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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第四章

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第六十七話:朝から大変!

 アルセン聖騎士団が王都へ帰還する。


 この日は朝から大変!


「お姉様、この黄色のドレスか、ピンクのドレスか、どっちがいい~? どっちがセドニック様は喜んでくれる?」


「そうね。ミルリアはどっちも似合うと思うわ。でもきっと黄色の方が目立つと思うのよ。沿道で手を振っている時、黄色だと目を引くわ」


 前世で信号機で黄色が採用されている理由。それすなわち注意喚起の効果が高い色だからだと思う。色彩心理学でも言われていること。さらに黄色は自然界でも警告の色として知られている。ズズメバチや蜂、トラなども黄色だ。


「分かったわ~。じゃあ、ミルリアは黄色にする! お姉様は?」


「私は……そうね、碧いドレスにしようかしら」


「えー、黄色ではなくていいの!?」


「ミルリアと一緒にいるのよ。ミルリアに気付いたら、私のことも気付いてくれるわ。大丈夫よ。気遣ってくれてありがとう、ミルリア」


 ネモフィラという美しい碧い花がある。

 中心部は白で外側が碧い色。

 まさにそのネモフィラの花のようにグラデーションしているドレスを持っていたので、それに着替えることにした。レイノルドの瞳を意識した結果だ。


 本来、相手を意識したカラーリングは、夫婦や恋人、婚約者がすることが多い。でもアルセン聖騎士団は、隊服がサファイアブルー。王都へ入る際、軍服ではなく、隊服のはずだった。そうなると沿道で迎える人は、碧系の服を着ている人が多いと思うのだ。


 ギルだってシアン色のセットアップを着る。


 だから……私が目立つことはない。

 変に勘繰られることもないはず。


 そこでふと思う。


 キング討伐成功の暁で、意中の令嬢との婚約を、国王陛下に認めてもらおうとしていたレイノルド。


 でもキングは討伐ではなく、自滅を待つことになる。そうなるとその令嬢の件は……。


 ただ、キングの生態については、サイレンジン公爵が隠していたから、国王陛下は知らない。ゆえにその生態を踏まえ、無駄に戦闘をすることなく、キングが消えてくれるなら……。


 それはそれで、評価してくれそうだ。


 国王陛下は賢王として知られている。


 ならばきっとレイノルドの気持ちを汲んでくれるのでは?


 そんなことを思いながら、ミルリアとギルを連れ、街へ向かう。


 お昼前に、王都の北の門を入場することが決まっていた。正式なパレードなどではないので、観覧席など設けられていない。


 騎士達の姿を見たければ、貴族も平民も関係なく、沿道で待つ必要がある。


 ということで腕に覚えのある使用人三人と共に、沿道に向かうと、既に大勢の人が詰めかけていた。


 到着までまだ三十分以上あるが、スタンドショップや出店もあり、食欲をそそるいい香りが漂う。


 皆、食べたり、しゃべったりで、お祭りムードだ。


「アルセン聖騎士団の旗だよ。布製だから、次回も使えるよ」


 旗売りの少年から、騎士団の紋章がプリントされた、小ぶりのフラッグを購入。


 さらにコットンキャンディ(綿菓子)を食べたがるミルリアのために、レインボーカラーのものを手に入れた。ミルリアはギルにも分けてあげながら、コットンキャンディをぱくぱくと食べ、沿道に並ぶ。


 ミルリアとギルを見たおじさんが、スペースを作ってくれたのだ。


「お嬢ちゃんと坊ちゃんは、どの騎士を応援しているんだ? ザ・ハンマーことべイン卿か。それともスネークと呼ばれるレインブル卿か? それとも」


「「セドニック副団長!」」


 二人が声を揃えると、おじさんは破顔する。


「副団長! 彼は今、騎士団で一番人気だからな。目が合ったり、手を振ってもらえたら、ラッキーだぞ」


「うん。だからミルリアは黄色のドレスにしたの! 目立つでしょう」


「おお、なるほど。お嬢ちゃんは賢いな。お嬢ちゃんが目立てば、おじさんのことも見てくれるだろう」


 そんな会話をして、その時を待っていると――。


 遠くから角笛が聞こえてくる。


「お、どうやら北の門に到着したようだ」


 さらに通常は鳴らない時間だが、鐘が鳴り響く。


 特別な時に鳴らされる鐘で、騎士団が北の門の入場を始めたことを、伝えてくれていた。


「北の門からここまで、少し距離があるからな。まだだ。まだ来ないぞ」


 おじさんはそう言いつつも、北の門の方角を見て、身を乗り出すようにしている。


 それは周囲の人達も同じ。


 遠くで歓声や何かの楽器の音も聞こえてくる。


「可愛いお嬢ちゃん、ハンサムなお兄ちゃん、よかったらこれをどうぞ。あたしは花屋のマリー。紙吹雪もいいけどさ、生花が一番。この花びらを騎士団が来たら、撒いてあげて」


 色とりどりの花びらが入った小さな籠を、渡してもらえた。


 春は近いとはいえ、温室は高価であり、花は貴重。

 ここは御礼でチップを渡す。


 「廃棄予定の花だったから、いいのに。でもさ、ありがとう、貴族のお姉さん!」と笑顔で受け取ってくれる。


 騎士団の帰還を祝うことで、みんなが優しい気持ちになっていると思った。


 そして――。


「おっ、見えて来たぞ!」


 おじさんが興奮気味に声を上げる。


 大きな騎士団旗を持つ騎乗した騎士の姿が、見えてきた。

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