友情と転校生 4
虹川の提案で、近くのショッピングモールを散策することになった。
俺もウィンドウショッピングは好きだ。
見るだけでも楽しいが、掘り出し物があると激熱だよな。
勿論、女の子に付き合って可愛い服や小物を眺めるのも悪くない。
薫に散々付き合わされて、すっかり価値観を植え付けられちまったからな。
「あっ、ねえ、この服!」
何件目かに立ち寄ったショップで、虹川がスマートなシルエットのワンピースを手に取った。
「リンに似合いそうじゃない?」
「ええッ」
話を振られた清野は「に、似合うわけないじゃん」と苦笑いする。
そうかな? 俺も似合うと思うけど。
「試しに着てみろよ」
「へ?」
「俺も似合うと思う、ほら、物は試しって言うだろ」
「そうそう、たまにはスカートもいいよ、ほら!」
「で、でも」
清野は大抵パンツスタイルだ。
学校でも制服よりジャージや部活のユニフォームを着ていることの方が多い。
そういうのが好きなのかもしれないが、俺としてはスカート姿も可愛いと思う。
「じゃあ、ちょっとだけ」
虹川から受け取ったワンピースを持って、清野は躊躇いがちに試着室へ向かう。
少し待つと、おずおずと開かれたカーテンの向こうからワンピースを着た姿が現れた。
「ど、どう?」
「わあ! 可愛いよリン、似合ってる!」
「う、うん、リンちゃん、可愛い」
「お世辞なんかいいって」
「何言ってるんだ、マジで可愛いぞ」
照れ臭そうな清野に俺も声を掛ける。
運動部所属でスタイルがいいから、こういうシンプルなワンピースが映えるよな。
「け、健太郎」
「清野はさ、普段のパンツスタイルもいいけど、こういうのも似合うよ」
「そう、かな?」
「ああ、何ならそのワンピース、プレゼントしようか」
「えっ!」
さっき金額こっそり確認しておいたんだよな。
そんなに高くないからギリで予算内だ。
店員を呼ぼうとすると、清野に待って待ってと止められる。
「いいって! 何考えてるんだよ、服なんて!」
「だって似合ってるし」
「そうだとしても! ったく、流石に私でも悪いって思うよ、余計な気使わないで」
叱られた。
シュンとする俺に、顔色を窺うように清野が話しかけてくる。
「でも、気持ちは嬉しかったよ、有難う」
「清野」
「ねえ、だったら、私と健太郎君、二人からのプレゼントってことにしない?」
虹川?
思いがけない提案に驚いていると、愛原まで「わっ、私も!」と声をあげる。
「さ、三人から、リンちゃんにプレゼント、で、どう、かな?」
「ええっ!」
「メグ、いいの?」
「う、うん、だって、本当に似合ってるから」
虹川と愛原が俺に頷きかけてくる。
俺からはニッと笑い返して、改めて店員を呼んで、支払いを済ませて、清野が来ているワンピースのタグを切ってもらう。
「ちょっと! いいって言ってるのに、なんで!」
清野は慌てているが、虹川と愛原はニコニコ笑うだけだ。
俺も笑顔で清野の肩をポンと叩く。
振り返った清野はバツの悪そうな様子で「まったく、もう」と唇を尖らせる。
「三人とも何考えてるんだよ」
「ふふっ、だってリン、このワンピースを見るたび、今日のこと思い出してくれるでしょ?」
「それは」
「記念だよ、皆で楽しく過ごした思い出の」
「だって、今日は残念会だろ」
「あ、そうだった!」
忘れてた、何て言って笑う虹川に、清野は溜息を吐く。
だけどその後苦笑いで「まったく」と肩を竦めた。
「じゃあ私もミキとメグと、ついでに健太郎にも今日の思い出をプレゼントするよ!」
「ええっ」
「いいじゃん、そっちだけズルいからね、皆にも今日のことを思い出してもらうよ」
「そんなことしなくても忘れないけど」
「私だって忘れないよ! ワンピース見なくたって思い出すから!」
不意に愛原が吹き出して、すぐハッとした様子で口元を手で押さえる。
だけど俺も何だかおかしくて笑っちまう。
つられたように虹川も、最後に清野もとうとう笑い出して、すっかり和やかな雰囲気になった。
「じゃあ、他の店も見に行こう! 何かいいもの見つけなくちゃ!」
「そうだね、行こう」
「う、うん」
「よし、行くぞ!」
店を出て、改めて四人で和気あいあいと歩き出す。
俺も何かいいものを見つけたら三人にプレゼントしよう。
今度はちょっと高い物でもいい。
今日は軍資金をたっぷり持ってきているし、ある意味命が懸かったデートだからな、出し惜しみはナシだ。
「ほらほら、健太郎、チンタラ歩くな!」
「おい、腕を引っぱるなって」
「もうリンったら、今はスカートなんだから、あんまりはしゃいじゃダメだよ」
「えっへへ! まあね、たまには悪くないかな」
雰囲気の違う清野、可愛いな。
随分はしゃいで見えるが、よっぽどワンピースを気に入ってくれたんだろう。
それから―――何件か店を見て回って、今度は俺と清野、愛原から、虹川にぬいぐるみをプレゼントした。
フワフワした手触りのいい大きな白うさぎだ。
「わあ、可愛い、それに抱き心地もいいね」
ウサギのぬいぐるみをギュッと抱きしめる虹川の何という愛らしさよ。
満面の笑みで受け取ってくれて、俺達も大満足だ。
次は愛原、なんて話をしつつ、今度は雑貨屋に立ち寄った。
小物やアクセサリー以外にも色々と置いてある店だな、調理器具や食器なんかも扱っているようだ。
「あ、この水筒いいかも」
「ねえミキ見てよ、ほらこれ、インコがアルマジロ咥えてる置物!」
「えっ、なんで?」
二人で盛り上がっている虹川と清野から、少し離れた場所で何かを手に取り、じっと見ている愛原に気付く。
気になるものでも見つけたのか?
「愛原」
「あ、け、健太郎君」
「どうした?」
持っているのはキーホルダーか?
ビーズで出来ているみたいだ、デフォルメされたキャラクターだな。
キャンディ、マカロン、もう一つはソフトクリームか。
「あの、ね、これ、可愛いと思って」
「そうだな、確かに可愛い」
「う、うん」
どうやらシリーズみたいだな、おっ、あともう一種類あるぞ。
これは、せんべい? なんで?
「それで、その、これ、ミキちゃんと、リンちゃんと、あの」
もしかしてお揃いで持ちたいってことか。
だったらここは、いよいよ俺の出番だろう。
「そうか、ちょっとごめん!」
「えっ」
愛原の手から三種類のキーホルダーを貰い、ついでに取り残されていたせんべいのキーホルダーも手に取る。
まとめて会計へ持っていって支払いを済ませた。




