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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
第一章

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第十三話:走馬灯?

「エレナ。父さんや母さんの分も頑張ってくれて、ありがとう」


「本当に。三人もの子供を遺し、この世を去ることになり、どれだけ心配だったか」


「父さんと母さんの分も、エレナは長生きをするんだ。今はまだ早い。帰りなさい。ギルもミルリアも、お前のことを待っている」


 久しぶりに会った父親と母親は、全身が輝いているようだった。

 遺体安置所で再会した時。

 ギルとミルリアには、その姿をとても見せることはできなかった。


 棺に入れる時も、葬儀屋は難儀していた。


 元気な姿で再会できて嬉しいのに。

 帰りなさい――だなんて。


 !


 両親の姿が遠のいた次の瞬間。


 目を開けていられない程の眩しい光に、目をぎゅっと閉じる。


 続いて聞こえるけたたましい騒音。

 ドンという激しい振動と激痛。


 見下ろすと、降る雨の中。

 明かりにに照らされ、道に横たわる女性の姿が見える。


 その女性を私は……知っていた。


 私は……アラサー未婚女子で、IT関連の会社で秘書をしていたのだ。

 仕事を終え、家路に着いていたはずだなのだけど……。


 どうやら事故に遭ったようだ。

 そして転生していた。

 魔獣がいて、魔術師もいるような前世とは全く違う世界に。


 そう、そうだ。


 私、異世界転生していたんだ……!


 というかなぜ前世の記憶を今さら見ているの?

 いや、その前に。

 転生した世界の亡くなったはずの両親に会うことが出来た。


 これって――。


 そこで思い出す。


 執事のハドソンと話していて、突然、眩暈がしたことを。

 体が揺れ、意識が遠のいて……。


 ああ、そうだった。


 そうだったのね。


 魔獣に襲われた時。

 私、毒牙に噛まれていたのね。


 いろいろな痛みに襲われていた。

 でも火事場の馬鹿力と、ギルとミルリアを遺し、逝けないと思うことで、すべてを克服をしていたのだ。


 だがそれも限界が来た。


 つまり毒により私は――。


 走馬灯のようなものを見ていたのかしら?


 そこで感じた。

 温もりを。

 それは物理的な温かさだけではない。

 心に元気をくれる温もりだった。


 温もりを感じると共に、声が聞こえた。


「姉様」「お姉様」

「「エレナお嬢様」」

「「「領主様!」」」


 みんなが私を呼んでいる。

 みんなが私を必要としてくれていると感じた。


「ウィリス嬢。まだ恩返しができていません。戻って来てください。お願いします」


 声しか聞こえないはずなのに。

 目の前に美しく碧い光が見え、私を導くように動き出す。


 私は白亜の階段を一歩、また一歩と降りて行く。


 周囲は空なのか、海なのか。


 白い靄は雲なのか、波の泡なのか。


 碧い光と共に、階段を下り続けると――。


 ついにさらさらとした白い砂の大地に辿り着く。


 ハッとして振り返ると、遥か頭上、階段のてっぺんで両親が笑顔で手を振っている。


 そして顔を元に戻した瞬間。


「姉様」「お姉様」

「「エレナお嬢様」」

「「「領主様!」」」


「ウィリス嬢!」


 ギル、ミルリア、マチルダ、ハドソン。

 沢山の領民。


 そしてレイノルドの姿が、眩しい光と共に、目に飛び込んでくる。


「姉様が目覚めた!」

「領主様が目覚めたぞ!」


 ◇


 あれは夢だったのか。


 夢……だったのだろう。

 現実の出来事ではなかったはずだ、


 でも私には、現実の出来事のように思えてならない。


 だが現実で亡くなった両親に会うのは、無理な話。

 よって夢……だったのだろう。


 ともかく私は自分で気づいた通りで、魔獣に噛まれていた。

 だが当の本人が気づいていないのだから、周囲の人々も気づかない。


 健康で若い私は、毒の回りが遅かったようだ。


 屋敷に着き、安堵したところで毒の影響を受け、倒れた。


 ハドソンに支えられ、私はすぐにベッドへ運ばれたが……。

 最初はなんで急に倒れたのか、分からなかったという。だがマチルダが寝間着を私に着せようとして、背中の肌に、どす黒くなっている場所があることに気付いた。よく見ると、それは毒が回った血がついていたのだ。


 すぐにハドソンがあの丸薬(ポーション)を飲ませてくれたが……。


 私は三日三晩眠り続けた。


 もうその間、ギルとミルリアは、涙が枯れる程、泣いていたという。

 さらにその三日三晩の間に、責任を感じたレイノルドは、まさに驚異の力で回復。

 その後、私の看病に当たってくれた。


 そうしている間に、レイノルドの手紙は騎士団長に届き、アルセン聖騎士団は魔獣討伐作戦を完遂。

 発見できた冬眠中の魔獣は、すべて殲滅された。

 その上で、なんと我が領地へ騎士団はやって来て、村に魔獣対策を施してくれたのだ。


 村と森との境目に、尖った木の杭を並べ、防御壁を作り上げる。さらに雨避けをした上で、魔獣除けの銀の装飾も行ってくれた。この木の杭があるだけで、魔獣以外の害獣の侵入も防ぐことができる。実にありがたい対応だった。


 それだけではない。


 村の男性たちに、武器の扱いを伝授してくれた。

 それは実に実践的。

 つまり剣や槍ではなく、斧や鍬でどう戦うかを教えてくれたのだ。


 これもすべてレイノルドを助けたことへの御礼というのだから……。


 傷ついた騎士を助ける。その当たり前をしただけで、ここまでしてもらえるなんて。


「これだけでは足りないと思っています。団長から国王陛下に、この村へ騎士の屯所を作るよう、進言してもらっています。マトリアークの討伐は、この村で行われたことにしたので、国王陛下の許可もすぐ下りるでしょう。騎士の屯所ができれば、飲食店ができ、武器屋もできます。ちょっとした娯楽となる劇場などもできるはず。村はそのうち町へと発展するはずです」


 レイノルドにそう言われた私は、歓喜しそうだった。

 ギルに爵位を譲る頃にはこの村は、町へと昇格している可能性が高い。

 そうなれば今よりはもう少し、生活も楽になるはず。


 もう十分すぎる程感動する私に、レイノルドはさらなる提案をした。

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