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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第一章

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第九話:欲しいもの

「お金なんて儚いものですよ。魔術師は本当は金なんかに興味はないのです。ですが人間はお金にこそ価値があると考える。お金以外にもっと沢山、素晴らしいものをお持ちなのに」


 ウォーレンの右手が肩から腕へと、撫でるように移動している。

 先程以上に奥歯を噛み締め、我慢するしかない。


 レイノルドを救うには丸薬ポーションが必要だ。


 それにウォーレンの言う通りだった。

 領民のためにも、解毒の丸薬は領主として持っていた方がいい。


 両親は馬車の事故で亡くなり、沢山の領民が流行り病で命を落としている。

 もう死は十分。

 生きて欲しい、みんなには。

 そのために必要な犠牲。


 しゅは正義を貫くための犠牲を、尊いものとして説いている。


 主自身が人類の罪を償うため、自らを犠牲にしているのだ。


「魔術師ウォーレンさん。あなたが望む対価を払います。ですからこの丸薬を譲ってください。……そして時間がないので、手短にお願いできませんか。それに私は未婚ですので、最後までは……お許しください」


 声が震えてしまう。

 領主としてここは凛としたいのだけど、無理だった。


「そうですよね。お急ぎですよね。ええ、安心してください。素早く済ませます。それに何も坊主にするつもりはありません。かつらを作るわけではないのですから」


 ウォーレンの言葉に、私は「?????」だった。


 坊主にするつもりはない。

 かつらを作るわけではない。


 え、どういうことかしら?


「領主様のこの美しいキャラメルブロンドの髪。多くのご令嬢の髪が、波打つ様なウェーブで、それこそが美しいとされています。ですがわたしはそうは思いません。この真っ直ぐな、束ねても零れ落ちるようなサラサラの髪。大変素敵です」


 え、欲しいのは私の髪なの!?


「この髪で筆を作り、さらにいつでも触れらるよう、額縁にいれて飾り、残りはポーション作りに使わせていただきます。純潔の女性の美しい髪は、ポーションのいい材料になるんです。初めてお会いした時から、この美しい髪が気になっていました」


 髪なんだ……。


 あの欲望をはらんだ瞳が欲していたのは髪……。


 まさに肩透かしされた気分だが、すぐに理解できる。


 私は男を惑わすような肉感的な体つきではない。

 どちらかというと、没落貴族と分かるような、手足も首もほっそりで、ウエストも細い。胸がデンと大きいわけではないのだ。この体を貪りたい……そんな風に欲情したくなる体ではないということ。


 ただ、髪。


 髪は母親と父親とも違い、驚く程のストレートだった。

 お金がないのでハーブを使い、髪を洗うようにしてから、さらに艶が増した気がする。


 そうか。


 髪。


 髪でいいのなら、いくらでもどうぞ!というわけで、ウォーレンに伝えると、嬉々として髪を切り始める。


 だが――。


「それだけでいいのですか?」


「はい。ポーションに使うと言っても、大量に使うわけではありません。それにポーションの材料にする場合、鮮度も大切です。切った瞬間から、それは領主様の体を離れた、ただの物質へと変貌してしまうので」


 これには私は大いに不満だった。

 なぜなら。

 中途半端過ぎて、髪型としておかしなことになっているからだ。


 マチルダもハドソンも、手先が器用でいろいろできる。

 ところが髪を切ることだけは、苦手だった。


 私は剣術を習っていたが、それでも刃物で髪を切ることは、怖く感じた。


 なぜなら幼いギルやミルリアの顔や首、耳を傷つけたら?――そう考えると、髪なんて切れない!


 というわけで我が家では二カ月に一度、理髪師を家に呼び、皆の髪を一気に切ってもらっていた。


 何度も呼ぶとお金がかかる。だがマチルダやハドソンも含め、五人まとめて切ってもらうので、その分お安くしてもらえていたのだ。


 そして理髪師が屋敷に来たのは五日前のこと。約二か月経たないと、理髪師は呼べない。


 それなのにこの中途半端に髪を切られては……。


「もっと差し上げます。きちんとした髪型になるよう、整えてください。今すぐに!」


 こうして腰まであった髪は、鎖骨当たりの長さになったが……。

 これで洗髪も楽になるし、時短になるわ。

 お湯を使う量もうんと減る。

 丸薬も手に入り、まさに一石二鳥ね。


 というかウォーレンは理髪師になれるぐらい、髪を切るのが上手い。


「魔術師ウォーレンさん、あなたは髪を切るのが上手ですね。これからも私の髪を切りませんか? なんなら私の妹や弟、ハドソンやマチルダの毛も。ポーションに髪、必要なんですよね!?」


「え、いえ、髪ならなんでもいいわけでは」


「おいくらで切っていただけますか?」


「え、うーん。領主様の家で出される揚げパンが美味しいと、噂で聞いたことがあります。それを一人分、分けていただけるなら……髪ぐらい、いくらでも切りますが」


 私は素早く手を差し出す。

 交渉が成立した時。

 平民は握手をする。


 ウォーレンもそれを知っているようで、私とガッツリ握手をしてくれた。


 揚げパンでみんなの髪を切ってもらえる。

 理髪師を呼ぶより安く済む……!


「では魔術師ウォーレンさん。交渉は成立です。二か月後、皆でお邪魔するので、髪をよろしくお願いします。揚げパンは出来立てが美味しいので、訪問した際に私が作りますから。ではこの丸薬もいただいて帰ります。御機嫌よう!」


 私は嬉々としてウォーレンの家を飛び出した。

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