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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第十八話:ズバリ指摘され……

 王都に到着してからの一週間は、怒涛の勢いで流れた。


 部屋は驚いたことに、完璧に用意されている。


 ミルリアの部屋には、沢山の人形、ドールハウス、刺繍道具セットなどが、ズラリと置かれていた。


 これを見たミルリアは歓喜の声をあげ、泣き出してしまう。


「魔法の国に来たみたい! くしゃみしたら、元に戻らない!?」


 そんな風に涙ぐむミルリアを抱きしめ「くしゃみしても、あくびをしても消えないから大丈夫よ」と告げることになる。


 ギルの部屋には天球儀、山積みになったパズルの箱、ボードゲームがこれまた所狭しと用意されている。だがギルが喜んだのは、本棚にぎっしり詰まった本。


「すごい! 図鑑も全部、最新版だ! 僕が読んでいたのは30年前のものだから、これは読むのが楽しみだよ!」


 父親のお古を読んでいたギル。本はアンティークで人気があるが、それはあくまでオブジェとしてだ。実用としては、最新版が一番。


「こちらはウィリス嬢のお部屋です。ギル令息やミルリア嬢と比べ、何を用意すればいいのか。とても悩みました。領地のウィリス嬢の部屋も、看病のため、入らせていただいたのですが……。あまりにもシンプルで……」


 領地の私の部屋。

 前世で言うなら、必要最低限を揃えた、カプセルホテルみたいだったと思う。

 家具も書斎机と椅子、ベッド、クローゼットだけ。

 ソファセットもドレッサーもなかった。

 お化粧もせずすっぴんだったから……。


 でもここは……。


「お姉様、すごい! 黄金の飾りがついた、ドレッサーがあるわ! それにこのガラスの棚には香水がいっぱい! 綺麗……! 飾り棚には沢山の宝石が飾られているわ。ネックレス、イヤリング、ブローチ……すご~い! これでお姫様になれるね、お姉様!」


 本当に。


 これは前世で見た童話に登場する、お姫様の部屋みたいだ。


「昼食の後、仕立て屋とドレスのデザイナーに、屋敷へ来るよう依頼しています。当面使う衣装は、既製品から選んでいただき、残りは採寸の上、オーダーメイドしてください」


 レイノルドにこう言われた時、ミルリアは大喜び。

 ギルと私は現実を見て「え、それは!」と驚いてしまう。

 貴族の衣装はお金がかかる。

 オーダーメイドとなれば、とんでもない金額になることぐらい、前世の私でも知っていること。


「こう見えて自分は侯爵家の人間で、領地からの税収は相応にあります。さらに魔獣討伐で支給される給金は、皆さんの想像以上なんですよ。何せ通常の騎士より、命を落とす可能性が高いので……。正直、自分はもう引退してのんびり余生を過ごせるだけの財を、手に入れています。投資もしていますしね」


 アルセン聖騎士団がいかに過酷な任務についているかを実感してしまう。

 レイノルドがその任務で得た給金は……まさに命懸けで稼いだお金だ。


「さらに両親から相続した遺産もあるのです。ですが自分はつまらない人間。これといった趣味もなく、お金を使う機会もありません。奢れるつもりはありませんが、三人を養うことぐらい、造作もないことなんです」


「ですがお金は湯水のように使っていいものでありません。セドニック卿にとって私達三人は、赤の他人です。そんなむやみに信じてお金を使うのは……」


 するとレイノルドはその美貌の顔に、寂しそうな表情を浮かべると……。


「確かに皆さんとは血のつながりもなく、赤の他人です。ですが恩人であることは事実。短い期間ですが共に過ごし、三人の人柄は、自分なりに理解したつもりです。誰彼構わず、こんなことはしません。湯水のように使うなんて、しませんよ。皆さんには、こうするだけの価値があると考えた上でのことです。そこはご理解いただきたい」


 レイノルドの誠実さが伝わり、さらに申し訳ない気持ちになる。

 彼の人の好さに甘えているような気がしてしまう。


「お気持ちは分かります。ですがこれはセドニック卿の厚意に、甘え過ぎているように思えてしまうんです」


 するとレイノルドが突然私の手をとるので、ビックリしてしまう。

 貴族の未婚の男女、不必要に触れ合うことはタブー視されている。


 だが……。


「ギル令息とミルリア嬢の手は、とても綺麗です。ちゃんと貴族の手をしています。ですがウィリス嬢の手は……。手だけではなく、着ている服も靴も。持ち物も。ウィリス嬢のものは、年季が入り過ぎています。新しいもの、質のいいものは、全てギル令息とミルリア嬢へ。ご自身は、使い古しで良し――とされていませんか。物だけではなく、食事でも、入浴でも。生き方でさえ、ギル令息とミルリア嬢を優先し、ご自身のことは後回しなのでは?」


 このレイノルドの指摘には、ギクリとしてしまう。

 なぜならまさにその通りだからだ。


「誰かに頼ったり、甘えるよりも、自分で何とかしようとする。ギル令息とミルリア嬢を抱え、使用人は二人だけ。ウィリス嬢は、母親代わりとして、領主として、奮闘されています。ですがご自身もまた男爵令嬢であることを、忘れていませんか。……誰かに甘えることを、忘れてしまったのではないですか? 自分ではまだ信頼に値しないのかもしれません。ですがここは信じていただきたいです。少しは頼ってください」

お読みいただき、ありがとうございます~

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今回はあの人物の切ない始まりの物語です。

併読されている読者様がいたらお楽しみくださいませ☆彡

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