表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/167

第八十八話:滅び

 月明かりを逆光に、キングの姿が見えた。


 青く輝く宝石が一つ、暗闇に浮かんでいると思ったが、それこそがキングの瞳だ。


 そこで思い出す。

 レイノルドの言葉を。


 左目を聖剣で傷つけたと言っていた。

 確かにそちらは閉じられている。


「!」


 目ばかり見ていたが、その口から見えているのは……。


 瞬時に悟る。


 私を追って来ていた不法入国者は、もうこの世にいないと。そして次は……私だ。


 手に傷をつけ、毒を握りしめ、左腕一本を犠牲にして終わらせよう……なんて思っていたが。


 不法入国者二人の末路を見たら、そんなの無理だと悟る。


 傷を負ったキングは苛立っているだろう。

 腕一本で立ち去るはずはない。


 心臓の鼓動の大きさに、自分自身で驚いている。


 キングの周囲を伺うが、レイノルドの姿はない。


 状況は分からないが、不思議と直感で、レイノルドは生きている気がした。


 ただ、キングに巻かれたか、なんらかのトラブルがあり、今、ここにいないだけ――。


 レイノルドが駆けつけてくれるのが先か。

 それともキングが先に私に襲い掛かるか……。


 答えは分からない。


 ただ私は無傷では終わらない。

 今聞こえている咀嚼音が終わったら、次は私だ。


 足元から死の恐怖が忍び寄る。

 何よりも気分が悪くなってきた。


 我慢して。

 今、ここで余計なことは考えないで、生存戦略を考えるの!


 深呼吸をして、折れそうな心をなんとか保つ。


 逃げられるだろうか?

 あと数メートルで小川がある。

 飛び込んで、そのまま川を流れたら、キングは追って来れないのでは?


 ただ夜の小川を流れることのリスクもある。


 それでも万一にも助かるかもしれない……?


 いや、ないだろう。


 キングのサイズなら、小川に飛び込んでも足がつく気がした。


 これが大河だったら話は違ってきたかもしれない。

 だが実際は小川なのだ。


 一際嫌な音がした。


 レイノルドの気配はない。

 助けは来ないのだ。

 ならば。


 そこは電光石火の速さで毒をあおった。


 どれだけ苦い味がするか。

 喉をかきむしるような状態になるか。

 そんな想像をしていたが……。


 何も起きない。


 その代わりなのか。

 キングが動いた。


 もうダメだ――。


 ダメだと思ったが激痛に襲われることはない。

 心臓をバクバクさせながら、薄目を開けると、右の前足と後ろの左足を引きずるようにしているキングの姿が月明かりの下に見える。


 さっき、不法入国者の二人のそばに現れたキングは、どこか高い位置からジャンプしたのかもしれない。今は……そうか。レイノルドにより、前足と後ろ足の腱を切られた可能性が高い。


 ということは。


 走って逃げれば――。


 そこで全身からいきなりストンと力が抜け落ちた。

 両膝を地面に着くようにして、前のめりで倒れる。


 体がピクリとも動かず、地面に激突したのに、痛みも感じない。


 それなのに血生臭い匂いと、生温かい空気を感じ、急に周囲が暗くなる。


 この状況にも慣れてきた。


 キングが近くにいる。


 その大きな体の影に、自分がいると自覚した。

 そして生温かいキングの息に触れたのだ。


 もう終わる……。

 ただ、毒は全身を巡っている。

 私を喰らえばキングは滅ぶ――。


 ◇


 毒というのは壮絶な苦しみを与えて死に至らしめるのかと思った。


 だが私は違っていた。


 唐突に全身の生命活動が止まったようなものだ。


 まずは筋肉が動かくなり、うつ伏せのような状態で倒れ、キングの血生臭い匂いと息の温度を感じた。だがその直後に五感が失われる。そして意識が飛んだ。


 飛んだ意識の中で、自分のそれまでの人生をダイジェストで見て、最後に思ったこと。


 それは「ギル、ミルリア。夕食には帰ると約束したのに、ごめんなさい」だった。


 あの日、馬車の事故で帰らなかった両親は。


「街でみんなにお土産を買ってくるよ。ミルリアはチョコレート。ギルは最新版の図鑑。エレナは舞踏会につけていく髪飾りだ。夕ご飯に間に合うよう、帰るから、ちゃんとお留守番をしているんだぞ」


「「「はーい」」」


 ギルとミルリアと一緒になって、子供のように返事をしていた。


 だが約束は果たされず、両親は帰らぬ人になった。


 まさか私まで両親と同じことを言って、ギルとミルリアの前から消えるなんて。


 ごめんなさい、ギル、ミルリア。

 二人が成人するまで、ちゃんと見守らなければいけなかったのに。


 ただ。

 どうか。


 これでキングが倒れ、レイノルドが解放され、村の人々が元通りの暮らしに戻れたら……。


 犬死にではなくなる。


 ギル、ミルリア。

 どうか幸せになって。


 ウォーレン。

 巻き込んでごめんなさい。

 無事でいることを願っているわ。


 そしてレイノルド……。

 王都であなたの帰りを待つ女性とお幸せに。


 その後も使用人達にも別れを告げた後。


 お父様、お母様、ついに私、二人のところへ参ります――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ