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テオバルト記  作者: しゅーぼー
少年編
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第五話 プレゼン


「お時間を頂きありがとうございます」


 先日から考えていたことを父上、母上、兄に発表する時が来た。


「テオが色々考えていたという報告はレンから聞いているよ」


「テオがこれから何を発表するのか楽しみですね」


 両親はニコニコして待っている。

俺は少し緊張しているが、領民の為と思い気合いを入れる。


「先日領都の中を見て回った際、スラム街があることを知りました。そこでスラム街を失くす為の施策を提案します」


「スラム街か、頭の抱える問題だな。しかし、一体どうするのだ?」


 父上が頭を抱えながら心配そうにこちらを見る。


「順序立てて説明しますね。

スラム街を失くす為には、雇用が必要だと考えました。

雇用によって金銭が手に入れば生活をすることが出来ると思いました。

しかし、一過性の雇用ではなく、中長期的な雇用が必要です。

そこで、我が領での農業に着目しました。

我が領では様々な農作物を生産していますが、一番多く生産されているのが麦です。

脱穀などが手作業で行われていると書かれていたので、効率的に脱穀出来る装置を考案しました。

その絵がこちらになります」


「これは?二つ描かれているよ?」


 怪訝な顔で父上が尋ねてきた。


「こちらのものは麦の穂をこの歯の部分に通して引っ張ることで、籾が引っ掛かり落ちます。

これにより手作業で叩いて籾を採るやり方より効率的になるはずです。

こちらのものは先ほど採取した籾を上から落とし、横にあるハンドルを回すことで中の羽が風を送り、軽い藁や塵などを飛ばして重さのある実だけを下へ落とします。

これにより、麦の生産効率を上げることが出来ると考えました」


 身振り手振りの俺の説明を聞いた両親は、目を見開いて固まった。


「こ、これは画期的だ……」


「……テ、テオ?これをどうするの?」


「試作などは必要ですが、この二つは構造があまり複雑ではなく、比較的簡単に製作することが出来ると考えています。

そこでスラム街の住民をこの製造の雇用にどうか?という提案です。

我が領都の工房の協力が必要かと思いますが、怪我をして働けていない冒険者や貧困にてスラム街の住民になっている大人は雇用出来ると思います」


「・・・確かにそうだな」


「雇用することで賃金が発生します。

初めは支援が必要ですがスラム街を解体し、集合住宅を建ててそこに住民を住まわせます。

住宅の家賃は低めに設定し、雇用によって得られる賃金を月々の返済に当てて貰います。

これで今あるスラム街の住民の生活が改善されると思います」


「なるほどな」


「テオ、先ほどスラム街の大人と言っていましたね。

孤児達もいると思いますが、その辺りはどうなのですか?」


 母上は気付いたか。

母親として子供に関することは敏感だよな。

ここからは慈善事業の説明だな。


「はい母上、孤児達については孤児院の設立を提案します。

先ほどの装置は自領だけでなく他流へ販売することを考慮しています。

そこで得た収益の一部を孤児院の運営資金に回すことで賄えると考えています。

スラム街の大人の中には働けない男や老人、女性などもいるはずです。

その大人達に孤児達の面倒を見て貰おうと思います。

人手が足らなければ、侯爵家で新たに雇用しても良いのではないかと思います。

領都だけでなく、領内には孤児が沢山いると思われます。

悲しいことですが……

救済措置として必要と考えます」


「ちゃんと子供達のことも考えていたのですね」


「勿論です母上。

装置の販売を他領へ行うと、次第に模倣されることが予想されます。

その対策として、焼きごてなどで我が侯爵家の家紋を刻印します。

これで模倣されてもうちの製品でないと証明できると思います。

トラブルや収益の確保を目的としてこれを提案します。

必ずと言っていいほど難癖付けてくる貴族はいますからね……

販売の際には、領内の孤児院の運営資金にもなっていると謳えば、我が侯爵家の名声も上がることでしょう」


「テオよ!この施策は素晴らしいぞ!」


「そうね、様々なことに配慮されています。私は誇らしいです」


「さすが俺の弟テオだな!ハッハッハ」


 三人とも手放しで褒めてくれた。

気合い入れて頑張った甲斐があった。



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