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共鳴と転校生 2

「では、改めて話を戻そうか」

「お、おう」


そうだ、そうだったな。

腑抜けている場合じゃないぞ、健太郎。

クラスメイト三人の好感度はどうにか稼げたが、今のままではまた磐梯の野郎が卑怯な手を使って紅薔薇王(クリムゾン・キング)の冠をかっさらっていく。

奴に三度も殺されてたまるか。

そもそも負けること自体二度と御免だ、これ以上理央を巻き込んで不安にさせたくもない。

よし、改めて気合を入れるぞ!


「特別審査員に選ばれた男女は残り九名、次はどんな手を考えている?」

「それなんだけどさ」


実を言うと、今週末も既に予定が決まっていたりする。

まあある意味渡りに船というか、先週末のデートが呼び水になったような形なんだが。


「朝稲が、先週末俺が三人とデートしたって誰かに聞いたらしくて、今週末は自分に付き合えって誘われたんだ」

「なるほど、都合よく事が運んだね」

「まあ、そうは思いたくないんだが、ついでにたまたま近くにいた杉本も話に便乗してきて」

「それでは今週末は朝稲君、杉本君と交友を深めてくるわけか」

「おう」

「承知した、僕も事が上手く運ぶよう祈っているよ」


うう、複雑だ。

片想い中の相手に別の子とのデートの予定を話して、それを認められるってどうなんだ?

まあ背景には俺の命が掛かっているわけだが、ちょっとくらいはその、妬いて欲しいな~なんて。

でも俺と理央は友達で、それ以前に男同士だ。

俺だって他の野郎からデートの予定を聞かされたところで何とも思わない、むしろかなりどうでもいい。

やっぱり、前途多難だな。

まずは意識してもらうところから、なんて、それが一番ハードル高いんだが、はあ。


「健太郎?」

「あ、ああ」


いかんいかん! 今それはどうだっていいんだ。

とにかく今週末、朝稲と杉本を誠心誠意もてなして、抱えている悩みが少しでも軽くなるよう頑張らせていただく。

それが結果として俺の生存にも関わってくるからな。

理央だって純粋に俺を想って応援してくれているんだろう、そこにきっと他意はない。

だから俺も素直に受け取ろう。


「あのさ、理央」

「なんだい?」

「今度もその、デートの帰りに連絡するから」

「分かった」

「知ってるだろうけど、俺、あくまで友達としてデートするだけだからな、勘違いするなよ?」

「うん、理解しているよ」


そうか。

―――そうなのか?

つまりどういう意味だ? 理解しているから妬かないとかそういうことなのか?

違ったら妬いてくれた?

そもそもデートは認める姿勢なのか? 俺のことをどう思っているんだ? 理央は俺にとって自分をどういう存在だと。


ッあー!

何もかもが悩ましい!


まあ理央に関しては文化祭の後夜祭までひとまず保留だ。

先に片付けないとならないことがあるし、この障害をクリアしない限り俺達に未来はない。


―――そして、週末。


「い、いかん! 寝坊した!」


目を覚ましてボケッとしながら時刻を確認すると同時に覚醒してベッドから飛び起きた!

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!

ま、ま、待ち合わせ予定の三十分前ッ!

最悪だ、すっかり寝過ごした、惰眠を貪っていた今朝の俺よ許すまじ!

これは最早、遅刻確定。

超特急で身支度を済ませ、家を出る前に朝稲と杉本に遅れると連絡を入れる。

表の道を超ダッシュ、なんて悠長な真似していられるか、よっ! ほっ!


車庫の屋根に上ってそこから塀を伝い、ありとあらゆる障害物を乗り越え、利用し、最短ルートを駆け抜ける!

やっててよかったパルクール!

昔、先輩に無理やり突き合わされて習得したんだよな。

あの先輩、自分は忍者の末裔だとか言っていたが、本当だったんだろうか。

とにかく通報されないギリギリを攻めつつ待ち合わせ場所へ急ぐ。

途中で俺を見た子供が某アメコミヒーローみたいだと騒いでいたが、今はそんなことを気に掛ける余裕すらない!


駅が近付き、人も増えてきた。

流石にそろそろ目立つ真似は控えた方がよさそうだ、今度は通行人を躱しつつ全力疾走! 急げ急げ!

思ったより早く辿り着けるかもしれない。

でも遅刻は遅刻だ、二人には全身全霊で謝罪しよう。

女の子を待たせるなんて最低な行為、どう償えば許してもらえるか、ううっ、このことを話したら理央にまで叱られそうだ。


待ち合わせ場所が見えてきた。

朝稲と杉本は―――いた!

けど、あれ? 誰かと話してる?

というか揉めている様に見える、相手は知らない野郎二人組だ。

速度を落としつつ近付くと、会話内容が切れ切れに聞こえてきた。


「だーかーらぁッ、待ち合わせだって言ってるっしょ!?」

「けど来ねーじゃん」

「だから俺らとカラオケ行こうって」

「ノン! 貴方がたとなんてお断りよ!」


うわっ、ナンパか!

ふざけるんじゃねえぞ!


「おいッ」


怒鳴ると振り返った朝稲と杉本が、あからさまにホッとした表情を浮かべた。

怖い思いまでさせてしまった。

大丈夫、このクソどもは今すぐ蹴散らしてやる!


「あぁ?」

「なんだお前」

「二人のツレだ! ナンパども、許さんぞ!」


俺の大声に周りがざわつき始めた。

おっといかん、通報されない程度にセーブしよう。

野郎どもの様子は若干引き気味だ。

こういう場面は先制攻撃からの先にイニシアチブを奪取した方が勝つ!


「二人が可愛いからってな、ナンパはいかんだろナンパは! 恥を知れ!」

「あ?」

「ナンパって」

「違わないだろうが、今ナンパしてただろ! 見てたぞ!」


まっとうな指摘を受けた野郎どもは若干ばつの悪そうな表情で舌打ちする。

更に朝稲、杉本との間に割って入って、それぞれをガン見した。

ふん、俺より背が低いな。

体もひ弱そうだ、筋トレが趣味の俺には遠く及ばない。

何より俺より不細工かつ、ダサい。

俺の方が圧倒的に勝っている、散れ三下、お前達はお呼びじゃねーんだよ。


奴らも事実を理解したのか、そのうち負け犬の如くモニョモニョと捨て台詞を吐きながら去っていった。

アイムウィン!

ふんッ! 朝稲と杉本をナンパしようなんて百億万年早いわ!

もうちょっとマシな面に生まれ変わって出直すんだな、もしくはもっと男を磨け!

しかし、師匠直伝のナンパ撃退法が無事に通用してよかった。

改めて感謝します、師匠。


「ッんの、アホぉッ!」


ッだ! い、いきなり背中を叩かれた!

振り返ると朝稲は更にポカポカとパンチを繰り出してくる。

うっ、痛ッ、結構痛い、落ち着け朝稲、悪かったから!

その隣では杉本が「ブラヴォー!」なんて手を叩きつつケラケラと笑って、なんだこのカオス?


「ケンが遅刻するからぁッ、変なのに絡まれたでしょ! 怖かったんだからね!」

「ご、ごめんって」

「アホッ、サイテーッ! このバカバカバカバカバカ!」

「悪かったって、本当にすまん、申し訳ない」

「だけど面白かったわ、あのペショ、尻尾を巻いて逃げて行ったわね、フフッ」

「笑ってないでアンタも怒りなさいよ!」


朝稲は言うが、杉本は軽く肩を竦めるだけだ。

それを見て朝稲もようやく気が収まったのか、俺を殴る手を止めてくれた。

ふう、ようやく取り付く島ができたみたいだな。

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