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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第二十五話:とんでもないこと

 魔獣討伐の労をねぎらう舞踏会。

 マトリアークを倒した英雄を披露するためのパレード。


 その二つで私をエスコートする。


 それは……とんでもないことだ。


 現在レイノルドの屋敷でお世話になっているだけでも申し訳ないのに。そんな晴れの日の舞台に私などを同伴したら……。


 没落貴族同然の男爵令嬢を同伴する国の英雄。


 どう考えても、好奇の目で見られる。社交界に格好のネタを提供してしまう。せっかく高まっているレイノルドの評価に、影響を与えかねない。


 それに。


 何も身近にいる私を選ばなくてもいいのでは!?


「セドニック卿、落ち着いてください。妹さんをエスコートできないことで、きっと焦っているのだと思います。そして偶然、同伴するには丁度いい私がいると思ったのかもしれませんが、それは間違いです!」


「いえ、自分はそんな意味では……」


「セドニック卿は国の英雄です。エスコートされたいと願う令嬢は、五万といます。焦る必要はないのです。一週間あるのですから、絶対に見つか」「嫌です!」


 駄々こねる子供のように、レイノルドが「嫌です!」と言い、首を振る。間違いなく、酔っているのだろう。


「これまで自分に見向きをしなかったのに、英雄だのと言って寄ってくる女性など、信頼出来ません」


「いえ、そうではないと思います。セドニック卿は、英雄になる前から、大変魅力的だったと思いますよ。ただ、魔獣討伐で忙しく、社交は出来ていませんよね。普通に舞踏会や晩餐会に顔を出していたら、その時から令嬢マダムに話しかけられていたと思います!」


「!?」と思わずなるのは、懸命に私が話しているのに、レイノルドは……上の空なのだ! 顔を赤くし、ふわふわした表情をしている。一体どうしたのか!?


 これはと思い、ちょっと大声で彼の名を呼ぶ。


「セドニック卿!」

「失礼しました!」


 慌てて返事をしたレイノルドは顔を赤くし、うるうるの瞳で私を見る。これにはドキッとたじろぐ。


「自分はウィリス嬢から見て、魅力的……なんですか?」


「はい。私と言わず、世の女性から見て、魅力的だと思います。騎士としての武術の腕もそうですが、誠実で真面目で気遣いもできて。完璧だと思います」


 そう答えてから気がつく。


 もしかするとレイノルドは、女性から褒められた経験がほぼないのでは!?


 妹さんはレイノルドを褒めるより、はっぱをかけるタイプに思えた。お母様は早逝している。使用人の女性は、あるじに面と向かい、褒めたりはあまりしないだろう。


 騎士としての訓練に明け暮れ、魔獣討伐に身を投じ、社交は出来ていない。女性との接点はないのだ。褒めてくれる女性は……ほぼどころではない。


 いない、のだ。


 なるほど。


 だから私ごときに褒められても、嬉しくなってしまうのね。


 なんだか申し訳ないわ。


「あの、セドニック卿、私に褒められてそこまで」「認めてください!エスコートすることを!」「!?」


「自分を魅力的と思っていただけるなら、エスコートさせてください!」


「酔っているのですね、卿は。この話は明日に……」


 レイノルドが悲壮な顔をしており、言葉を呑み込む。


「……自分ごときがウィリス嬢の横に立とうなど、おこがましいことでしたよね。ウィリス嬢をエスコートできるなどと考えた自分が、愚かでした」


「そんな、そんなことはありません! むしろ私をエスコートしては」


「忘れてください。不躾な申し出をしてしまい、申し訳なかったです」


 絶望感に溢れるその姿を見ていると、胸が痛んだ。そしてお詫びの言葉と共に椅子から立ち上がり、部屋から退出しようとするレイノルドの上衣を、思わず掴んでいた。


「私をエスコートしたこと、後悔するかもしれませんよ」


「後悔するなどあり得ません。ウィリス嬢をエスコートできたなのなら、それは自分の人生の最大の栄誉です」


「酔っていますよね」


「酔っていないとは言いません。酔っていなければ、ウィリス嬢に、パートナーの申し出では出来ませんから。ですが酔っているからと、適当な気持ちで申し込んだわけではありません。自分は……心からウィリス嬢をエスコートしたいと思っただけです」


 その瞳の真摯さに、心を打たれていた。

 酔いは、エスコートを申し込むための勇気として、必要だった。でもそのエスコートの申し出は、軽い気持ちではなく、心からのもの。


 そこまでのことをした自覚はない。


 それでもレイノルドの中で、私に対する感謝の気持ちが高まっているのなら……。


「分かりました。セドニック卿にとって栄誉であるように、私にとっても卿にエスコートされることは、大いなる栄誉です。エスコートしてください」


 そう私が言った瞬間の、レイノルドの感情が昂り、嬉しさを通り越して泣きそうになっている顔。


 こんな顔を私のためにしてくれる人が、この世界にいること。


 その事実にも私は、胸が熱くなっていた。

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