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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三章

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第六十五話:手紙でもマウント!?

「なるほど……。領地にいるお兄様の奥様は、いろいろなことを自慢してくると。いつもそうやって自慢されることは、納得がいかない。しかも旦那様はこの度、上級事務官に昇進された。そのことをたっぷり自慢する手紙を書きたいのですね。どれだけ給金が増えたのか、部下の数は何人いるか、などなど」


「それに昇進祝いに夫から、宝石を贈られましたの。見て、これ。ピジョンブラッドルビーよ。ルビーの中でも特に赤色が濃く、特定の産地ものしか、ピジョンブラッドルビーを名乗れないの。こんなルビーは王都にしか売っていないわ」


 レイノルドに手紙を送ったてから三日後。

 手紙は既に到着していると思う。

 到着したら絶対に返信があるはずなので、それまでは通常通りの日々を過ごした。


 そして今日。


 ティータイムにあわせ、屋敷にやって来た代筆の依頼人は、宮殿で働く上級事務官の奥様。上質なシルクのドレスにブルネットの髪、そして黒い瞳。自身の弟が王都で騎士をしており、私のことを紹介してもらい、鼻息荒く乗り込んできた。そして依頼された手紙の内容は……要するにマウントをとるような手紙を書いて欲しいということだった。


 美しい字の手紙が届けば、兄嫁は驚く。地方領にはここまで美しい文字を書く人はいない。王都ならではということで、そこでもマウントをとれるというわけだ。


 前世でも、タワマンに住む奥様のマウントの取り合いは話題になったが。この世界でもそれがあるとは。しかも手紙を介して火花を散らすとは……。


 驚きだった。


 しかし。


 マウントされているのに、こちらもマウントで返すと言うのは――。


 どう考えても悪循環を招くだけに思える。


「今は話された内容で手紙を送ると、お兄様の奥様は確かに『悔しい』と感じそうです。ですがさらに自慢するような手紙が送られてくるかもしれません。それでいいのですか?」


「え……? この内容に対し、さらに自慢するの? そんなの無理よ。きっとこの手紙を見たら、ショックを受け、黙り込むわ。負けた!って」


 黙り込む。それはないと思った。どう考えてもさらなるマウントにつながると思う。


「ご自身がいつも自慢され、やり返したいと思ったように。旦那様の出世を自慢されたり、高級なルビーをプレゼントされたと知ったら、同じように、やり返したいと思うはずです」


「それは……そうね。そう言われると、そう思えるわ」


「自慢話というのは、相手の羨ましそうな反応があって初めて成立します。これまでの手紙では、そういう反応をしていたのではないですか? 『まあ、それは羨ましいわ』とか『私もそれが欲しいわ』と。自慢話をしたい人が、さらに自慢をしたくなるような返事を、これまでしていた可能性があります」


 マダムは口のへの字にして俯く。

 私の指摘が当てはまるのだろう。


「今回のような場合、事実のみを伝える手紙がいいと思います。決して自慢はせず、淡々と事実を伝えればいいかと。旦那様が上級事務官に出世したこと。お祝いのパーティーをやるので、夫婦で参加しませんか――それでいいのではないでしょうか」


「ピジョンブラッドルビーは?」


「そのルビーが高級であることは、一目見れば分かります。間違いなくパーティーに来るでしょうから、その時に身につけていればいいでしょう。そして問われたら、ピジョンブラッドルビーであることを話せばいいと思います」


 たとえ兄嫁が問わなくても、他の参加者が「このルビーは!?」となると思うのだ。その時に説明を、兄嫁が聞いていれば十分だと思った。


「今後は、自慢話を促すような返信をやめ、受け流すようにするのが一番かと。やがてお兄様の奥様は、気が付くと思います。期待する反応が、これまでのようにあなたから返ってこないと。次第に季節の挨拶だけとなり、自慢話の手紙は送ってこないようになると思います」


「そうなのね……。では今回は?」


「旦那様の昇進の事実、パーティーの件だけ伝えればいいのですから、代筆は不要かと」


 これを聞いたマダムは、実に残念そうにしている。そこでお代をもらうつもりはないこと、さらには良かったら美味しいスーツを食べてから帰らないかと提案する。


「まあ、ありがとうございます。代筆は依頼しないけれど、相談にのっていただいたわ。それは私にいろいろ気付きを与えてくれた。だからお代は半分お支払いするわ。私の気持ちだと思って、受け取って。そしてスイーツはぜひ、いただいてから帰るわ!」


 さすが伯爵夫人!

 大変太っ腹だった。


 マダムと楽しくスイーツをいただいていると、ヘッドバトラーのジョルジュが部屋にやって来た。


 通常、来客中は、私が呼ばないと部屋には来ないのに。


 どうしたのかしら?


 ジョルジュはいつもの口調だが、表情が少し硬く感じる。


あるじ様より、伝書鳩が届きました」


「伝書鳩……!」


「伝書鳩は、早馬よりも早く王都へ到着します。よってこれは急ぎの要件の可能性もあると思い、来客中ですが、お知らせに上がりました」


 伝書鳩はこの世界では、前世でかつて頻繁に利用されていた、電報のようなもの。


 昭和の時代では、披露宴や入学式・卒業式の祝電などで使われていたが……。


 戦時下では悲しい知らせのために使われていたことを思い出し、私の心臓はドキッと反応した。

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