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魔術と転校生 2

「磐梯の家はね、代々魔術を使うんだ」


魔術?

それってあの某ポッターとか、某ファンタスティックとか、某ドクターとか、そういう感じのアレのことか?

けど魔術って、確かに荒唐無稽な話だ。

理央が言うなら本当なんだろうが、前に聞いても信じたかどうか若干怪しいかもしれない。


「あの日、あいつは魔術を用いて君や周囲を操り、紅薔薇王(クリムゾン・キング)の宝冠を掴み取った」


唖然とする俺を窺うように、理央はじっと見詰めてくる。

嘘だろ、と思う反面、俺自身もう何度も死んでからのループを繰り返している以上、あり得ない話ではないとも感じる。

それに―――段々思い出してきた。

文化祭前日の帰り道で、呪文のような声を聞いたんだ。

同時に酷い頭痛に襲われ、気付いたら講堂の壇上で磐梯に敗北し、約束通り殺された。

こんな訳の分からない状況を説明できる理由なんて、それこそ人知を超えた力が作用したってくらいしか思いつかない。

つまり、磐梯は本当に魔術を使って俺を陥れた、のか?

あの野郎、正々堂々と戦うことを約束したのに、卑怯者め。


「だが健太郎、勘違いしないで欲しいのは、このやり方はあいつの流儀に則れば至極まっとうなものであり、阿男も何ら後ろめたいところなどないだろう」


えっ、と理央を見る。

理央は何故か申し訳なさそうに少し視線を逸らす。


「それでも、君相手に手の内を明かさず、自身の流儀を押し付けたことに関しては遺憾に思う、作戦といえども卑劣だ」

「それって?」

「君達は真っ向から戦い合うと宣言しただろう、だが普通は相手が魔術を使うなどと考えるわけがない、自分の土俵で強引に相撲を取ったようなものだ、許し難い」


俺はあの時、磐梯の野郎をけん制するつもりで釘を刺した。

だがお陰で魔術なんてとんでもない隠し玉を持っていた奴との勝負を、一方的な敗北で終わらせずに済んだのかもしれない。

またループしたのもそういうことか?

薫の時同様の不条理な死。

つまりまだ勝敗は決していない、そういうことなんだな? 俺をまた助けてくれた魔女もそう判断したってことか?


「健太郎、僕は奴が使う術を知っている」

「えッ!?」


ま、マジか。

凄いな理央。


「魅了の術だ、対象の認知を歪め、その心を思うままに操る」

「なにッ!?」


あの野郎、そんなとんでもない真似ができるのか!


「ただ、この術には幾つか制限があってね」

「へ?」

「まず、格上相手には通用しない」

「ほう」

「そして術を掛ける対象に強く愛着する何かがあった場合、効果は十分に発揮されない」

「へえ」

「術を同時に掛けられる対象の数にも限りがある、精々が十数人と言ったところだ」

「なるほど」


複数人同時に攻略できるってだけでもとんでもない気がするが。

それにしても凄い。

磐梯が使う術もだが、それを具体的に把握している理央にも驚いた。

遠い親戚って言ってたし、理央の方が本家筋らしいから、その絡みで知っていたんだろうか。


「君の敗北は、この術を巧みに利用された結果だ」


背景は大まか理解できた。

でも実際に何が起きたかはさっぱり分からないんだよな。

そう思う俺の心情を汲み取ったように、理央は話を続ける。


「では今度は文化祭当日、君に何が起きたかを、僕の視点から語ろう」

「助かる、あ、ちょっと待って」


ずっと話して喉が渇いたんじゃないか?

立ち上がってキッチンへお茶を淹れに行く。

この感じだと、今日も昼過ぎの登校になりそうだな。


「なあ理央」

「なんだい?」


水を入れたケトルを火に掛けつつ、ちょっと気になったことを訪ねる。


「磐梯の野郎が魔術を使うなら、もしかして俺やお前みたいにループの記憶が残っていたりするかもだよな?」


俺達は魔術なんて使えないが、どこかの魔女の粋な計らいでループした記憶が残っている。

それはつまり、魔女の力の影響を受けているってことだろう。

だったら、同じではないにしろカテゴリー的には同一の力を持っている磐梯も影響を受けている可能性はないか?


「いや、奴はこのことを知覚できない」

「え?」

「と、思う、その点に関しては心配いらないよ、気にしなくていい」


随分はっきり言うな、もしかしてここへ来る前に探りでも入れたのか?

まあいい、理央が言うならそうなんだろう。

どのみち勝負は仕切り直しだ、小賢しい真似しやがって、あのクソ野郎。


カップに紅茶を淹れて、理央のところへ戻る。

隣に座って片方のカップを手渡すと、受け取った理央は「有難う」と微笑んでから紅茶を一口飲み、文化祭当日の話を始めた。


「僕もあの日は朝からトラブル続きでね、学園に到着するのが遅れたんだ、投票結果が発表される一時間前だったかな」

「えっ、何があったんだ? 大丈夫だったのか? まさかお前まで怪我したなんてこと」

「いいや、違うよ健太郎、いつも乗っている車が故障してね、代車も何かとトラブルに見舞われて、物理的に移動できなかっただけだ」


そうか、よかった。

いやよくない、それもまさか磐梯が魔術で仕組んだことなのか?

理央にまで手を出すとは、許せん。


「いっそ歩いて登校しようとしたんだが、家の者に止められてどうにもならなかった、すまない」

「謝ることないだろ、お前は何も悪くないじゃないか」

「いや、まあ、そうだな」


それでも後悔している雰囲気の理央に、掛ける言葉が思い浮かばない。

本当に優しい奴だな。

理央、有難う。


「それで、どうにか学園に辿り着きはしたが、その地点で校内全体がおかしな様子になっていた」

「おかしい?」

「ああ、皆心ここにあらずと言った様子でね、恐らくは薬を盛られたのだろう」

「薬?」

「そう、文化祭で使用する予定の飲食物全てに、何かしらの手段を用いて」


それも魔術なのか!?

とんでもない話だ、完全にテロじゃないか! あいつ正気か?


「阿男の家に伝わる秘薬だろう、服用すると肉体と魂の接続が切り離され言動に意思が伴わなくなる、効果は半日ほど続く」

「おいおい、結構長いし洒落にならないぞ、それ」

「ああ、このことについても許されざると思っている、あまりにも浅慮だ、目的のためとはいえ程度が過ぎる」

「お、おお」


理央、もしかして結構怒ってるのか?

見た感じ今日も超絶美人なだけだが、さっきから言葉にどことなく刺がある。

怒った美人って怖い。

俺も気をつけよう。

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