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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第三十話:舞踏会

「ウィリス嬢……!」


 舞踏会に出席するため、イブニングドレスへ着替えた私が馬車から降りると、レイノルドが実に眩しそうに私を見た。


 この反応は、きっと私のドレスのせいね!


 スカート部分はボリュームたっぷりのチュールになっており、全体に星のようにビジューが散りばめられている。さらにイブニングドレスということで、背中は大きく開いているし、そして少しバストアップしたのをいいことに、デコルテ見せするデザインのドレスを選んでいた。


 要するに、少々グラマラスなドレスなのだ。


 普段見せない肌の露出は、レイノルドというより、異性全般に効くと思う。レイノルドが眩しそうにしているのは、この露出が効いているからだと判断したが……。


「昼間と違い、ウィリス嬢は……とても大人っぽく感じます。……既に社交界デビューをされていますし、自分と同い年で、大人なのですが……。ポニーテールとは違うアップにしたことで、うなじにもつい目が行きます……。前髪の分け目も変わりましたよね。それにお化粧の雰囲気も違います。……大変お綺麗なのですが、なんというか落ち着きません、自分が」


「あ……少し派手過ぎましたか……? イブニングドレスなので、少し肌が出る割合も増えますよね。お化粧もそれに合わせ、少し濃い目にしています。ただ濃くなり過ぎないように注意はしたのですが……。髪のアップは」「ち、違います!」


 レイノルドは顔を赤くして、慌てた様子でこんなことを言う。


「その、ジーク団長が喜びそうなドレス姿なので……」


「?????」


「な、何でもないです。ともかく自分からは、離れないでください。心配なので」


 「何が?」と言いたくなるが、レイノルドが動揺しまくっているので、指摘しづらい。というか舞踏会に参加する貴族が次々と馬車から降りてきており、エントランスは混雑し始めている。そこでレイノルドにエスコートを促すと「失礼しました!」と今度は慌てる事態に。


 動揺したり、慌てたり。


 そんな様子のレイノルドは、それはそれでなんだか可愛らしい。


 ハンサムで隙のない男性は近寄りがたいと思う。その一方で、どこか母性本能をくすぐるところがあると、一気に親近感も沸く。なんだかレイノルドのお母さん(?)気分で彼にエスコートされ、舞踏会の会場となるホールに到着すると……。


「わあ……」


 思わず感嘆の声が漏れてしまう。


 この舞踏会は、魔獣討伐を頑張った騎士団全員を慰労する場なのだ。

 当然だが、ホールを埋め尽くすのは騎士の皆さま!


 日中のパレードの時は、サファイアブルーの隊服を着ていた。それはウィリス男爵領でも見たことがあるものだった。でも今は違う。明るいグレーの儀礼用の軍服を皆、着ているのだけど……。


 儀礼用なだけに、実に華やか。


 魔獣討伐時の軍服はダークグレー、隊服はサファイアブルーだった。どちらも色としては濃い。でも今は皆様明るい衣装だから……。なんというか溌溂とした雰囲気に見える。色の違いだけで、こんなにも印象が変わるなんて……!


 思わず見惚れていると、レイノルドがなんだか落ち着かない様子。


「セドニック卿、どうされましたか!?」


「! いえ、その……実はこの舞踏会の冒頭で、自分の昇進を改めて祝っていただけることになっているのです。騎士団の方では既に昇進が発表され、任命式は済んでいます。でもその時は見知った騎士団のメンバーたちの前だったので、緊張はしませんでした。ですが舞踏会となると……」


 なるほど。


 慣れている仲間であり、部下でもある騎士達の前では緊張しないが、舞踏会には多くの令嬢マダムがいる。それに有力な貴族の紳士令息も大勢いるのだ。いつもとは勝手が違い、緊張する……その気持ちはよく理解できた。


「セドニック卿、その緊張する気持ち、よく分かります。普段、接点の少ない令嬢やマダムと言った女性がいるのです。緊張するのも当然かと。でも大丈夫ですよ。このブレスレットは緊張を緩和する効果があるんです。卿にお貸しします」


 左手につけていたシルバーの細いチェーンのブレスレットには、パールや小粒の宝石が飾られている。母親の形見であるが、緊張緩和の効果なんて……特にない。


「! よろしいのですか……?」


「はい。セドニック卿の緊張が少しでも緩和すれば、私も嬉しいですから」


 そう言ってブレスレットを渡すと、レイノルドは恭しく受け取り、自身の上衣のポケットにしまう。その上で深呼吸をして目を閉じる。


「気持ちが静まりました」

「それは良かったです!」


 結局のところ、緊張は人の意識が大きく関わっていた。この意識を上手くコントロールできれば、緊張はある程度緩和できる。その中で重要なのは、一種の暗示。前世では手の平に「人」を指でかき、呑み込むようにするといい……なんて言われているが、それと同じ。「こうすると、緊張しなくなる」と思い込むことが大切なのだ。


 レイノルドは今、私の言葉を信じ、ブレスレットを持っていれば緊張しない……と思っている。


 本当に単純な話だけれど、信じる者は救われるで、彼の緊張は緩和することになった。


「ウィリス嬢に見られると思うと、緊張してしまう……と思ったのですが、ブレスレットを貸していただけたので、大丈夫そうです。ありがとうございます」


 これには「えっ!?」と驚いてしまうが、オーケストラの演奏がピタリと止んだ。


 この世界では、舞踏会の冒頭で演奏がピタリと止んだ時。

 主催者が入場すると、相場が決まっていた。


 私達が入場したのとは、別の両開きの扉がゆっくり開き、国王陛下夫妻、王太子と王女が姿を見せる。


 一斉にホールにいる全員が拍手を始め、その音がホールを満たした。

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