第二十四話:before→afterに変化はない
前世を踏まえても、久しぶり過ぎるアルコール。
この体でどれだけお酒を飲めるかは分からない。
ということで私は大人しく一杯飲んで終了したが。
ボトルのシャンパンを開けている。
残りは……レイノルドが飲んでくれた。
が!
レイノルドは水を飲むかのように、シャンパンを飲み干してしまった。そしてそのbefore→afterに変化はない。
「ウィリス嬢」
「はい」
「明日以降、この屋敷に休みの騎士が足を運ぶと思います。騎士の任務は事務方を除き、シフト制です。夜間勤務のあるので、休みが平日も当たり前。本当は自分が一人一人をきちんと紹介するべきですが、自分も明日からはシフトに入るので、ご紹介ができません」
「大丈夫です。そこはお気になさらないでください。昔は少し人見知りなところもありましたが、領主を始めたら、そんなこと言っていられません。今では初対面の人にも、自分から話しかけることもできます。相手が男性でも問題ありません」
この世界の貴族令嬢は、基本、同性以外といる時は無口だ。アイコンタクトで会話し、令息からは声を掛けられるのを待つ。それがおしとやかであり、淑女であるとみなされた。
前世でそんなことをしたら、何をお高くとまっている……となりそうだが、この世界はこうなのだ。
そこは郷に入っては郷に従え――であるが、領主になったら話は別だ。流行り病の一件もあった。今となっては領民とは腹を割って話せるぐらい、私は男女関係なく話しかけることが出来る。
「さすがですね、ウィリス嬢。実に頼もしいです。では明日からは騎士達の依頼、よろしくお願いします」
そこまでは快活に話していたレイノルドが「ところで」と言った後から、少しもじもじしている。
どうしたのかしら?
「あの、セドニック卿。何か私に対し、遠慮されていませんか? お互いの命を助け合った仲です。何かあれば話してください」
するとレイノルドは「そうですよね」と背筋をピンと伸ばす。
「本日、国王陛下に謁見し、嬉しい話を二つ聞くことになりました」
「そうなのですね! それは良かったです。詳しくお聞かせいただいても?」
ぽっと頬を赤くしたレイノルドは……。
今、改めて気が付く。
どうやら酔いが回っているようだと。
「一つは今回の魔獣討伐に参加した騎士達の労をねぎらうため、舞踏会を開いてくださることになりました。特別な報奨金も、参加した騎士全員に渡されることになったのです」
今生の国王は、とても優れた方だった。
頑張る家臣には惜しみなく賞賛を送る。
その一方で腐敗し、罪を犯した貴族からは、爵位と財産を没収することも厭わない。
ゆえに賢王として、国民からはとても人気だった。貴族からの人気は半々。後ろめたい貴族から煙たがられていた。
「さらに私事になりますが、昇進が決まったのです」
「! そうだったのですね! そんな朗報でしたら、夕食の席で教えてくださって良かったのに! ギルもミルリアも、きっとお祝いの言葉をかけたはずです!」
そう指摘すると、レイノルドはさらに頬を赤くして「そうですよね」と言った後……。
レイノルドと私は丸いローテーブルを前に、椅子にそれぞれ隣り合うようにして座っていた。
私は肘掛に左手を置いていたのだけど、その手をレイノルドが両手で握りしめたのだ。
未婚の貴族の男女の不必要な触れ合いは、推奨されていないので、やはりレイノルドは酔っているのだろう。
「自分が昇進する理由は、マトリアークを討伐したからです。そしてマトリアークを討伐できたのは、ウィリス嬢のおかげでもあります。よってこの昇進の件は……誰よりも先にウィリス嬢に伝えたかったのです。ギル令息とミルリア嬢には、朝食の席で伝えます」
これにはビックリ。
私に一番に伝えたいと、思ってくれたなんて……!
確かに多少は私も役に立ったのだろう。だがマトリアークを倒したのは、間違いなくレイノルドであり、それは彼の実力。自らの実力を誇示したところで、誰も文句を言わない。堂々と夕食の席で、その功績を言葉にして構わないのに……。
「そうだったのですね。そこで私のことを思い出していただけたのは、とても嬉しく思います。本当におめでとうございます」
昇進。
現在、上級指揮官であることは分かっている。昇進するということは……。
「ありがとうございます。一番伝えたかった相手に報告できて、自分もとても嬉しいです。……それで、です、ウィリス嬢」
「はい」
「舞踏会もそうなのですが、祝賀パレードも行われることになるのです。英雄……だなんておこがましいですが、自分の雄姿を民に示すがいいと、国王陛下に言われ……」
これは前世で言うなら、スポーツ選手がパレードをするのと同じね。大活躍した時の人を、その目で見たいと思うのは、世界が変われど、みんな同じ。
「舞踏会もパレードも、同伴者が求められます。未婚であれば母親や姉妹……ですが舞踏会もパレードも一週間後で、妹に今から連絡しても間に合いません」
「なるほど。それは困りましたね」
「はい。そこで……助けていただけませんか」
「!」
「ウィリス嬢のことをエスコートさせていただきたいのです」














