魔術と転校生 4/前
出来上がった料理をダイニングテーブルに並べている間に、今回もタイミングよく映画が終わった。
ソファから立ち上がった理央が配膳を手伝いに来てくれる。
あの時もこっそり思ったけれど、新婚みたいでちょっとくすぐったい気分だ。
「さて、食うか!」
「ああ」
向かい合って席に着き、お互いに「いただきます」と挨拶して食べ始める。
いつもながら理央は惚れ惚れするほど食べ方が綺麗だ。
そして美味そうに俺の料理を食べてくれる。
「ところで理央、さっきの話だけど」
「ああ、そうだね、まずはもっとも重要な魅了の術への対策を伝えよう」
理央は箸を持つ手を止め、話し始める。
「まず、こちらに有利な点がある、特別審査員に選ばれた十二名だが、全員が君の友人、知人だ」
「えっ」
「女子は虹川君、清野君、愛原君、そして杉本君、霜月君、朝稲君、あと、星野」
本当に友達ばかりだ。
それに挙げられた名前を聞いて、選抜理由に見当がついた。
全員がとんでもない美少女でありつつ、別の意味でも有名人なんだよな。
分かりやすいところだと清川、あいつは様々な大会で優勝しまくっているし、杉本は最近個展を開いた、朝稲は雑誌でモデルをしている。
愛原は動画配信サイトで料理動画を上げていて、チャンネルのフォロワー数はなんと十万人以上、霜月は周りに隠しているが、実は超人気のライトノベル作家だったりする。
虹川に関してはマジで顔が広い、光輝学園の学区内ではほぼ顔が利くし、それ以上の範囲にも知り合いがいるような雰囲気だ。
そして星野は理央と同類ってことで、理由を考えるまでもないだろう。
「男子もほぼ君の友人ばかりだよ」
「誰だ?」
「睦月 英、そして常盤兄弟」
「えっ! あいつらも特別審査員に選ばれたのか?」
まあ、ある意味では納得か。
睦月も雑誌でモデルをしている、その人気ぶりたるや、あいつが表紙を飾る号は発売前に完売するって程だ。
俺とはたまに話すくらいだったが、謎に気に入られていつの間にか友達認定されていた。
常盤兄弟とは前に派手な喧嘩をして以来の付き合いで、顔を合わせると絡んでくる。
二人は中学時代、バカみたいに強いって恐れられた不良―――いや、まあ、犯罪に手を染めたことはないらしいが、素行は大いに荒れていたらしい。
今は何だかんだ更生、じゃなくて、普通の高校生をしている。
接点のなさそうな奴らに共通しているのは、とにかくとんでもなく顔がいい、歩くだけで女子がハートを飛ばすイケメンどもだ。
「緒方 昌も友人だろう、飛鳥 鈴音は知人かな?」
「飛鳥とも飯食いに行ったことがある」
「では友人か」
「おう!」
緒方は苦労人だ、面倒事を避けるために爽やかキャラを偽装しているが、実際はかなり毒舌家だったりする。
飛鳥は帰国子女で自分を器用貧乏みたいに卑下しているが、俺はオールマイティで凄い奴だと思っている。
あいつらも顔がいいんだよな、結局世の中顔か、ちぇッ。
まあ俺も負けてないけどな!
「改めて君の交友関係の広さには感心するよ」
お! 理央に褒められたぞ。
まあ一度話せば友達だし、毎日話せば兄弟同然だ、悪い奴じゃない限り来るものは拒まず。
誰にでもいいところがあって、誰にでも魅力がある。
そういう部分を見つけるのは人づきあいの醍醐味ってヤツだ。
「けど、じゃあ皆は特別審査員に選ばれたことを、俺に黙っていたのか?」
「そのようだね」
「ちぇッ、水臭い」
「運営委員から口止めされていたようだよ」
「だったら仕方ないか」
つまり当日のサプライズだったってわけか。
クイズ番組なんかで見かける『ラスト問題は各得点数が倍になりま~す』的なアレだな。
運営委員の奴ら、俺と磐梯の勝負にかこつけて、文化祭を更に盛り上げようって魂胆だったんだろう。
こっちは命が掛かってるっていうのに、まああいつらは知らないことだが。
しかも負けて殺されて散々だ。
余計な真似しやがって、今のうちに軽く〆ておくか?
「阿男は君より先んじてこの情報を入手し、利用しようと考えたのだろうね」
「ッチ! 野郎ォ」
「だが今回は先んじてこちらが情報を得ている、君の犠牲の元に」
「それはもういいって、過ぎたことは忘れようぜ、俺は平気だから」
「うん」
理央、ずっと気にしてるな。
これ以上落ち込ませないためにも、今度こそ磐梯の野郎に勝たなければ。
「健太郎、ここからは僕達のターンだ、起こり得る状況を逆手にとって、阿男には掌で存分に踊ってもらおう」
「おお」
「今回もあいつの思惑通りに物事を進行させ、その上で先手を打っておく」
不意に理央はちょっと意地の悪い笑みを浮かべる。
「卑劣な手段で君に危害を加えたんだ、その落とし前をつけてもらわなければね」
「お、おう」
「あいつが手の内を明かさないのだから、こちらもこのことを伝える義理はないよ、至ってフェアな対応さ」
「だな!」
なんだかワクワクしてきたぞ。
磐梯の野郎にループの記憶はない、だからきっとまた同じ手を使って俺を陥れようとする。
そこを逆に利用してやるなんてなかなか悪趣味だが、それがいい。
待ってろよ磐梯、今度は俺と理央がお前に目にもの見せてやるからな。




