表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

第一話

「転生したら、何もかも救われるのか?―異世界で手に入れたスキルは〈転生〉だった―」

第一話、どうぞ。

 異世界に転生して英雄になれたら! って、つくづく思う。

 転生して目が覚めたら可愛い女の子に囲まれてて、理想の赤ちゃんライフを堪能して。

 最初から最強の剣と魔法をもってて、街で一番の剣士になって。

 何処かのすごい人に才能を買われて国を守る騎士になり、人類の敵と戦う。

 そして圧倒的な力を見せつけ、世界を救った「英雄」になる。


 誰もが一度は考えることだ。自分が生きる現実を捨てて、転生したら何もかもゼロから始める。待っているのは、英雄になるのが保証された一本のまっすぐな道。


 それが夢物語にすぎないとわかっていても、いつかきっと神様が、と願わずにはいられないのだ。


 俺もいい年して、まだそんなことを考えている。


 

 でも。

 向き合わなきゃいけないものが、犯してきた過ちが、俺には多すぎた。

 それらをすべて対処して、また進んでいくなんて出来はしないんだろう。

 今思うと、よく死なずにいられたな。




 俺は産まれたときから父親がいなかった。母親はいつも忙しそうにしていて、俺にかまってなどくれなかった。

 中学校の入学式から帰ってきたとき、母親の姿は家になかった。

 その日、母親が家に戻ることはなかった。

 次の日も、一週間後も、俺は一人で過ごした。

 

 家に残っていたなけなしの金で安い弁当を買い、何回か失敗しながら洗濯をして、誰もいない家に「行ってきます」を言って学校に通った。


 

 そうして一年の月日が経った。

 俺はもう、母親が帰ってくることはない、と悟っていた。

 同時に、母親はもう生きてはいないだろう、とも。


 それから俺は、底をつきかけていた金を使って、中学生の身だが裏路地の居酒屋で働かせてもらった。

 深夜を回ってから家に着き、湿ったベッドに倒れ込む。

 そんな日々が続いて、今や高校生になった。



 

 俺の歯車は、どこかのでかいやつが狂っているんだ、初めから。

 その歯車から生じたズレは、いま取り返しのつかないものになっている。修理して、新しいズレが生じて、また修理して、の繰り返し。

 


 そんなことを他人ごとのように考えていたら、視界が真っ白に染まっていた。

 はは、疲れがたまりすぎなんだな。ついに幻覚まで見るようになったぞ。


 ……い、おい! おまえ、そんなところでなにしてんだ! 危な――


 ほら、幻聴まで聞こえる。俺の体、思ったよりヤバいんじゃないか? 誰か気づかないのかな、俺が苦しいって叫んでることに。


 ファアアァァァァァァン。


 ん、何だこの音? かなりでかいぞ。幻聴って、こんなはっきり聞こえるものだっけ?


 ブロロロロォォォォォォ。


 なんかエンジンみたいに低い音だな。それもトラックの類か?


 ドンッッ。


 鈍い音だ。金属に人間がぶつかったような。


 ……あれ、視界が青一色に変わった。空みたいな青だ。

 と思ったら、今度は赤くなってきた。視界の隅からじわじわと、赤色が埋め尽くしてくる。


 キャアアァァァッッ!!!


 悲鳴? なんなんだろうな、さっきから変なことが続いてる。

 あ、なんだか動くものが見える。走っているのか、すぐに近づいてきて視界を肌色で占領した。

 どういうことだろう。なんでこいつは俺に近づいてきた? 俺は何もしてないぞ?

 

 ま、いちおう、何が起きているのか確認しておこう。

 

 ふんっ、と腹に力を込めて、起き上が――れない?

 なんだか体が思うように動かせない。

 しかも、体の所々が痛む気がするけど、気のせいかな。


 ……救急車、まだか!?

 ……はやく止血しろ!!


 そんな怒号が飛び交ったところで、甲高いサイレンが遠くから響き、同時に俺の視界が布のような何かで覆われた。

 そこで、いま俺がおかれている状況をはっきりと理解した。だが、そのときにはすでに、思考と意識が霞み始めていた。


 なるほど。


 俺は死ぬんだな。何も残せずに。愛されることもなくただ苦しむだけだった人生は、今ここで終わるんだな。

 ぶるりと体が震える。

 だが、死ぬとわかっても、俺の涙腺が緩むことはなかった。

 逆に、脳内ではその事実を受け入れ、どこか喜んでいた。


 転生、できるのかな。

 もしかしたら、異世界に転生してゼロからやり直せるのかな。


 俺の視界が、音もなく真っ暗になる。

 辺りから音が消える。


 一瞬の浮遊感の後、最期に心のなかで呟いた。


 

 あぁ、この世界は、なんて――――。

こんにちは、こんばんは。夕白颯汰ゆうしろ そうたと申します。

「転生したら、何もかも救われるのか?―異世界で手に入れたスキルは〈転生〉だった―」

第一話、いかがだったでしょうか。

豪快で新しい物語を紡げるよう頑張りますので、次話もお楽しみに!

(本作は、カクヨム様でも投稿しております。おそらく、そちらのほうが更新は早いと思います。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ