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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三章

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第五十七話:手紙

 クリスタへのアドバイスではないが。

 レイノルドが魔獣討伐の遠征に出てからは、想像以上に忙しかった。


 騎士団の屯所の件。鉱山の共同経営にまつわる件。領地にいるハドソンから届くあれこれ。代筆業。ギルの入学にまつわるいろいろ。それぞれでするべきことがある。


 そうなるとレイノルドは大丈夫かと心配する時間は夜、一日の終わりにナイトティーを飲む時になった。


 この時間を使い、レイノルドに手紙を書くが……。


 自分で言うのもなんだが、それは報告書に近い。


 屯所の件や鉱山の件、代筆業のことなど書くと、あっという間に便箋ニ枚。残りの一枚で、ギルやミルリアの様子について書き、そして――。


 本当は心配する気持ち。会いたいという気持ちを綴りたくなる。


 でもそれはただの客人で共同経営者である私がすることではない。そんな手紙はサイレンジン公爵令嬢が書いているはず。


 ということでもはや報告書に近い手紙を書き終え、従者に明日、郵便局に持ち込むようお願いする。


 手紙には書かなかったが、レイノルドはどうしているのか、それは気になっていた。


 新聞では、情報としてタイムラグはある。だが北東の地に到着し、討伐がスタートしたことが伝えられていた。そこに危険やトラブルを伝えるような情報はない。


 よって討伐は順調なのだろう。


 討伐が順調ならば。

 私も日々を問題なく過ごし、レイノルドが心配しないで済むようにするべきだろう。


 そう思い、日々を過ごしていたが――。


「ウィリス子爵、お手紙です」


 ヘッドバトラーのジョルジュが手紙を届けてくれた。


 それは3月下旬の水曜日。

 よく晴れた午後のひと時を、代筆業の清書作業をしている時のことだった。


 受け取った封筒は、とても上質。

 宛名の私の名前は、とても流麗な文字で書かれている。


 文字を見るに、令嬢のものだと判断。

 さらに封筒の裏を見て、差出人の名を見て、驚愕する。


 なんとサイレンジン公爵令嬢からの手紙ではないですか!


 何が書かれているのか。

 戦々恐々で開封することになる。


 取り出した便箋は封筒と同様で、上質なもの。

 そこに書かれていることは――。


『To the Esteemed Lady ウィリス子爵


 あなたとお茶をしたいと思っています。

 ですが私の屋敷へ来るのは……きっと嫌よね?

 だからティールームで会いましょう。

 デメールというティールームは個室もあり

 高位貴族の令嬢が利用するお店。

 私の名前で以下の日時で予約しておくわ。

 絶対に来て頂戴ね。


 Yours faithfully サイレンジン公爵令嬢』


 「To the Esteemed Lady……」と形式ばった挨拶で入っているが、手紙の内容も口調も実に砕けていた。


 しかも「私の屋敷へ来るのは……きっと嫌よね?」とズバリ書かれており、これには汗がしたたる。


 さらに明後日の待ち合わせ日時が指定されているのだ。私の予定を確認することなく、既にお店の予約は……していると思う。


 つまりこれはもはや「命令」だった。


 ただ幸いなのは、明後日のお茶の時間、代筆業の依頼は入っていなかった。


 午前中に二件、午後一番で一件、そして珍しく夕食後の時間に一件。


 ということで依頼された仕事をリスケすることにはならない。


 ならないが……「都合が合わず、無理です」とお断りもしにくい状況。


 それに断ったら屋敷へ乗り込んできそうだ。「公爵令嬢のお誘いを断るなんて、いい度胸をしているわね!」とヒステリー気味に怒鳴る姿が脳裏に浮かぶ。


 つまりティールーム「デメール」というお店に行かなければならない――ということだ。


 でも……なぜ?


 もしや私がレイノルドに手紙を送ったことを知り、怒っている……とか!?


 しかしあの手紙は報告書だ。

 いろいろ思うところはあったが、それを排除し、淡々と共有したい事実を伝えているだけ。


 それなのに怒る必要がある?


 ううん、待って、私。

 どうやって知ったの、手紙を送ったことを。

 まさか手紙を出すように頼んだ従者が裏切って、公爵令嬢にリークした!?


 そんなわけがない。


 この屋敷の使用人はみんな、レイノルドが信頼している人達。彼らを疑うなんて間違っている。


 そうなると……。


 別に私が手紙を送った件とは関係なく、呼び出したということでは?


 では何の件で呼び出したのか。


 私はレイノルドとサイレンジン公爵令嬢との恋路を邪魔していない。


 客人として滞在しているが、出過ぎた真似はしていないつもりだ。


 心の中では何度となく、思うことはあった。


 だって小劇場や洋食屋のスタッフが、ギルとミルリア、そしてレイノルドの四人でいる時に、「家族」とみなしたりするから……。


 でもそれは口になど一切出していない。


 そこで思い当たることは一つ。


 客人と言え、レイノルドの屋敷に私達がいるのが不快だから、出て行け……と言い出すつもりでは。


 レイノルドが王都にいる時にそんなことを言えば、彼に止められる。でも今、レイノルドは遥か北東の地にいるのだ。


 今のうちにこの屋敷から追い出そうと思っているのでは!?

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