第一話 平凡な日々
目覚めて思考に整理がついたタイミングで部屋の扉にノックがされ、扉の向こうから俺を呼ぶ声が聞こえた。
「テオぼっちゃま、起床のお時間でございます。お部屋に入りますよ」
「あぁ、入ってくれ」
部屋に入ってきたのは、我がロンベルク侯爵の屋敷でメイド長をしているアンナ・ポットだった。
「おはようございます、テオぼっちゃま。今日はちゃんと起きていらっしゃいますね」
「おはようアンナ。良い天気だな」
「はい、今日はとても良い天気ですよ。もうまもなく朝食の時間でございます。お着替えになって食堂までお越しになって下さいな」
「分かったよ、ありがとう」
そう言いながらアンナは部屋のカーテンを開けて部屋を出ていった。
窓から見える空は青く広がっていた。
ベッドから起き上がり、用意されている服に着替えて食堂へ向かった。
食堂に入ると俺以外の家族がすでに揃っていた。
「おはようございます。父上、母上、バン兄さん、ジーナ」
「おはようテオ、席に着きなさい。揃ったことだし食事をしよう」
席に着くと朝食が配膳されてきた。
朝食を配膳するのは屋敷のメイド達だ。
執事長のセバスチャン・ポットは父上の傍で控えており、メイド長のアンナは母上の傍に控えている。
名前の通り、セバスチャンとアンナは夫婦だ。
兄と俺の専属執事、妹の専属メイドは二人の息子と娘だ。
家族で我が侯爵家に仕えてくれている。
我が父、レオナルド・フォン・ロンベルク侯爵。
金髪をオールバックでまとめ、青い目のイケメンだ。
確か三十五歳だったはずだ。
しっかりとした体格に、高身長で百八十は越えている。
母、フィーナ・フォン・ロンベルク。
燃えるような赤い髪を背中まで伸ばし、艶のある光沢の髪だ。
瞳も赤く、キリッとした目元をしている。
身長も父同様高く百七十を越えている上に、豊満な胸を持ちスラリとしたスタイルの美女だ。
年齢は父と同い年で、学園に通っていた時の同級生だそうだ。
貴族としては珍しく恋愛結婚だったようで、母は伯爵家の出身だ。
兄は、バンボルド・フォン・ロンベルク。
俺より三つ年上の八歳。
父譲りの金髪に青い目の整った顔立ちをしている。
将来、父の後を継ぎ侯爵となる身だ。
その為、日頃から様々な教育を受けて忙しそうだ。
妹は、ジーナ・フォン・ロンベルク。
俺の二つ下の妹だ。
母譲りの赤髪に赤目をしていて、目がクリクリしていて可愛らしい。
活発で元気一杯の愛しき妹なのだ。
「テオ、今日は何をするんだい」
父がふと俺に聞いてきた。
「今日は書庫にて読書をしようと思っています」
「あら、本を読んでお勉強かしら?ふふっ」
「はい、母上。少し気になることがあるので調べものですね」
「少しは俺の勉強を手伝ってくれても良いんじゃないかテオ?」
「バン兄さんの勉強は手伝えないよ。将来仕事手伝うんだから、それで勘弁してくれよ」
「テオ兄様絵本読んで!」
「ジーナ、今日は調べものがあるから今度な」
そんな会話をしながら楽しい朝食は過ぎていった。