

ここで真実を教えれば「申し訳ございません~~~~~!!」とか言って土下座しかねない。


どうにも思い込みの激しそうな子(すぐに切腹に走る)とういのは凪・真奈の共通認識である。


「「いいえ。なにも」」


その時二人が浮かべていたのはとってもいい笑顔だったという。


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