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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第三十七話:同じ女性として

 自業自得。因果応報。


 それは確かにと思える。

 それでも。

 同じ女性として。

 見過ごすことはできなかった。


「ウォーレンさん、助けてあげてください」


「え、あの公爵令嬢を助けるのですか!?」


「確かに彼女には意地悪をされたわ。でも……このままだと彼女は被害者になってしまう。ここで助けなかったらきっと、私は後悔すると思うの」


 ウォーレンは「本当に領主様はお人好しですね」と言っていたが。

 「ここでお待ちください」と言うと、公爵令嬢と偽皇太子がいる太い柱の影の方へと歩いて行く。


 「お客様」というウォーレンの声と「なんだ、貴様」の後にドサッという音。

 魔術を行使したのか、自身の腕力を行使したのか。

 ともかく静かになった。


 そして――。


 泣きじゃくり、ドレスを乱したサイレンジン公爵令嬢を支え、ウォーレンが柱の影から出てきた。

 私は着ていた黒のテールコートを脱ぎ、二人の方へ駆け寄る。


 私の姿を認識したサイレンジン公爵令嬢は、驚いた顔になった。

 だがテールコートを差し出すと、無言で受け取る。


「控え室まで送ってあげてください」


「かしこまりました。お客様はホールに戻られますか?」


「ええ。ここまでくればホール迄の通路は分かるから。ありがとう」


 ウォーレンと短く会話を交わすと、私は先に歩き出す。


「どうしてですの!」


 サイレンジン公爵令嬢が、怒鳴るような声を上げた。

 驚いて立ち止まり、振り返ると……。


「あんな目に遭ったのに、なぜ、私を助けようと?」


 この公爵令嬢は困ったちゃんね……と思いながら、こう答える。


「助けない方が、よかったですか?」


「!」


「目の前で困っている人がいたら、サイレンジン公爵令嬢も助けますよね? あなたと同じことをしただけです」


 それだけ言うと踵を返し、歩き出す。

 私からこんな風に言われたら、それ以上は何も言えないだろう。


 それにしてもあの令息。

 軍服ではないし、騎士ではないだろう。

 公爵令嬢をてごめにできず、でもその悪事は彼女の父親である公爵の耳に入る。


 消されるかもしれないわね。


 でもそれこそ自業自得だ。


 そんなことを思いながら足早に進むと、華やいだ笑い声と優雅な音楽が聞こえてくる。廊下の先は煌々と照らされ、ホールはもう目の前だ。


 さらに歩みを早めたその時。


「ウィリス嬢!」


 こちらに向け、駆けて来るスラリとした長身の男性。


「セドニック副団長!」


「ウィリス嬢、ドレスに飲み物がかかったと聞きました。大丈夫ですか!?」


「親切なバトラーの方に助けていただき、この通りです。問題ないですよ」


 レイノルドは私の頭から足元まで素早く目を走らせ「確かに。有能なバトラーですね」と安堵した様子を見せたものの。心配そうに私を見る。


「このままここにいても、ひたすらよく知らない女性とダンスをするだけです。……帰りませんか?」


 これには苦笑するしかない。


 舞踏会だからダンスをして当然で、見知らぬ女性ばかりなのも……これまでレイノルドが社交をしていないからだ。


 とはいえ。


 サイレンジン公爵令嬢のこともあったし、こんなに人の多い舞踏会は初めてで、気疲れはしている。


「帰りましょうか。本当は社交を頑張った方がいいのでしょうけど」


 私の言葉に、レイノルドは……。


「社交は気を違うものです。元気な時なら活発に行動できると思います。ですが疲れている時、無理は禁物です」


 確かにそれはその通り。

 社交は新たな出会い、交流を深めるためのもの。

 元気がない状態では上手くいかない。


「そうですね。……帰りましょうか」


 こうしていろいろなことがあった舞踏会から、帰宅することになった。


 ◇


 大人にはまだ遅い時間ではないが、屋敷に着くと、既にギルもミルリアも眠っていた。そこでドレスを脱ぐ前に、順番に二人の部屋に行き、額にキスをする。


 ギルもミルリアも、ぐっすり眠っていた。


 明日の朝食の席ではきっと、舞踏会のことをいろいろ聞かれるだろう。私にとっては勲章をもらえたこともそうだが、サイレンジン公爵令嬢の一件もあった。さらにウォーレンとも再会できた。


 出来事としては盛りだくさん。

 でも後者二つの件は、話せないわよね。


 そんなことを思いながら、部屋に戻り、眠るための準備を始める。ドレスを脱いでいる間に、入浴の用意が整う。


 領地にいたら、お風呂の用意は自分達でしなければならない。それがここでは沢山の使用人が手伝ってくれるから……。


 領地に戻ったら、元の生活に戻れるかしら?

 あ、でも子爵になったのよ。

 少しは生活が楽になるかしら?

 ううん。

 自分達の生活もそうだけど、領民のことも考えてあげなきゃ。


 そんなことを考えていると、欠伸が出る。


 やっぱり想像以上に気を遣い、疲れていたようだ。


 湯船ではうっかり寝落ちしそうになり、メイドに起こされる事態に。


 ともかくこの日は……爆睡だった。


 そして翌日はいろいろと大変なことになる。

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