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MAGA×Maga  作者: 千崎桜子


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5/6

追放されたやつは、いつもより関係者が多い気がしている 若干蚊帳の外で

門番詰所の前は、すでにちょっとした人だかりになっていた。


連れて来られた憲兵の姿は見えない。

どうやら中で話をしているらしい。


「……あのっ」


フィオナが、一歩前に出た。


「さっきの件なんですけど……」

「部品を動かそうとしたのは、私で……」


門番の一人が、面倒そうに手を振った。


「関係ない」

「現場で“そう見えた”以上、それで終わりだ」


「でも!」

「不可抗力というか……」


「規定だ」

門番は淡々と言う。

「意図は問わない」


フィオナは、唇を噛んだ。


俺は、そのやり取りを横目で眺めながら、

特に口を挟むでもなく、ぼーっと立っていた。


(……なんか)


まだ、だな。


騒ぎの中心にいるはずなのに、

胸の奥が、やけに静かだ。


門番が、ふとこちらを見た。


「で」

「そっちの男は?」


俺のことだ。


フィオナが、慌てて振り向く。


「え、えっと……」

「その……」


言葉に詰まる。


「知り合い、ですか?」と門番。


「……たぶん?」

フィオナは、弱々しく答えた。


「一緒にいた?」

「……さっき、少し……」


「身元は?」


「それは……」


フィオナは俺を見る。

俺もフィオナを見る。


……あ。


確かに。


関係性、ほぼ無いな。


「付き添いです」

俺は、正直に言った。


門番が眉をひそめる。


「関係ない……ということでは……」


「……まぁ確かに」


一瞬、沈黙。


「……なら」

門番は興味を失ったように言った。

「下がっていい」


「了解」


俺は、素直に頷いた。


(……そういえば)


頭の中で、今朝からの流れをなぞる。


今回。

最初から最後まで。


俺、特に何もしてない。


巻き込まれただけで、

手も出してないし、

口も出してない。


なのに、ここにいる。


(……変だな)


まあいいか。


「フィオナ」


俺は声をかける。


「はい?」


「今日は帰ろう」

「俺たち、部外者だし」


「……えー!そんな!さっきは助けに行くって」


俺は、詰所の扉を見る。


中の様子は分からない。

分からないのに、

胸の奥が、少しざわついた。


「助けない、とは言ってない」

俺は言う。

「ただ……今動くと、たぶん面倒になる」


「もう十分面倒です!」


「そうなんだけどさ」


フィオナは一歩詰め寄る。


「じゃあ、いつなんですか!」


「……今じゃない、ってことだけは分かる」


「なんですかそれー!」


でも、その声は、

さっきより少しだけ小さかった。


そのとき。


門前の通りが、ざわついた。


最初は、遠くの足音だった。

鎧が触れ合う、乾いた音。


それが一つや二つじゃないと分かった頃、

門番たちの空気が変わる。


「……来たな」


誰かが、低く呟いた。


通りの向こうから、

憲兵の一団が現れる。


数は十数人。

隊列は揃っていて、歩調も乱れていない。


その先頭に立っていたのは――

門番の制服ではない、落ち着いた雰囲気の男だった。


自然と、人だかりが割れる。


門前にいた憲兵たちが、

一斉にその人物へと視線を向ける。


「……憲兵総監」


誰かが、そう呼んだ。


俺は、フィオナの隣でその様子を眺めながら、

小さく息を吐く。


(あー……)


これは、

話が一段、面倒なところに入ったな。


総監が腕を組む。


「……門前は、門番の管轄だ」


短く、そう言った。


ヴェロニカは、ゆっくりと頷く。


「ええ」

「そこは、誰も異論はないわ」


「規定も理解している」

総監は続ける。

「今回の件が、規定上“違反”に該当することも」


フィオナが、思わず唇を噛む。


「……ただし」


総監は、一拍置いた。


「――今日は、クラリスを返してもらう」


その場の空気が、張り詰めた。


ヴェロニカの視線が鋭くなり、

門番たちが一斉に背筋を伸ばす。

フィオナは息を呑み、言葉を失った。


――ピリ、と音がしそうな沈黙。


その中で。


俺は、状況を把握するでもなく、

ただぼんやりと考えていた。


(あー……)


これは。

たぶんまだ、終わらないな。

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