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あまりに残酷で幻想な大地で、僕たちは優しさの使い方をまだ知らない  作者: 抄録 家逗


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街での休憩と情報収集

 ギルドで受け取った報酬は、討伐したゴブリン5体に応じて銀貨5枚。分配は簡単で、1人につき銀貨1枚。残りの1枚は、PTとしての貯金に回すことにした。


 俺は手のひらに銀貨を置きながら考える。

「……1枚で何ができるんだろうな」

 ミナが小さく笑った。

「……私、少しだけ安心したかも。これで食事くらいは十分にできるんじゃないかなって」


 レオンは銀貨を握りしめ、少し考えた後、口を開く。

「……これからのことだけど、貨幣の価値とかPTについて、知っておいた方がいいと思う」

 俺も頷く。森では戦うだけで精一杯だったが、街では情報も大事だ。


 ギルドで手に入れた簡単な情報や宿屋の主人から聞いた話を整理すると、街では主に銅貨・銀貨・金貨が流通しているという。

•100銅貨=1銀貨

•100銀貨=1金貨

•2銅貨で黒くて固いパンが1つ買える


 さらに、それより上の貨幣も存在するが、高額すぎてほとんど使われず、一般人や冒険者には縁がないらしい。


 俺は銀貨1枚をじっと見つめる。森での死と恐怖を思い出すと、まだ信じられないくらいの現実感だ。

「……1枚で100銅貨か。案外、やりくりすれば生きていけるな」


 ミナは貯金用の銀貨を手に取り、そっと箱に入れる。

「……私たちの分も、ちゃんと残しておこう……」

 その慎重さに、俺は少し安心した。仲間たちが生き延びるために必要なことを、自然と考えられるようになったのだ。


 街での情報収集は、貨幣制度だけではない。冒険者として生きるには、自分の職業も知っておく必要があった。PTでの役割――剣士、僧侶、魔術師、弓使いなど――それぞれに向き不向きがあり、戦術や連携にも影響する。


各職業に就くには、自分で師匠を見つけて師事を仰ぐ必要があるらしく、それもまた自分で情報収集が必要な要素のひとつだった。


 クロは窓際で黙って外を見つめる。

「……街の外のことを考えているのか?」

 俺が尋ねると、彼は短く頷くのみだ。戦闘時以外、ほとんど口を開かないクロの意思表示は、視線や動作で理解するしかない。


 レオンは俺の方に視線を向け、少し声を上げる。

「街の中は安全だけど、油断はできないな。情報は多いほうがいい」

「その通りだ」

 俺は頷く。街での休息は、ただ休むだけではなく、準備と情報収集の時間でもある。


 ミナは小さな声で呟いた。

「……私、まだ怖いけど……少しずつ、戦える気がする……」

 俺は微かに笑い、肩を軽く叩いた。

「その調子だ。焦らず、少しずつ慣れていこう」


 宿の窓から鈍色の空を見上げる。街の灯りは温かく揺れ、森での恐怖とは違う安心感を与える。しかし、油断はできない。敵はどこにでも潜んでいる。


 俺たちは刃を握り、次の依頼に備えながら、情報と経験を糧にして、少しずつこの世界で生き延びる術を学んでいく。

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