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友情と転校生 5

「け、健太郎君!」


慌てて追いかけてきた愛原に軽く笑い返して、虹川と清野を呼ぶ。


「はい、これ」

「えっ、何?」

「どうしたの、健太郎君」

「これは愛原さんが選んだお揃いのキーホルダー、これが虹川さんで、こっちが清野、そしてこれは愛原さんの分」


キャンディー、マカロン、ソフトクリームを、それぞれ俺の独断で渡す。

最後に残ったせんべいのキーホルダーを三人に見せつつ「そしてこれは俺の分、今日の記念だ」と理由を告げた。

四人でお揃い、きっといい思い出になるよな。


「へえ、可愛いね、メグ、センスいいじゃん」

「本当! すっごく可愛い、健太郎君も有難う」

「あ、あの、その」

「大事にするよ」

「私も、早速バッグにつけちゃおっと」


二人がそれぞれバッグにキーホルダーをつけるのを見て、愛原は戸惑った様子で俺を見上げる。

俺もキーホルダーをバッグにつけた。

せんべい、可愛いじゃないか。

愛原は暫く俺や虹川、清野の様子を窺い、自分のバッグにもキーホルダーをつける。


「お揃いだね」

「うん、チームって感じ」

「そうだな」


不意に、愛原がぽつんと「有難う」と呟く。

嬉しそうな様子に、俺も何だかしみじみする。


「あっそうだ、健太郎、さっき私とミキでこんなの見つけたんだけど、メグにどうかな?」


そう言って清野が出したものは、エプロンだ。

虹川はミトンを俺に見せる。

どっちもフルーツの柄ですごく可愛い、色味も合わせて女の子って印象だ。


「いいな、それ!」

「メグはどう? 気に入ってもらえそう?」

「う、うんっ」


愛原は必死に頷いてから、俺達に「いいの?」と訊いてくる。

いいに決まってる。

よし、愛原へのプレゼントはこれだ!


会計して、プレゼントラッピングしてもらい受け取ったエプロンとミトンを愛原に渡す。

愛原は「今度収録する時に使わせてもらうね」とはにかんで笑う。

それはすごい!

登録者数十万人以上のチャンネルに俺達があげたプレゼントが登場するのか、感無量だな。


「ねえ、ここの商品バカ売れするかもよ? 今のうちに利益の何パーセントか貰う約束でも取り付けておきなよ」

「えっ、ええっ!」

「こらリン、そういうのを下世話って言うの、メグが困ってるでしょ」

「ちぇッ、だって私達のおかげでもあるし、割引のクーポンくらいくれるんじゃない?」

「もう、いい加減にしなさい」


俺も虹川に同意だ、厚かましい奴め。


店を出てまたあちこち見て回っている最中、清野がトイレに行きたいと言い出す。

愛原も一緒について行って、俺と虹川の二人だけになった。

流石に疲れたから俺達も小休止だな。

近くのベンチに腰掛けて、虹川は抱えていたウサギのぬいぐるみを膝に座らせた。

なんだか子供を抱っこするお母さんみたいな雰囲気だな。

母性溢れる虹川だからこそ、妙に様になっている。


「ねえ、健太郎君」


ふと俺を見上げて、虹川が話しかけてきた。


「今日は本当に有難う、色々と楽しかった」

「そうか? ならよかった」

「でも、たくさん気を遣わせちゃったね、私達のことばかり優先して、疲れてない?」

「まさか」


そう言う虹川も、と思いかけて、はたとして居住まいを軽く正す。


「俺こそ有難う」

「えっ」

「いつも感謝してるんだ、こんな時でもないと伝えられないからさ」


戸惑う虹川に話を続ける。

誰かの世話を焼くことが好きな虹川が、一人でいることなんて滅多にない。

だからこのチャンスを有効に使わせてもらおう。


「虹川さんは俺や、皆が過ごしやすいように、空気を作ってくれるだろ?」

「それは」

「今日に限ったことじゃなく、周りに気配り、目配りをしてくれるじゃないか」

「ううん、好きでやっているだけだから、気にしないで」

「だとしても、礼を言わせてくれよ」


虹川は優しい。

それに周りを、人をよく見ている。

愛原みたいな人見知りには先に心を開いて受け入れようとするし、清川のように元気な奴にはストッパーとしてあえて苦言を呈したりする。

そして俺には、いつもさりげないフォローと気遣いをしてくれる。


「虹川さんのおかげでいつも凄く助けられている、有難う」


俺を見詰める虹川の目から、不意に何かがポロっと零れて落ちた。

涙?

えっ、嘘だろ、泣かせたのか?

ま、ま、マジか、どッどうしよう! 女の子を泣かせるなんて最低だぞ、俺!

一体何で泣いた? 何か傷つけるようなこと言ったか? それとも無神経だったとか、ううッ、この期に及んで理由が分からん!


「ご、ごめんね、やだなあ、急にこんな、あははッ」


虹川は慌てて手で涙を拭い、小さく鼻を啜る。


「ちょっと、ビックリしちゃった」

「ご、ごめん」

「ううん! いいの、本当に大丈夫だから、それに悲しくて泣いた訳じゃないよ」

「え?」

「嬉しかったんだ、私のことちゃんと見ていてくれる人がいるって分かって」


噛みしめるように呟いた虹川は、じっと俺を見上げる。


「私こそ、いつも有難う、健太郎君」


その言葉は俺の胸にジンと沁み込んでいく。


「君といるとね、元気を貰えるんだ、きっとリンもメグも、他の子達だって同じだよ、君はいつだって前向きで明るいから」

「そうかな」

「そうだよ、そんな君だから好き、あっ、ええと、皆に好かれるんだと思う」


まあ、確かに友達はそれなりにいると思う。

改めて褒められると照れるな、やっぱり虹川は人気者なだけのことはある。

こうやって皆の心を掴んでいくんだろう。


「だからね、改めて今日は有難う」

「おう」

「健太郎君も楽しかった?」

「当たり前だろ、それに今日はまだ終わりじゃないぞ、家に帰るまでがデートだからな」

「あれ? 今日って残念会じゃなかったっけ?」


さっきの清野の言葉を持ち出す虹川に、二人で顔を見合わせて笑う。

どっちだっていいさ、皆で楽しく過ごせれば。


「でも、おかげでスッキリした」

「え、何が?」

「ナイショ」


そう言ってクスッと肩を揺らす虹川に、もしかして少しでも悩みが晴れてくれたのかと思う。

清野や愛原もそうであって欲しい。


「おっ、いたいた、ただいまぁ~って、何?」

「あ、おかえりリン、メグもおかえり」


噂をすればなんとやら、二人が戻ってきた。

清野は何故か訝しげに虹川に詰め寄る。


「ちょっとちょっと、妙に親密な雰囲気なんですけど、私達がいない間に何の話をしてたのさ」

「別に大したことは話してないよ、今日楽しかったねとか、そんなことだよ」

「本当? 怪しいなあ、ねえメグ? 怪しいよねえ?」

「えっ、ええっと」

「怪しくないよ、もう、リンったらまたメグを困らせて」

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