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魔術と転校生 4/後

「健太郎」

「はい!」


元気に返事したら、理央は目を丸くして笑う。

笑顔が可愛い。


「僕の方で、彼、彼女らに関する情報をあらかじめ集めておいたよ」


そう言って取り出した携帯端末でどこかへ連絡すると、間もなく家のチャイムが鳴る。

玄関に出てみれば、いつも理央の車を運転している運転手さんが立っていた。

この人も美人なんだよなあ、しかもすごい巨乳。

控えめに一礼して「こちらを」と俺にA4サイズの茶封筒を手渡し、また礼をして外に停めてある車へ戻っていく。


受け取った茶封筒を手にリビングへ戻ると、理央から中を見るよう言われた。

中身は紙、いや、書類だ。

これって皆の個人情報? 名前と性別、そして特記事項が記されている。


「彼、彼女らが抱えていると思しき悩みに関しての調査報告書だよ」

「え?」

「阿男の術を防ぐために必要なものだ、よく読み込んで理解し、君なりに行動するといい」


どういうことだ?

この情報を使って、俺は何をすればいい?


「健太郎、要はね、文化祭の期間中、特別審査委員たちが君に普段以上に強い感情を抱けばいいのさ」

「な、なんで?」

「さっき言っただろう、忘れてしまったのか?」


ポカンとする俺を見て、理央はやれやれと肩を竦める。


「阿男が使う魅了の術は、対象に強く愛着する何かがあった場合、効果を発揮しないんだ」


―――ああ、なるほど。

つまりこの悩みを解決してやることで、俺に恩を感じさせて、磐梯の術に対抗しようって意味か。

理央が言いたいことは理解できた。

でも。


「理央」


書類を封筒に戻し、改めて理央に向き直る。


「俺、こういうのは好きじゃない」

「え?」

「友達を利用するなんて嫌だ、まして自分の都合のためだなんて論外だ」

「いや、しかし」

「だから俺は、ここにある皆の悩みと真剣に向き合おうと思う」


まあ結局は同じことなんだが、心構えというか、皆に後ろめたさを感じたくない。

だって友達だ、大切にするのは当たり前だろ。

利用する、なんて考え方は失礼だ。

この悩みを解決するために、少しでも力になる、そのつもりで情報は使わせてもらう。

せっかく理央が俺のために用意してくれたものを無駄にしたくもないしな。


「有難う理央、この情報、大切に役立たせてもらう」

「ああ」


内容を頭に叩き込んだら、書類は即シュレッダーにかけよう。

本当なら誰にも知られたくないことだろうからな、うっかり漏洩なんて絶対にあってはならない。


「やはり君だな」


え?

理央が不意にフッと笑う。

綺麗だ。

まさしく女神、男でも女神だっていいだろう。


「承知した、では僕も、そのつもりで協力しよう」

「おお! よろしく頼む」

「また共同戦線だね、健太郎?」


小首を傾げて微笑む理央に胸がギュッとなる。

苦境に立たされた時、いつも傍で支えてくれるお前の存在がどれだけ大きいか、改めて実感するな。


「頼りにしてるぜ、理央」

「任されたよ、健太郎」


理央と笑い合って絆を確かめ合う。

よーし、改めて勝負だ、磐梯!

今度は絶対に負けないからな。

お前がどんな手を使おうと、俺と理央で必ず阻止してみせる。

もう二度と譲らない。

俺は紅薔薇王(クリムゾン・キング)の冠を勝ち取って、傲慢なお前の鼻をへし折ってやる!

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