第九十三話:いろいろなこと
キングが倒れ、私が目覚め。
その後はいろいろなことがあった。
キングを聖剣で倒したのはレイノルド。
剣の精としてキングを滅したのはティルムンク。
キングの動きを封じたのはウォーレン。
私は……ぶっちゃけてしまえば、飲まなくていい毒を飲み、あの場に倒れていただけ。
そう思ったが、みんなの考えは違っていた。
「キングの手足の動きは封じましたが、それでもあの大きさ。傷をもろともせず、抵抗はするでしょう。とどめを刺すまでは、一筋縄ではいかなかったと思います。それを成し得たのは……ウォーレンさんがキングを氷の彫像へと変えてくれたからです」
レイノルドはさらにこう主張する。
「ウォーレンさんが魔術を行使することになった理由は、ウィリス嬢にあります。聞くと氷結の魔術、しかもキングのような巨体を瞬時に氷漬けにするのは、相当難易度が高いそうです。魔術師であれば、誰でもできる……わけではないとのこと。それを彼女が使ったのは、ひとえにウィリス嬢のため。キング討伐にウィリス嬢が果たした役割は、計り知れません!」
熱弁をふるうレイノルドに、ウォーレンも同意を示す。
「氷結の魔術を使ったのは、数百年ぶりです。前回使った時は、わたしの名前を冠した巨大な黄金の銅像が建てられ、自由に使える島を一つ与えられました。黄金の銅像は、ポーションの材料として使い切ってしまいましたが。ともかくそのクラスの魔術ですが、領主様のためならいくらでも行使します。勿論無償で。何度でも。でも領主様以外には……使いたくないです。魔力も消費しますし、疲れるので」
ウォーレンがこう言えば、剣の精であるティルムンクは……。
「キングなど氷漬けになっていようが、いまいが、私がいれば倒せました」
これにはウォーレンはくいっと眉をあげるが、静観してくれている。
するとティルムンクはこんなことを言い出す。
「聖剣は、扱う人間の精神力の影響も受けます。その点で言えば、レイノルドがあの時発した、キングを倒すという強い思いは……剣の精としても、驚くものでした。レイノルドがあれだけの強さを発揮できたのは、お嬢さんが倒れているのを見つけたからです。彼の強さの源は、お嬢さんだったことは確かです」
ティルムンクまでそう言うと、「そうなのかな」と思ってしまうが、さらにとんでもない人物まで私のことを評価してくれたのだ。
「キング討伐は、一人の力で成し得たものではないと、セドニック副団長が言うが、余もそう思う。剣の精であるティルムンク、魔術師ウォーレンもそうだが、エレナ・ウィリス子爵が果たした役割はとても大きいと言える」
そう言ってくれたのは国王陛下だ。
国王陛下は、遂に国民へ明かすことになった。キングが滅せられたことを受け、北東への魔獣討伐の真の意義を。そして聖剣のことなども公表。そこでティルムンクの存在も公になり、魔術師ウォーレンの協力、私のことも発表されたのだ。
とはいえ、ティルムンクはその姿を見える者が限られ、ウォーレンは「わたしは国王に興味はないので」と姿を消してしまう。そうなると私が功労者として表に出ることになり……。
褒賞金と今度は……伯爵位を授けられたのだ!
キングはいずれ自滅する運命だった。
ただレイノルドの命が狙われ、彼を救うために討伐することになったのだ。
ゆえにキングが滅せられたからと言って、国王陛下がここまでする必要はないのでは!?と思ってしまうのだが。
「セドニック副団長は、この国の英雄だ。彼を失うことがあれば、国民の気持ちが沈む。それに彼の命が狙われていると分かっていながら、放置したとなれば……。国民の国への信頼も失墜する。ゆえに自滅を待たず殲滅した。この意味は大きい。そして君の活躍は、国民を喜ばせている。巷では新たなる劇が上演されていると聞くぞ」
国王陛下はそんな風に言ってくれたが……。
本当に。
まさかこんな短期間で、没落貴族同然の男爵から伯爵と呼ばれるようになるなんて。
とんでもない驚きだった。
異世界に転生していると気付いてから、わずか三カ月足らずで起きた奇跡。
それもこれも始まりはレイノルド。
偶然、彼を助け、彼の厚意でここまでこれたと思う。
レイノルドには絶対に幸せになって欲しい。
彼の足を引っ張ろうとする宰相であるサイレンジン公爵。彼は今回の騒動を受け、どう動くかと思ったら……。
「陛下、我が家の書庫で重要な資料が発見されました。我が公爵家では、過去にアルセン聖騎士団の団長を輩出していたことがあります。おそらくはその時、入手したものかと思うのですが……」
そう言って、今さらキングの実態を伝える古書のページを国王陛下に提出したのだ。国王陛下は既に私がレイノルドに伝えたことを、ジーク団長経由で聞いていたので「これでウィリス伯爵の領地で伝わっていた伝承が、真実だと裏付ける歴史的資料も発見された」となり、サイレンジン宰相は「よくぞ資料を発見した」と褒められている。
さすが老獪なサイレンジン宰相。
ぬかりなかった。
ただ、サイレンジン公爵令嬢によると……。
「お父様によると、セドニック副団長は、キング討伐の褒賞として、国王陛下にこう求めたらしいの。『陛下、自分に婚姻の自由を与えていただけないでしょうか。敵国やこの国に仇をなすような相手との婚姻は望みません。ただ、自分が心から愛する相手と結ばれたいのです。つまり自分の意思で結婚相手を決めさせていただけないでしょうか』と。国王陛下はすぐピンと来たようよ。セドニック副団長に、想い人がいるのだろうと。そしてその相手は、国益に反する相手ではないと。よって快諾された。もうお父様はセドニック副団長の婚姻について、口出しはできなくなったわ」
これを聞いて安堵すると同時に。
いよいよレイノルドはその想いをお相手の令嬢に告げるのだろうと思った。
そんなこんなでいろいろあったが。
遂に今日、ギルのアルセン王国高等学院の入学式の日を迎えた。














