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共鳴と転校生 1

LOOP:6

Round/Echo



先週末のデートは大成功だった。


そう実感したのは翌日、月曜の朝から早速だ。

虹川、清野、愛原は前以上に親しい雰囲気で、清野もメイド服を着ることを前向きに納得して受け入れた様子だった。

三人は積極的に打ち合わせをしたり、俺にも意見を聞きに来たりと、文化祭を楽しもうって意欲にあふれている。

それを見ていたクラスの野郎どもにまでついでに感謝されたし、俺も楽しみだ。

当日はきっと最高に可愛いメイド姿を拝ませてもらえるぞ。


昼になり、今日も理央を誘って屋上へ向かった。

磐梯の野郎は前と同じように午前中だけ教室で適当に過ごし、昼前には帰ってしまう。

マジで何なんだあいつは。

そういや、どこに住んでいるとかの情報はさっぱり聞かないな。

五月女も知らないようだし、本当に謎の多い野郎だ。


理央とは作戦会議、という名目で一緒に昼を過ごしているが、実際のところは俺の癒し目的の方が大きい。

いよいよ二週間後まで迫った文化祭。

今度こそ紅薔薇王(クリムゾン・キング)の王冠を手にできなければ、俺はまた磐梯に殺されてしまう。

その時、前と同じようにループできるかは不明だ。

多分するんじゃないかって淡い期待はあるが、確実じゃないことに命を賭けるわけにはいかない。

最悪そのまま本気のデッド・エンドを迎えるからな、洒落にならない。

以前も何度も殺されて、その度に時間が巻き戻ったが、この現象が異常で本来なら俺はとっくに故人になっている。

それを忘れて現状に胡坐をかくわけにはいかない。


だから、プレッシャーはある。

でも理央がいてくれたら、全部乗り越えられそうな気がしている。

どんな困難だって理央が一緒なら平気だ。

そういう想いは、今の状況に立ち向かっていく上で一番必要じゃないかって思う。


「そう言えばさ、理央、磐梯が転校してきてから、朝は大抵一緒に登校してくるよな」

「ああ」

「なんで?」


正直気に食わないんだが。

特に俺を得意げに見るあの目!

存在感をアピールしているつもりか、調子に乗りやがって。


「阿男は、うちの敷地内にある別邸に滞在しているからだよ」

「は?」

「まあ、交流は殆ど無いし、通学用の車も別にしているから、心配は無用だが」


なっ、なんだってええええええ!!!

あの野郎! 理央と同じ敷地内で生活しているって、マジか!

チクショウふざけんなよ!

羨ましいにも程がある、おのれ、許せん!


「クソが」

「ん?」


怨嗟の言葉を吐く俺に、理央は不思議そうに小首を傾げつつ、同時にはらりと落ちた前髪を軽く掻き上げる。

可愛い。

表情と仕草に見惚れて若干気が紛れた。

だがあの野郎は許さん、いずれギッタンギッタンにしてやる。


「それよりも君、先週末の成果は上々のようだね」

「ああ」

「虹川君、愛原君、清野君、傍目にも以前よりだいぶ親しくなった様子だ、君との関係も良好なようだし、あれなら阿男の術は効果を発揮しないだろう」

「だったらよかった」


心底思う。

訳の分からない術で、よりにもよって心を操られるなんて最悪だもんな。

俺が勝つために必要なことでもあるが、それ以上に三人を守るため、皆が心に抱えていた悩みを少しでも軽くできたなら、本当によかった。


「聞いたよ、贈り物をし合ったそうだね、形に残るものは付随する記憶を保持する縁にもなる、上手いやり方だ」

「そんなつもりでやったわけじゃないよ」


理央は俺をじっと見つめて、ポケットから何かをいそいそ取り出す。

月曜に成果を報告した時渡したハンカチだ。


「これも、君との縁だ」

「ああ」

「君は手掴みで弁当を食べていないし、僕のハンカチも汚れはしなかったというのに」

「だけどプレゼントするって約束しただろ」

「そうだね、律儀なことだ」


もしかして余計な世話だったかな。

理央の様子を窺う。


「でも嬉しいよ、あの日の出来事を、このハンカチを見るたび思い出す」


有難う、と微笑む理央に心を奪われてしまう。

俺はどうやったって理央が好きだから、そんな風に言われただけで舞い上がってしまうんだ。

胸がドキドキして苦しい。

好きだ、理央。


「なあ、理央」

「うん?」

「その、さ、俺、お前ともデートしたい」


先週末に三人としたようなことを全部理央ともしたい。

でも、その時は友達としてのデートじゃない。

叶うなら恋人として、せめて俺をもっと意識してもらうために、二人で出掛けたい。


「いいよ」


ニコリと理央は微笑み返してくれる。

胸がグッとなって高鳴る。


「じゃ、じゃあ、フルパラ行こう、行ったことないだろ?」

「ああ」

「シレーナでフラッペ風カプチーノの新作を飲んだこともないんじゃないか?」

「そうだね」

「じゃあ今度、二人で」

「分かった」


理央は手に持っているハンカチを、ポケットへ大切そうに仕舞いなおす。


「僕も、君との縁がもっと欲しい」

「理央っ」

「二人の思い出を増やしに行こうか、楽しみにしているよ」

「あ、ああ! 任せておけ!」


くうッ、理央ッ! 理央~ッ!

もっとお前と色々な物を共有したい、時間、思い出、言葉も空気も何もかも、全部が欲しくてたまらない!

そしていつか、俺と同じくらい俺を好きになって欲しい。

この想いをお前に―――伝えたい。


理央はいつだって本当に綺麗だ。

単純に美人だってのもあるが、雰囲気とか仕草とか、言葉とか表情とか、そういうもの一つ一つがキラキラと輝いて見える。

俺に向ける優しくて暖かな眼差し。

吐息も、声も、理央の存在全部が眩しい。

胸の奥から湧き出す想いで体が張り裂けそうだ、俺の全身が理央を好きだと叫んでいる。


「健太郎」


不意に理央がクスッと笑って、俺の鼻をつまむ。

ふが、な、なに?


「間抜けな顔をしているよ、今、僕を見つめて何を考えていた?」

「えっ、な、なにも」

「ふぅん?」


お前のことでいっぱいだなんて言えるか。

くそ、顔が熱い。

理央も分かっていて俺に訊いたんじゃないか? 小悪魔め。

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