第二十七話:実戦用の……?
レイノルドにエスコートされ、参加することになるパレード&舞踏会が行われる日が、遂にやってきた。
2月と言えば、寒さが厳しいはずなのに。
今日は朝からぽかぽかと暖かい。
しかも天気も快晴。
「お姉様、今日は特別なドレスを着るんだよね~!」
「ええ、そうよ。着替えましょう」
オーダーメイドの服は、さすがにまだ仕立てが終わっていない。でも既製品のドレスを購入した時。ミルリアとお揃いのものを手に入れていたのだ。
アーモンドの花を思わせる淡く、優しい、色合い。
でもミルリアが選んだものだから、フリルとリボンが満点。
私では選ばないような、実に可愛らしいデザインだが、ミルリアが「パレードを見に行く時は、このドレスを着たいの、お姉様! お姫様みたいでしょう! お姉様もお揃いでこれを着ましょうよ!」と実に愛らしく言うので「そうしましょう」となった。
ちなみにギルは、紺色のフロックコートを着ているが、とてもよく似合っている。ミルリアをギルがエスコートしていると、可愛いプリンス&プリンセスだ。
今日は何人も画家を雇い、パレードの様子を描いてもらうことになっていたのだけど。実は二人のことも、こっそり描いてもらうことにしていたのだ。そしてそれは間違いなく。素敵な絵に仕上がるはずだ。なにせモデルとなるギルとミルリアが、こんなに可愛いのだから!
すっかり親バカ状態だが、本当に。
この王都のレイノルドの屋敷で暮らすようになってから、二人は貴族の令嬢令息らしくなっている。
私より食べさせているつもりだったが、領地での食事は、育ち盛りの二人には十分ではなかった。この王都での生活が始まると、肌艶もよくなり、街中で見かける貴族の令嬢令息と変わらない体型に近づいた。
体つきだけではなく、立ち居振る舞いもそう。
最初は自由に駆け回れないことを、窮屈そうにしていたが、マナーや礼儀作法の先生から「貴族たる者は……」とレッスンを受けることで、次第に動作が洗練されてきたのだ。
将来は男爵になるギル。
素敵な令息と幸せな結婚をして欲しいミルリア。
脱・没落貴族になるためには。
日々の勉強に加え、貴族らしい所作ができるようになるのは、重要なことだった。貴族の基本は社交でもあるのだから。
こうしてこの世界の年相応の貴族の令息令嬢らしく、二人が育っていくことに安堵していると。
「あ、お嬢様、少し胸元がキツイのではないですか?」
ミルリアのドレスへの着替えが終わり、今度は私がドレスをメイドに着せてもらっていた時のこと。
メイドの指摘に「本当だわ」と応じることになる。
ミルリアとお揃いのこのドレス、胸の辺りがキツイ、と。
それはつまり……。
バストが少し大きくなった!?
せっかく西洋人に転生したのに、食生活がままならなくなり、どんどん痩せていった。胸元が寂しく、ドレス映えしない体型になっていたが……。
一日三食。さらに領地暮らしで私達が野菜を食べていたことを考慮し、野菜・魚・肉とバランスのとれた食事を用意してもらえていた。それを食すことで、私も胸が、バストが……!
胸なんて脂肪の塊と言ってしまえばお終いだけど、そのサイズでこの世界、ドレスの似合う、似合わないが決まる。そして貴族にとってドレスは、その美を表現するのに非常に重要なアイテム。ゆえにバストサイズは……前世以上に重要なのです!
ということでバストアップに喜び、ドレスへの着替えは完了。
ギル、ミルリアと共にソファに座り、待機していると、レイノルドが迎えに来てくれた。
そのレイノルドは……。
髪型など普段通り。
でもサラサラのプラチナブロンド、紺碧から澄んだ空色にグラデーションする瞳。令嬢もうらやむ美肌を持つレイノルドは、いつも通りでも、十分に決まっている。
今はその容姿より目を引くのは、着ている衣装!
ダークグレーの軍服でもなく、サファイアブルーの隊服でもなく。
スカイブルーの明るい軍服を着ている。装飾品もシルバーが基本だが、ゴールドも使われており、より華やかさが増している。さらにマントは白! 魔獣討伐なんて、いわゆる土埃とは無縁ではいられないだろうし、軍服もマントもこれだけ明るいということは……。
「儀礼用の軍服ですか?」
「いえ、これが昇進後の自分の軍服です」
「実戦用の……?」
「はい。その身分と地位であれば、軍服を汚すことなく、魔獣を討伐できるだろう……というとんでもないプレッシャーを与える服です」
レイノルドの言う通りだと思う。
魔獣を討伐する度に、新調しないといけないのでは!? それとも昇進することで、現場仕事が減るの!?
「より強くなるように、ということなのでしょう。精進します」
そう言って笑うレイノルドにミルリアは抱きつき「セドニック様、ハンサム! 素敵!」と大喜び。レイノルドは「ありがとうございます」とミルリアを抱き上げたのだけど……。
なんだかその姿は、愛娘を抱き上げる、若きパパに見えてしまう。
レイノルドの年齢でミルリアが娘だなんて、絶対にあり得ない。
二十歳のレイノルドが、八歳のミルリアのパパになるには逆算すると、とんでもない事態になるのだから。
ゆえにこれはあくまでファンタジーで、私の妄想。
でもレイノルドのギルやミルリアへの言動を見ると、つい思ってしまう。
きっと優しくて子煩悩なパパになるのだろうなぁと。なんなら率先して育児にも協力するイクメンになりそうな。
「ではウィリス嬢。そろそろ会場へ向かいましょうか」
「はい」
レイノルドにエスコートされ、歩き出す私はふと思う。
彼にエスコートされる正式な立場の女性。
彼女は……きっと幸せな家庭を、レイノルドと築けるに違いないと。














