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王妃様の副業  作者:
7/40

王妃さまと宴4 または現状把握開始(偽名が安直です)

「はぁはぁはぁ」


肩で息をするほどの激しさで思いのたけを出し切った少女の顔は疲労に似合わず晴れ晴れとしていた。

それに若干引いた様子で声をかける凪。


「え~~~っと気は済みました?」


「ふぅ~~。ええ、すいません。少し、興奮しすぎてしまいました」


恥ずかしそうに頬を染める少女は文句なしに可愛く、先ほど激昂して怒鳴り散らした人と同一人物にはとてもじゃないが見えなかった。

凪はそっと、先ほどみた少女の本性を胸の中に厳重にしまいこんだ。マル秘と大きく書かれた箱に鍵付きである。絶対である。


「まぁ~全員落ち着いた所で自己紹介と状況把握をしちゃいましょうか。私はな………な。ナナといいます!ナナです。ナナです。ナナ以外の何者でもないですよ~~~~はははははっ!」


手を叩いて場を取り仕切る凪。うっかり本名を名乗りそうになって慌ててごまかしたため妙にテンションが高く聞こえる。

しかし当然ながらその不自然なテンションは相手に不信感を与える。


「ナナさん?」


「そのテンションは一体」


「ははははキニシナイデクダサイ」


取り合えず気を取り直して。


「では、次はわたくしが。わたくしは琥珀。実家は子爵家ですわ。ナナさん。危ないところを助けていただきありがとうございます」


ちゃんと頭を下げ、感謝の意を表す琥珀。イヤイヤと凪は手を振って「仕事だから気にしないでください」というが「それでも!」と結局謝られてしまう。


(本当に貴族らしくないなぁ~この子)


側室候補として娘の意思を無視して後宮に放り込むような親を持った子とは思えないぐらい琥珀からは階級による差別意識が感じられない。


「最後は貴女ですわね」


「は、はいぃぃぃぃ!!あたし!ひなたで、す!侍女です!お二人には本当にほんとう~~~~~~にご迷惑をおかけして~~~~~~~~~~~!!」


「あ、土下座はいいから」


「土下座はやめてくださいまし」


自己紹介からそのまま流れるように土下座に移行しかけたひなたに待ったをかける琥珀と凪に言われた本人は目を見開いて固まる。


「そんな!我が民族伝統の最大級謝罪方法は土下座なのに!これ以外にどうやってこちらの誠意と謝罪の気持ちを伝えればいいのですか!」


握りこぶしで訴えてくるひなたに凪と琥珀は同時に同じ疑問を浮かべた。


((土下座が最大級謝罪方法ってどんな民族なの?))


少なくとも二人が知っている民族に土下座が最大級謝罪方法だと謳っている民族はいない。


「土下座が駄目ならはらきり………」


思いつめた目で己の腹をじっと見つめるひなた。暗い顔で何かを探すように首をめぐらすひなたに残りの二人の胸に限りなく正解であろう嫌な予感がよぎった。


「やめて。その名前だけで何しようか分かる謝罪方法はやめて」


「命を粗末にしてはいけません!」


ちなみにはらきりなる謝罪方法は全く聞いたことないがその名称だけで不吉感満載だったため琥珀と凪は全力で止めた。


「いや~~~~止めないでください!もう………もう、これしか誠意を見せる方法がないんです!!」


突然暴れだしたひなたを凪が慌ててはがい締めにする。琥珀がぶんぶん振られていたひなたの腕を掴んで止め、二人かかりで暴挙をおさめようと奮闘した。


「お詫びっていっても君は転ばされただけで非はないよ!」


「はら掻っ捌いてお詫びを………ってへ?」


誠意を見せるにはもはやこれしかないと暴れるひなたを二人で止めていた凪が思わず叫んだ一言にひなたはピタリと動きを止めた。


「………転ばされたって………」


「恐らくは琥珀さまへの嫌がらせの一環だろうね。転ばせたのは側室候補達だよ。候補者の中でも割と性質が悪いのが集まっていたから」


あからさまに王妃の座狙いで凪も何度嫌味を言われ、嫌がらせを受けたか。数居る側室候補の中でもあれはちょっと性質が悪すぎる。綺麗な外見なのに中身が残念だ。ものすごく。


「いやがらせ?」


「それでしたら謝るのはわたくしの方ですわ。ひなたさん貴女は巻き込まれただけですわ。申し訳ございません」


そう言って琥珀は潔くひなたにも頭を下げ、謝罪した。

己のせいで不利益を被ったものへの正しい対応だ。しかし、貴族でここまでできる者は少なく、それを素直に受け取れる庶民もまた、少ない。

案の定、ひなたは想像もしていなかった貴族のお嬢様に頭を下げられるという異常事態に一気に頭が混乱してしまったようだ。


「ひぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!!あたしみたいな一侍女に貴族のお姫様が頭を下げないで~~~~~~ください~~~~~~~~~!!琥珀さまは悪くないのに!!」


先ほどとは違う意味で手をワタワタさせるひなたかを拘束から解放しながら凪は小さくため息をついてから口を開いた。


「そうですね。琥珀さまにもひなたにも非はないと思いますよ」


「ですが。わたくしの事情にお二人を巻き込んで迷惑をおかけしたのは事実です」


あくまで自分が二人を巻き込んだと言って聞かない琥珀に頑固だなぁ、と凪が思ったその時、ノックの音が部屋に響いた。


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