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あまりに残酷で幻想な大地で、僕たちは優しさの使い方をまだ知らない  作者: 抄録 家逗


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変わった背中、変わらない場所

 街の朝は、七日前と同じようで、どこか違って見えた。


 宿屋の前を通り過ぎるとき、無意識に足が止まりかける。

 七日前まで、ここに仲間がいた。

 今はもう、それぞれの道を歩いている。


 だが今日は――違う。


「……迎えに行く日だ」


 そう呟いて、俺は剣の柄を軽く叩いた。

 確かにここにある重み。

 七日間、アヤと積み上げてきた“生きるための力”。


*****ギルド前*****


 ギルドの前は、朝から人でごった返していた。

 討伐帰りの冒険者。

 新規登録の新人。

 依頼の張り紙を睨みつけるベテランたち。


 その喧騒の中――

 俺は、約束の場所へ向かう。


 ギルド裏手、小さな広場。

 最初にPTを組んだ、あの場所。


 まだ――誰もいない。


 石の縁に腰を下ろし、空を見上げる。

 雲がゆっくりと流れていく。


「……全員、無事に来いよ」


 そう願った瞬間だった。


「――ショウタ」


 聞き慣れた、少し低くて落ち着いた声。


「……レオン」


 振り向くと、そこにいたのは――

 剣を腰に帯び、背筋をまっすぐ伸ばしたレオンの姿だった。


「……久しぶりだな」

「七日ぶりだ」


 短い言葉。

 だが、その佇まいだけで分かる。


 ――変わった。


 目に迷いがない。

 立ち方に、芯が通っている。


「師匠は……どうだった」

「想像以上に、容赦がなかった。だが――」

 レオンは一度だけ、静かに息を吸う。

「“守るための回復”とは何か、叩き込まれた」


 腰の小さな聖具が、微かに光って見えた。


「……お前も、顔が違うな」

「アヤの地獄を、少々」


 二人で、小さく笑った。


 市場の方から、ぱたぱたと軽い足音が響く。


「……ショウタ……!」


 息を切らしながら駆けてきたのは――ミナだった。


「……無事だったか」

「うん……ちゃんと……生きてる……」


 だが、その声音は七日前よりも、はっきりしている。


 魔導書を胸に抱え、

 杖は以前よりもしっかりと握られている。


 目が、逃げていない。


「……顔つき、変わったな」

「……いっぱい……怒られた……でも……逃げなかった……」


 その言葉だけで、修行の重さが伝わってきた。


 レオンが静かに頷く。

「ミナは、もう“守られるだけの後衛”じゃないってことだな」


 ミナは、少し照れたように視線を逸らした。


 最後に現れたのは――

 金属の鎧が、朝日に鈍く反射した瞬間だった。


 重い足音。

 だが、迷いの無い足取り。


「……遅れた」


 クロだった。


 七日前まで片腕を庇うようにしていた姿は、もう無い。

 両肩が、自然に開いている。


「……完全に、治ったな」

「……ああ」


 それだけで十分だった。


 クロは一度だけ拳を握り、開いた。

 力が、確かに戻っている。


 こうして――

 四人が、再び揃った。


 誰も欠けていない。


 レオン。

 ミナ。

 クロ。

 そして、俺。


 それぞれが、七日間を生き抜いて、ここに立っている。


「……まずは」

 レオンが静かに言う。

「生存報告、完了だな」


「ああ」

「……うん」

「……問題ない」


 短い言葉。

 だが、それ以上はいらなかった。


 俺は、三人の顔を順に見た。


「……で」

 クロが言う。

「次は、どうする」


 レオンが、ギルドの張り紙の方へ視線を向ける。

「師匠への道は、まだ途中だ」

「銀貨も、まだ足りない」


「……だから」

 ミナが、小さく、でもはっきり言った。

「また……みんなで……依頼に行こう……」


 三人の視線が、俺に集まる。


 俺は、剣の柄を軽く叩いた。


「――当然だろ」


 四人で、同時に頷いた。


 こうして――

 再び、俺たちの物語が動き出す。


 七日間の修行は、終わった。


 だが――

 本当の戦いは、ここからだ。

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