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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第五十三話:彼の幸せは

 春のような陽気。

 明るい陽射しが降り注いでいる。


 感涙することはあったが、最後はハッピーエンドの演劇を楽しみ、ファミリーのようだと思われながら、ランチを食べた。


 お腹もいっぱいになり、満たされた気持ちで散歩をしていたのだ。


 それは……まさに平和な休日。


 今は私をエスコートしてくれるその手は、やがて公爵令嬢に差し出されるようになるとは分かっていたが。


 一か月、屋敷をあけての魔獣討伐。


 マトリアークを倒しても、魔獣がこの世界から完全に消えたわけではない。よってレイノルドが魔獣討伐へ向かうのも、当然のことだった。


 それでも平和ボケをしていたのか。


 とても驚き……ショックだった。


「副団長になっても魔獣討伐には……頻繁に出るのですね。つい最近、大規模な討伐があり、遠征をしたのに。もう……討伐に出るんですね」


「今回、アルセン聖騎士団で、初めて二人の副団長が置かれました。それには理由があります。大規模だったり、強敵な魔獣がいる討伐には、団長も出向くことになります。そうなると王都に残るアルセン聖騎士団は、主力を欠いた状態。そこで二人の副団長を置き、団長と共に一人の副団長が魔獣討伐に出ます。もう一人が王都に残り、もしもに備える。そのような体制にしたいと、国王陛下は考えたのです」


 これには「なるほど」と答えるしかない。理にかなった戦略だと思う。


「それに春は、冬眠から目覚めた魔獣が活発に動く時期です。昨年も今頃の時期に魔獣討伐をしていたので、頻繁というわけでもないのですよ」


 そう言った後、鉱山の共同経営の件は、自分が不在でもちゃんと動かすので問題ないこと。ギルのアルセン王国高等学院への進学についても、手筈は既に整っていること。留守中は私達のために、警備専門の使用人を雇うことなど話してくれた。


 自身が不在になっても、客人として迎えた私達に不便がないよう、心を尽くそうしていることが伝わって来くる。


 私達はそれで問題ないだろう。


 でもレイノルドは……。

 あれだけ求婚状が届いているのに。

 その全てに目を通したのか、返事をしているのかも分からないが、婚約をする間もなく、討伐に出るなんて。


 騎士として。

 アルセン聖騎士団の副団長として、生きることばかりを求められ、彼の幸せは置いてきぼりになっている気がした。


「セドニック副団長。私達は大丈夫です。これまで没落貴族も同然で、知恵を絞って生きてきました。何か起きたとしても、自分達の力でなんとかします。それよりもセドニック副団長自身の幸せは……大丈夫でしょうか。沢山……求婚状が」


 言いにくいことを、口にしようとしているせいか。

 最後の方は、なんだか息も絶え絶えな様子で、言葉を発することになってしまった。


「本当にウィリス嬢は、領地で頑張っていたと思います。でもいろいろあり、子爵位を賜ったのです。これからはもう少し、周囲を頼り、自分のことも頼ってください。遠征はこれが初めてというわけではないので、留守中の備えはちゃんとできます。そこは本当に安心してください」


 射し込む陽射しがレイノルドを照らし、その姿が輝いているように見える。


 両親を亡くしてからは。

 私がしっかりしなきゃと、言い聞かせてきた、自分自身に。


 長女なのだから、ちゃんとしなきゃ、と。

 ギルとミルリアを守らないといけないと。


 その気持ちは今も変わらない。

 それでも。

 レイノルドと出会ってからは。

 彼にいろいろ相談できることで、大いに助けられてきた。


 いろいろなことを聞いてもらえたり、アドバイスをしてもらえること。それがどれだけ私の気持ちを励ましてくれるか。レイノルドと知り合うことで、知ってしまった気がする。


 知らなければ、求めないだろう。

 知ってしまえば、求めてしまう。


 私、もしかしてレイノルドのことが……。


「それに……自分の幸せ……。今回の遠征で自分の幸せを掴むつもりです」


 心臓がドクッと大きく反応する。

 今回の遠征で自分の幸せを掴む。

 つまりそれは……。


 遠征を無事成功させ、王都に戻ったら、サイレンジン公爵令嬢にプロポーズするのでは……?


 そうだ、きっとそうなんだ。


 相手は公爵令嬢。


 ドラマチックなプロポーズを望んだのかもしれない。本来的にはあの舞踏会の場で、プロポーズだったのかもしれないが、そうはならなかった。


 でも今回、魔獣討伐の遠征に向かい、見事任務を遂行させたならば。再び戦勝祝いで、何かイベントがあるかもしれないのだ。


 きっとその場でサイレンジン公爵令嬢に、大々的に愛の告白をするのだろう。


 それならばこの遠征は。


 笑顔で送りださないといけないだろう。


「……そうですか。それは良かったです。セドニック副団長には、絶対に幸せになっていただきたいので」


「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」


 気温も陽射しも。

 数分前と大きな変化はないのに。


 なぜか私は風が冷たく、陽射しが弱くなったように……感じてしまった。

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