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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第一章

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第十五話:一生かけて

 レイノルドは私に、王都へ行くこと、さらに代筆業を始めることを、提案してくれた。


 その代筆業は、相手の身分に合わせ、代筆する文字量によって、報酬を変動させることができるという。つまり上客を常連にすることができれば、かなりの収入が見込めるのだ。


「成功すれば、確かにすごいのかもしれません。ですがアルセン王国高等学院の学費、王都の高位貴族の令嬢を家庭教師に雇うお金、代筆業だけでまかなえるかというと……難しいと思います。それに私が王都へ向かったら、この領地は……」


「まずアルセン王国高等学院の学費は、特待生制度を使えばいいと思います。ギル令息は優秀なので、問題なく審査を通過できるでしょう。さらに卒業生からの推薦状が必要ですが、それならいくらでも推薦する者はいます。自分でもいいですし、団長も協力してくれるでしょう。アルセン聖騎士団の全員の推薦状を用意することだって、できます」


 それは大袈裟な話であるが、アルセン聖騎士団のみんなが私達に感謝してくれていることは、よく分かっている。仲間であるレイノルドを助けたのだ。しかも助けられたレイノルドはその後、見事、マトリアークを討伐している。


 もしレイノルドを助けていなければ、マトリアークが逃げ延びたかもしれないのだ。それを思えばレイノルドを助けた私に、感謝しても感謝しきれない……ということなのだろう。防御壁を作ってくれただけでも、それは明らかなことだった。


 きっと本当に推薦状は、全員分集まる気がした。


「家庭教師については、騎士団の知り合いから紹介します。そしてこの費用は、自分が出すつもりです」


「えっ」


「王都滞在中の三人の衣食住、家庭教師の費用は、気にしないでください。恩人に対する御礼と思い、受け取っていただきたいです」


 これには驚き「でも」と口を開こうとすると、制されてしまう。


「ウィリス嬢は、ご自身の行動の価値を、あまり分かっていらっしゃらないようです。自分にとってはこれでも足りないぐらい。一生かけ、恩返ししたいぐらいなのですが」


「え、それを言うなら私の命を、セドニック卿は助けてくれましたよね!? お互いの命を助け合った。フィフティー、フィフティーで、まさに貸し借りなしでは?」


「残念ながら、そうはなりません」


 レイノルドにそう言われた私は「えええっ!」と思わず驚いてしまう。

 どういうことかと尋ねると――。


「自分はアルセン聖騎士団の騎士です。アルセン聖騎士団の任務は、魔獣の討伐。自分が魔獣を倒したのは、任務を遂行したに過ぎません」


 なんて屁理屈と思ってしまうが、でもレイノルドは間違ってはいない。

 その通りと言えば、その通り。


「騎士団の騎士達が救った命は、とんでもない数になります。救った人々から御礼を受け取っていたら、大変なことになるでしょう。ゆえに感謝の気持ちだけで十分です。討伐の労力に対しては、国が給金を支払ってくれています。よってそこは気にする必要がありません」


 ここまで畳み掛けられると反論の余地はない。

 でも。

 絶対に。

 レイノルドの行動は、騎士団として当然のことをした――とは違うと思うのだ。


 あの時レイノルドは、体調が万全ではなかったはず。

 丸薬の効果は、まさに切れそうだったと思うのだ。

 その体を押し、私を助けに来てくれたのだ、絶対に。

 任務の遂行なんて、その時は考えていないと思う。

 恩人である私を助けたい一心で、あの場に来てくれたはずなのだ。


「演劇、オペラ、演奏会……王都には娯楽も多く、ギル令息やミルリア嬢の感性を磨くのに、役立つと思います。それにお二人は社交界デビューがこれから。そのために入用になるでしょう。代筆業で得たお金は、そちらへ使うといいと思います」


 ギルとミルリアが貴族として成長していくには、確かにお金は必要だった。


 今までは切り詰めることで、なんとかやってきた。

 でもレイノルドの提案してくれる代筆業を始めれば、切り詰めるのではなく、お金を得てまかなっていくことになる。これまで内部でやりくりしていたところを、外からのお金を得るのだ。絶対にこの方法の方が、貯金もできるし、余力ができる。


 そして代筆業は、王都だからこそ成立する職業だった。こんな村で、手紙の代筆業を頼む貴族なんていない。それを踏まえると、王都へ行くことは、意味があることだった。ギルとミルリアの教育のためもそうだが、お金を稼ぐためにも。


「この村の領地経営は、王都にいても行うことが可能です。執事のハドソンは優秀なので、領主の補佐官にするといいでしょう。執事は別で雇えばいいですし、自分が紹介することもできます。現地は補佐官であるハドソンに任せる。必要な書類仕事は、王都でウィリス嬢が行うのです」


 これには「なるほど!」だった。

 確かにハドソンなら補佐官として十分務まると思う。


「これは自分がそうしている方法でもあり、団長でもそうするでしょう。団長は公爵家の嫡男であり、まだ家督は継いでいませんが、引き継いだらそうなるかと」


 つまり魔獣討伐で遠征している間は、補佐官を中心に領地経営を任せる。その一方で書類仕事は可能な限り、遠征地でこなすということだ。


「王都へ行くにあたり、不安は解消されましたか?」

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