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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第四章

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第七十八話:北東の地

 遂に出発の準備が整った。


 聖剣は団長が用意してくれた布に包み、ウォーレンが持ってくれた。

 ジーク団長は私が令嬢であることから、気を遣い、ウォーレンに聖剣を持たせたのだけど。

 私は自分の領地にいた時。

 薪割りをするために、斧を振り上げていた。

 つまり。

 腕の筋肉は鍛えているので、1キロを超える剣を片手で持てる自信はあった。

 でもせっかく私を普通の令嬢だと思ってくれているのなら。

 ここは令嬢らしく振舞うことにした。


「では領主様」


 ウォーレンは、見た目は私と同じ令嬢なのに!

 聖剣を左手に持ち、右手で私の腰を抱き寄せた。


 この様子を見たジーク団長の片眉が、くいっと上がった瞬間。


 周囲の景色が霞んだような、乱れたように思えた。


「到着です」


 王都から相応に距離があるから、もっと時間がかかると思ったのに。

 やはりあっという間の到着だった。


 そして到着した北東の地は……。


「これは……」


 元は木々が沢山あったと思うのだ。

 だがそれはなぎ倒されている。

 地面には沢山の下草だってあったはずだろうに。

 黒い土がむき出しになっており、あっちこっちに穴があった。


 でもあの穴はきっと、騎士団が掘ったものだと思う。

 キングを足止めするために。

 落とし穴的な役割をしているものもあれば、身を潜ませるためのものもあっただろうと推察する。


 そんな穴が沢山あるものの。


 全体としてかなり荒廃しており、建物もなければ、木々もほぼない。


 もし人がいれば目立つと思うが、レイノルドの姿は……見渡す限りは見当たらなかった。


「ジーク団長は、沢山の食料や武器を、セドニック副団長のために置いて行ったと言っていたわ。セドニック副団長がどこにいるか分からなくても、物資の場所を見つけたら……そこにいるわよね、きっと」


「え、領主様、まさかこの荒れ地を歩き回るのですか!? その物資の場所を探し、そこから当たりをつけ、さらに副団長を見つけるおつもりです……?」


 ウォーレンが驚愕しているが、その通りなので、私は力強く頷く。


「歩き回れるように、着替えもしたのよ。それに私、こう見えて足腰は強いから。何せ領地では薪割りもしていたから」


「それは知っていますけど……。探し回るなんて、領主様はしなくても大丈夫ですよ。わたしの魔術ですぐに見つけます」


「もう、ウォーレンさん。団長に言われたでしょう。魔力は温存してくださいって」


 だが私の指摘に対し、ウォーレンはとんでもないことを言いだした。


「魔力はたっぷりあります! あの団長が切れ者で少々苛立ち、意地悪しただけです」


「!? ウォーレンさん!」


「それに別に副団長も、団長に会いたいわけではないと思います。会いたいのは領主様ですよ」


 これにはもう衝撃だが、団長から手紙は預かっていた。

 本当は会って話したいこともあったと思うのだ。


 だが。


 とにかくウォーレンとジーク団長。

 ……合わないのよね。


 ただウォーレンは、ジーク団長の策に気付きながら、それにあえてのってあげていた。


 どれが本物の聖剣であるかも教えてくれたし、剣の精のやる気を引き出すため、一芝居も打ってくれたのだ。後付けでジーク団長に請求したが、いろいろ思うところを呑み込み、協力してくれたのだから……。


 ここはいろいろ文句を言うよりも。


「ジーク団長は置いてきてしまったので、そちらは仕方ありません。ウォーレンさんは本当に必要と感じれば、団長に協力してくれると思うので。それよりも今は、セドニック副団長を見つけて欲しいんです」


「お任せください、領主様!」


 瞳をキラキラさせる令嬢姿のウォーレンは、単純に可愛い!


「これだけ生物の気配がなければ、探し人の特徴を聞くまでもなく、見つけ出すことができます」


 これには「なるほど」だった。

 そこでウォーレンが呪文を唱える。


「あ、分かりました!」


 ここは拍手。

 ウォーレンがいてくれて本当に良かった。

 しかも。


 「少しここから歩くので、体力の温存をしましょう」と言われた。

 散々、魔力の温存と言っているので、ここは「そうですね」と苦笑で応じると。


 またも令嬢姿のウォーレンに、お姫様抱っこされる。


 思うに。

 女性の姿で現れて欲しいのは、私の部屋に直接魔術で現れる時の話。

 私は未婚。

 自室に男性がいるのは、よろしくないだろうということ。

 よって騎士団本部でひと段落した時に、ウォーレンは元の姿に戻っても、問題なかったのだけど……。


 そうすればジーク団長との、水と油のような問答も、少しは減ったかもしれない?


 なんて考えている間に移動していた。


「ここは……」


「ダークウッド連山ですよ。どうやら麓ではなく、この山の中に身を隠したのですね。こちらの方がまだ樹木もありますし、匂いをつけることで、キングが山から下りて来ることを阻止もできます。山の中に副団長が潜んでいると、勘違いさせることができますから」


 これには「なるほど!」だった。


 キングは最初、レイノルドにつくマトリアークの血の匂いを追った。でも既にレイノルドと対峙し、彼自身の匂いも認識したはずだ。


 今はマトリアークの血の匂いは勿論、レイノルド自身の匂いにも反応するだろう。


 もしこの辺りにレイノルドの匂いがあれば、キングは山から下りない。少しでも地上で暮らす人々から遠ざけようと、レイノルドは工夫をしているに違いない。


 そしてウォーレンが「あ、あそこでは?」と指さすのは、洞窟の入口だった。

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