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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第三十三話:彼の言葉

 レイノルドとサイレンジン公爵令嬢とのダンスが終わった。


 拍手が盛大に送られている。


 この後、レイノルドとダンスを踊るのは……私だ。


 レイノルドのダンスは、素晴らしいものだった。

 サイレンジン公爵令嬢は、言うまでもない。幼い頃より公爵令嬢として、英才教育を受けてきたのだろう。全てが完璧だった。こんなダンスを見せられた後。付け焼き刃で特訓した私のダンスを披露するなんて……。


「自分は今日、ウィリス嬢とダンスするために、この舞踏会に来たと言っても過言ではありません。わずか一週間のダンスの特訓を頑張ったのは、ウィリス嬢のためです。ちゃんとリード出来るようにと、懸命に頑張りました」


 自信を失いかけた私に、レイノルドがかけてくれた言葉は……。

 涙が出そうになる。


「ではウィリス嬢。May I have the honor of this dance?(自分とダンスいただけますか?)」


 私とダンスできることを、名誉だと思ってくれるレイノルド。

 付け焼き刃で恥ずかしいなんて思った自分を、叱咤激励したくなる。


 でもまだ遅くない。


 ダンスはこれからなのだ。


「It would be my pleasure.(喜んでお受けします)」


 こうしてレイノルドと踊るワルツ。先程が軽快な曲調だったので、今回は静かな曲が選ばれた。より情感豊かに踊れるこの曲は……特訓でも踊ったことがある。


 深呼吸をすると。


 ここが舞踏会であることを忘れることにした。


 忙しい中、二人で頑張った練習の延長と思い、踊り始めると……。


 レイノルドも同じように思っていることが、伝わってくる。


 その瞬間から、気持ちの持ちようが変わった。


 技巧では、どうしたって公爵令嬢には敵わない。見比べられたら、劣ると分かっている。


 それならば。


 誰かに見せるためにダンスをするのではなく。

 懸命に、共に頑張ったレイノルドと、楽しく踊れればいいと思えた。


 レイノルドも周囲のことより、私の目を見て、微笑んでくれる。練習の時と同じで、少しミスがあるとお互いに「やっちゃったね」と表情に出し、上手くいったら満面の笑みになる。


 そうやって踊るダンスは、限りなく楽しい!


 背中に羽が生えたみたいに、心が軽やかになった。


 曲が終わり、最後のポーズをとった時は、もうレイノルドとハイタッチをしたい気持ちになっていた。


「!」


 大音量の拍手に驚く。

 驚きで辺りを見渡すと、みんな笑顔だった。


 決してコンクールで優勝するようなダンスではない。

 でも見ている人達は……何かを感じてくれたようだ。惜しみない拍手に嬉しくなる一方で、鋭い視線も感じる。


 サイレンジン公爵とその娘である公爵令嬢だ。


 これはもう見なかったフリをするしかない。


 それに。

 舞踏会は始まったばかりだった。

 私とのダンスを終えたレイノルドと、記念のダンスをしたいと令嬢やマダムが集まってきたのだ。

 これは社交として、レイノルドは応じる必要がある。

 私はその場を譲ることにした。


 レイノルドはそんな私を見て、何か言いたげにしている。

 だが彼自身が、一番その立場が分かるので、言葉を呑み込む。そして令嬢やマダムのダンスの誘いに応じている。


「献身の乙女、良かったらダンスを踊ってくださいませんか。今日の記念に」


 何と私にも声を掛けてくれる令息がいた……!


 レイノルドも社交を頑張っているのだから、私も頑張ろう。

 ということで「はい。お願いします」と手を差し出す。


 その後はしばらくは、ダンス三昧。

 社交界デビューした時でさえ、三人の令息とダンスをして終わりだったのに。

 今日は何人とダンスをしたのか分からない。


 さすがに疲れ、休憩をとることにして、隣室へ向かう。


 飲み物をいただくことにしたのだ。


「……!」


 これぞ宮殿の舞踏会。


 休憩スペースには、ちゃんとメイドやバトラーがいて、コーヒーや紅茶を淹れてくれる。とはいえ今は温かい飲み物より、グビグビ飲めるものが欲しい。


 そこでクランベリージュースを受け取り、用意されているソファに腰を下ろしたまさにその時。


 サイレンジン公爵令嬢が、数名の令嬢と共にやって来た。


 すぐに私に気がつき、というより、私を探してここに来たように思える。なぜならすぐに私と目が合うと、つかつかとこちらへやって来たからだ。


 なぜこちらへ来るかの想像はつく。あれだけガンを飛ばされているのだから、分かって当然と言えば当然。


「サイレンジン公爵令嬢、最初のダンス、とても素敵でした。地方で暮らし、ダンス経験の浅い私とは、比べものにならないレベルです。ご令嬢がダンスをした後に踊ることになり……本当に恥ずかしい限りでした」


 丁重に頭を下げると、サイレンジン公爵令嬢は「ふんっ」と鼻を鳴らし、腕組みしたものの。


 攻撃の言葉は掛けて来ない。


「恩人と思っていただけたことで、セドニック副団長のお屋敷に、私は滞在させていただいています。ですが私の弟や妹も一緒です。田舎暮らしでは、まともな教育も受けられないと、恩情をかけていただき、兄弟揃って王都へ連れて来ていただけました。でも私達は、それだけの関係です。どうぞ私のことは、セドニック団長の遠縁ぐらいに思ってくだされば……」


 変にライバル認定されないために、早々に白旗を挙げたわけだ。

 実際、レイノルドと私の関係は……今言った通りのもの。


「どうやら身の程はわきまえているようね」


 サイレンジン公爵令嬢がそう言ってクスッと笑うと、取り巻きの令嬢は……。


「Country Bumpkin(田舎者)のわりには、頭が回るようですわね」

「でも図々しくもサイレンジン公爵令嬢様の次に、ダンスを踊ったのですよ」

「このまま捨ておくわけにはいかないと思いますわ」


「私は心が広いから、気にしていないわよ。もう行きましょう」


 この言葉をサイレンジン公爵令嬢が口にした時。

 私は安堵していた。

 でもその直後。


 まさに冷水を浴びせられた。

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