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第三話

「転生したら、何もかも救われるのか?―異世界で手に入れたスキルは〈転生〉だった―」

第三話、どうぞ。

 リンヴィールおうこく……? いどりくにあ…………?


 聞いたことのないその地名が、口の中で数十回繰り返される。

 そんなところ、日本には存在しない。


 リューアは言った。「にほんって、なんでしょうか?」と。

 その二つの事実をつなぎ合わせると、自ずと導き出されることがある。


 日本など存在しない世界。そして、「リンヴィール」なる俺の知らない国が存在する世界。


 俺の知っている現実世界からかけ離れた世界。




 つまりここは――異世界、なのか?


「ニホン、というのがどこの国かは知りませんが、リョウさんはそこから来たんですか? その服も珍しいですし、リンヴィールからはかなり離れているようですね」


 リューアの問いかけなど、まるで頭に入ってこなかった。

 混乱極まる脳内の、思考の断片がこぼれ出る。


「い、いせ、かい……いせかい…………?」

「は、はい? あの、どうかしましたか?」


 いせかい……いせかい。いせかい、異世界…………?

 地面に手をつく。視界がぐるぐる回っていた。


 俺は、異世界にいるのか?


 


 ――なんで?




 今の俺は、ここが異世界であるという確信が欲しかった。

 そうすれば、なにか忘れていた大事なことを思い出せるような気がしたのだ。

 俯いたまま呻く。


「リ、リューア……、なぁ、教えてくれ……! おしえてくれ、ここは、ここはどこなんだ? 俺はなんで息をしてるんだ? なんのためにここにいるんだ? 誰が俺をつれてきたんだ!?」


 そこにいるのは十四歳の少女だということを忘れて、震えるように、されど狂ったように叫ぶ。

 リューアは何も答えない。きっと、こんな俺を怯えた顔で見ているのだろう。

 ここがどこか分からないというだけで、どうしてこうも不安になるのか。


 リョウという人間が、今なお存在しているここはどこなんだ?

 自分が生きる世界とは何かを知る。俺はそれを長い間、強く望んでいた気がする。


 教えてくれ。


 

 ここは本当に〈異世界〉なのか?

 現実か?

 夢なのか?

 天国か? 地獄か?


 血のように生臭い匂いが鼻を刺した。

 忘れられた記憶が、いま呼び起こされつつある。


 俺はなんでここに……?

 なぜだ、どこだ、誰なんだ?


 あぁ、誰でもいい。教えてくれないか。答えてくれないか?


 

 俺が抱いた、すべての疑問に――――。





『答えよう。世界から見捨てられし人間よ』

「あ……?」


 ふと、女の声が聞こえた――いや、頭の中で響いた。


『お前は〈現実世界〉に見捨てられたのだ。だからここにいる』


 現実味を一切帯びていない、人間ではない何かの声だ。

 その声は、蹲る俺の脳をいやというほどに真っ直ぐ貫く。


『だが人間、お前には覚えがあるのではないか? 己が何故ここにいるのか、ということに』

「……っ」


 何を言っているか全くわからない、きっとこれは気のせいだ、と切り捨てることもできた。

 だが胸のどこか深くで生じた確かな痛みは俺の頭を隅々まで駆け、忘却の彼方にある記憶を呼び覚まそうとする。

 しかしそれを拒むように、俺の口から低い声が出た。


「……知らない。分からない、俺は何も……!」


 甲高い、クラクションのような音が耳元で響いた。


「は……なんだよ、これ……?」


 白く眩い光が俺に突っ込んでくる。猛烈な速度で、一直線に。

 これは、何の記憶だ。

 俺が見た光景なのか――?


『弱いな、人間というのは』


 ぱちん、とどこかで軽やかに指が鳴った。

 同時に、何かが流れ込んでくるようだった。


「これ、は……」


 喧しい蛙鳴蝉噪。

 夏の空気を切り裂いて響くトラックのクラクション。

 

 回転する俺の視界。


 飛び交う人々の怒号。

 茜色に焼けた空。


 血で汚れてゆく目。


 糸のように細い呼吸。

 腹のあたりの燃えるような痛み。




 やがて途絶える意識。




「ぐぅぅっっ…………!」




 ――そして、幾度となく俺の死の記憶は繰り返された。

夕白颯汰です。

「転生したら、何もかも救われるのか?―異世界で手に入れたスキルは〈転生〉だった―」

第三話、読んでいただきありがとうございました。

最近更新が早くなってきて嬉しい。できれば他の小説と順番に、一日一話書きたい……。

そんな頑張り屋の作者を是非応援してやってください。

では、また次話で。

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