表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あまりに残酷で幻想な大地で、僕たちは優しさの使い方をまだ知らない  作者: 抄録 家逗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/25

北東山岳地帯、合同PT

 夜明けの薄青い光が、街の北門を静かに照らしていた。

 石造りの門の前には、すでに数人の冒険者たちの影がある。


 俺たち四人が到着した時、ちょうど二組のPTが集まりつつあった。


「……あれが、合同PTか」


 クロが低く呟く。


 大型魔物討伐。

 今回は“単独行動禁止”の赤封依頼。

 つまり、全員が同じ戦場で命を賭ける仲間になる。


 最初に目に入ったのは、明らかに“場数が違う”と分かる四人組だった。


 前に立つのは、背の高い壮年の男。

 無骨な全身鎧に、両刃の大斧を地面に立てている。


「……重戦士だな」

 レオンが小さく分析する。


 その隣には、フードを深くかぶった細身の魔術師。

 足元には魔力の揺らぎが、微かに漂っている。


 後方には、二人。

 弓を背負った女性の狩人と、軽装の剣士。


 まさに“大型討伐向け”の構成だった。


 やがて、その重戦士がこちらに気づき、大斧を担ぎ直して歩み寄ってきた。


「……お前らが、三組目だな」


 低く響く、落ち着いた声。


「俺はガイル。重戦士だ」

「このPTの戦闘指揮も俺が取っている」


 隣のフードの人物が、短く続ける。


「魔術師のセラ。殲滅と拘束担当」


 弓の女性が、軽く会釈した。

「私はリィナ。後衛狙撃よ」


 最後に、軽装の剣士が肩をすくめる。

「剣士のバルド。前衛補助と奇襲担当だ」


 レオンが一歩前に出る。


「こちらは、俺がリーダーのレオンPTです」

「前衛がショウタ、後衛支援がミナ、遊撃がクロ」


 ガイルは、俺たちを一人ずつ見回し、短く頷いた。


「足を引っ張らなければ、十分だ」


 それは評価なのか、牽制なのか、判別のつかない言葉だった。


 次に、挨拶したのは――対照的に“軽さ”を感じさせる三人組だった。


 一番前を歩くのは、明るい茶髪の細身の青年。

 短剣が左右の腰に一本ずつ。


 その後ろに、杖を持った若い女性。

 さらに、軽盾と槍を構えた小柄な獣人の戦士。


「……あれは斥候型PTだな」

 クロが静かに言う。


 青年が、朗らかな笑顔で手を振ってきた。


「やあやあ、君たちが再集合した噂のPTかな?」

「俺はカイン。斥候兼リーダーをやってる」


 杖の女性が、少し緊張した様子で頭を下げる。

「回復術師のフェルナです……よろしくお願いします」


 最後に、獣人の槍使いが、ぎこちなく名乗った。

「……ガロ。突撃と囮、やる」


 クロが、思わず小さく笑った。

「随分、毛色が違うな」


 カインは肩をすくめる。

「大物相手は初めてだけど、逃げ足には自信があるよ」


 三組、合計――


 レオンPT:4名

 ガイルPT:4名

 カインPT:3名


 総勢11名。


 ガイルが、地面に簡易地図を広げた。


「対象の大型魔物は、この廃鉱山跡を根城にしている」

「周囲には、その影響で活性化した魔物が多数いる」


 赤い印が、鉱山入口と、周辺一帯に打たれている。


「よって、作戦は三段階だ」


 大斧で、順に指し示す。


「第一段階――周辺魔物の排除」

「第二段階――廃鉱山入口の確保」

「第三段階――大型魔物の本体討伐」


 レオンが口を開く。

「役割分担は?」


 ガイルは即座に答えた。


「正面突破と盾は、俺のPTが引き受ける」

「レオンPTは、側面展開と後衛防衛」

「カインPTは斥候と撹乱、脱出口の確保」


 カインが親指を立てた。

「逃げ道は、任せてよ」


 クロは小さく鼻を鳴らす。

「……縁起でもねぇな」


 ミナは少し緊張しながらも、強く杖を握りしめた。


 全体の準備が整う。


 装備の最終確認。

 回復薬の分配。

 合図と撤退信号の取り決め。


 ガイルが、全員を見渡して言った。


「いいか。今回の敵は“強い”じゃない」

「“異常”だ」

「判断を誤れば、数が多くても意味はない」


 空気が、一段階、張り詰めた。


 俺は剣の柄を握る。


 これまでの戦いとは、明らかに格が違う。

 だが――


 背後には、仲間がいる。

 左右には、同じ依頼を受けた冒険者たちがいる。


 レオンが、静かに言った。


「……行くぞ」

「ここから先は、全PTが“運命共同体”だ」


 ガイルが重く頷く。


「死なずに帰る」

「それだけを、最優先にしろ」


 北門を抜けた一行は、山岳地帯へ続く険しい道へと足を踏み入れた。


 岩肌むき出しの斜面。

 ところどころに、古い採掘用の残骸。


 そして――


 かすかに漂う、鉄と腐臭が混じった“異様な気配”。


 カインが先行し、低く手を上げた。


「……前方、何かいる」

「数は不明。けど……普通の魔物じゃない」


 レオンが即座に指示する。

「全体、警戒」

「第一段階……もう始まっていると見ていい」


 俺は、剣を静かに抜いた。


 大型魔物への道は、すでに血の匂いに満ちている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ