王妃さまと少年達 4
「あ〜もう!私の馬鹿〜〜〜〜〜!」
ブチブチ草を抜きながら凪は盛大に喚いた。
「なんであそこで目をつぶっちゃうかな〜〜!もう!」
抜いた草をポイポイ投げながら愚痴りに愚痴る王妃を王は何とも言えない複雑な表情で見守る。
「せっかくの機会だったのにな、勿体な・・・・あ、」
そこで漸く苑王の存在を思い出した凪の顔が珍しく固まる。
嫁いでから被り続けた猫はすでになく、地の言動が出ていた。
ちなみに、凪が本性である図太く逞しい根性を隠して気弱で口答えのできない卑屈な性格を演じる理由は結婚当初はこのほうが反抗するよりかは被害は少ないだろう、という経験談と情報収集のため。小説を書き始めてからはそれに加え、ネタ集めのためだっりする。
直接会話が殆どなかった苑王でも王妃の性格ぐらいは噂で聞いているだろう。
どんな悪評にも「ネタが〜」と叫びながら草を抜くなどというものはない。
無言で見つめ合う妻と夫。
「・・・・・えへ?」
可愛く小首など傾げ、笑ってごまかそうとしたら何故だか目を剥かれ、凝視された。
その顔は相手の非常に似合わない言動に戦い(おののい)ていた。
苑王とはそんな顔をされるほど、親しい交流は皆無なのだが?
(はて?会話回数一桁の私たちのどこにこんな顔をされる要素が?)
疑問に首を傾げた凪の黒髪がふわりと背後から吹いた風に靡く。
思わず身震いしそうになるぐらい冷たい風はまるで冬の空気のように凪には感じられた。
(・・・・・・・・え?)
振り向くとそこに夜があった。
空間の一角を切り取ったようにうららかな庭に夜の深い森があった。
異質な光景に絶句する凪の頬を切り取られた空間から吹いてくる冷たい風がなぜていく。
(な、なに?これ?魔術?)
双子の妹がよく変な魔術実験を行っては様々な怪現象を引き起こしていたのを思い出した。
これもその類のもの?
そう思って目を凝らした凪だったが異質の空間側に人影があるのに気付いた。
小さな影が二つに黒い大人の姿。
小さな影は膝をつきながらも地面に倒れたもう一人を庇うように黒づくめを睨んでいた。
男はゆっくりと剣を振りかぶる!
「ちょ!!子供に何をしてるか〜〜〜〜!」
男が子供を殺そうとしていると認識したと同時に凪は走り出していた。
異質な状況も自分に害が及ぶ恐怖も忘れて、凪は扉の大きさに切り取られた空間に迷いなく飛び込んだ。