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あまりに残酷で幻想な大地で、僕たちは優しさの使い方をまだ知らない  作者: 抄録 家逗


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師匠探しとPTの目標

 街の午前を休息と情報収集に費やし、午後になった。太陽は鈍色の空を薄く照らし、街の雑踏は少し落ち着きを見せる。俺たちは、次の段階――冒険者として正式に職業を得るための師匠探し――に臨むことになった。


 午後の街は午前とは違い、冒険者や職人、商人が各々の仕事に没頭していた。情報収集のため、俺たちは各自別行動することに決める。


 俺は剣士の師匠を探すべく、街の掲示板や鍛冶屋、訓練場を巡った。だが、どこに行っても返事は芳しくない。

「……剣士の師事を……?」

 年配の剣士は眉をひそめ、鍛錬場の若い剣士も「初心者は受け入れられない」と言う。途方に暮れ、街の広場に座り込んだ。


 その時、声をかけられる。

「あなた……剣士志望なのね?」


 振り向くと、革鎧に薄紫のマントを纏った女性が立っていた。肩には奇妙な形の武器が背負われ、目は鋭く、どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。


「幻闘士って、聞いたことあるかしら?」

「……幻闘士……ですか?」

「そう。特別な力を扱う職業よ。あなたに適正があったから声をかけさせてもらったの」

 その言葉に、俺は思わず固まる。森での戦闘経験と街での初依頼を経て、ようやく出会った“特別な存在”。

 一度返事は保留にさせてもらい、後日会う約束を取り付ける。


 他の仲間も街の各所で師匠探しを進めていた。


•クロは街外れの道場でウェポンマスターに出会い、剣士としての師事を受けることになる。肩の傷は癒えていないが、技術と戦術を学ぶ意志は揺るがない。


•レオンは教会の司祭に師事し、僧侶としての技術を学ぶことになる。慎重な性格だが、信仰と魔法の基礎に触れることで少しずつ自信をつけていく。


•ミナは街の一角で稀少な魔術の才能を見出され、魔導師から魔術師としての師事を受けることになる。彼女の才能は、PTにとって大きな戦力となる可能性を秘めていた。


 だが、師事にはいずれも銀貨5枚が必要で、まだ誰も十分な資金を持っていない。


 俺だけは、なぜか銀貨を必要とせずに師事を受けられることになった。理由は分からないが、幻闘士の女性は笑みを浮かべながら「特別な条件」とだけ告げた。


 仲間たちが師事の話を終え、街の広場に戻ると、互いの成果を報告し合う。

「……俺はウェポンマスターに師事できた」

「俺は司祭から僧侶を……」

「私は魔導師から師事を受けられることになった」


 俺は幻闘士の女性のことを簡単に説明しつつ、仲間たちに伝える。


「でも……全員銀貨5枚が必要だ。だから、PTとして銀貨15枚を稼ぐ目標ができたってことになる」

 ミナは少し驚き、箱に残ったPT貯金の銀貨を見つめる。

「……これから、もっと稼がないと……」

 レオンも黙って頷き、クロは肩を押さえつつ視線で同意を示す。


 街の午後は、師事の話で終わり、夕方には互いに新しい目標を胸に刻んだ。森での恐怖、初依頼の成功、そして師匠探し――すべてが少しずつ、俺たちを冒険者として成長させているのを感じた。


 街の鈍色の空の下、俺たちは刃を握り、魔法と知識を学び、銀貨を稼ぐという新たな目標に向かって歩き出す。今日一日で、冒険者としての一歩を踏み出したのだ。

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