2, ペ天使ダニエルの窮屈
前回までのあらすじ!!
天界七天使に選ばれたぺ天使ダニエル!
不安と期待を胸に新たな仕事に挑む!!
どうも、ぺ天使ことダニエルです。
私は今とてつもなく窮屈な思いをしています。
それは他でもありません。
みなさんもご存知、満員電車です。
天界七天使とか関係ありません。
特権階級とかではないので、通勤には普通に電車を使います。
これは余談ですが、天界七天使の交通費は定期券によりとても安くすみます。
前回の顔合わせのときは自転車で行きましたが、鍵をかけ忘れてパクられました。
とても悲しい。
こうして私はむせかえるようなおじさんたちの香ばしい香りに包まれながら、職場へと向かったのです。
七天の塔の敷地に併設されているコンビニでココアを購入した私は、エレベーターでガブリエル様と会いました。
「ダニエルか。早いな」
「いえ、名誉ある議会ですから。少しで早く来て、話し合うことを整理しようかと思いまして」
「ほう、いい心がけだ。精進するといい」
嘘です。
電車の遅延で遅刻してしまうことを考慮して、早めに家を出たらなんか思いの外早くついたのです。
二人で会議スペースに入り、前回と同じパイプ椅子に座ります。
新聞を読みながらコロッケを素手で貪るガブリエル様を尻目にクサハエルにRINEを返します。
だって気まずいし。
スマートフォンに逃げるのが妥当だと思ったからです。
「ところでダニエル」
「え?あ、はい」
スマートフォンいじってるのは話しかけないで欲しいからなのです。
陰キャラをご理解ください。
「今回はそれぞれで天界の改善点を提示するわけだが、資料は用意したのか?」
「はい。パワーポインターで結構凝りました」
「そうか」
「はい」
「…」
え?終わり?
会話を続ける気がないなら話しかけないでほしいと思うのですが。
なんだろこの陰キャらしいコミュニケーション能力の低さ。少し共感してしまう。
そんなこんなして、ガブリエル様が2つ目のコロッ……メンチカツだあれ。を食べ終えたとき、会議が始まりました。
「サリエル様は欠席ですか?」
私の問いにミカエルが答える。
「いや、多分リモート参加だと思うよ」
「なるほど、だからモニターがあるんですね」
感染症が流行しているこのご時世、いい心がけだと思います。
「では、天界七天使の会議を始めたいと思います」
メタトロンの凛とした声が部屋に響き渡る。
「それでは、今回の議題は『天界の問題点及びその解決策』です。なにか資料をお作りされた方、もしくは意見がある方はいらっしゃいますか?」
「Zzz…」
ラファエル様は寝ています。
「お、星5来た」
なんかルシファー様ガチャ引いてるような。
え、こんな感じでいいの
仕方ありません、私から行きましょう。
「では私から」
そう言って席を立つ。
手元のタブレットからモニターに資料を映し出す。
「まず、天界における問題点の1つ目です」
「流石はダニエルだな。こんな資料まで…」
褒めてくれるのは喜ばしいですが、ガブリエル様の手が油でべったべたなのがとても気になるところです。
「こちら。自転車盗難に関する問題です」
天界における自転車盗難事件の統計データに切り替える。
「自転車盗難の被害者には私も含まれます。……前回の招集時、私のママチャリが盗難されたのですが、心当たりのある方はいらっしゃいますか?」
「あ、そういえばサンダルフォンがチャリを入手したとか言っていたわ」
「ミカエル様、それはいつのことですか?」
「昨日よ昨日。ダッサいボウリングピンのステッカーが貼ってあったわ」
「ダサくねえよ、顔面ぶん殴るぞお前、おいこっち向けよ」
「あ、やっぱりダニエルのだったのね!まったく、サンダルフォンったら」
「……ありがとうございます。後日サンダルフォン様を伺います。……では話を戻しますね」
そうして会議は順調に進んでいった。
と言ってもほとんど私が資料を読み上げるだけの時間でしたが。
「それで、他の方は何かありますか?」
私以外は何も考えて来なかったようです。
どうやら天界七天使というのはそんなに働かない輩が多いようです。
「では今回の会議のまとめです」
「クサハエル、私は心が折れそうです」
「まあまあ、もう少しがんばってみようぜ」
会議から一週間後の午後10時。
いつもの酒場でクサハエルに愚痴をこぼします。
「天界七天使なんていうから期待していましたが……」
「誰も会議に興味ないなんてなぁ…興醒めというかなんというか」
「冷静に考えれば、今まで天界七天使はなにか目立った活動はしていませんでしたね」
天界も人間界も似たようなものということなんでしょう。
普段の仕事は天界の管理統制。
完全週休2日制で、5日は七天の塔に出勤します。
とはいえど、書類ごとや雑務は役所の天使たちの仕事なので、私達はほぼ雑談してるだけ。
今日は麻雀してたし。
「こんなことなら前の仕事のほうがいいです」
「前の仕事……勇者召喚斡旋所か?まあ真面目だもんな、ダニーは」
「ええ。魔界を学んでほしいくらいです」
魔界とは悪魔たちの住まう世界。
何年か前諸事情であちらに居たのですが、ソロモンの悪魔の方々は真面目に仕事をしていました。
悪魔とは名ばかりのいい悪魔たちでした。
天界に戻る際にもらったメッセージ色紙は部屋に飾ってあるくらい大事にしてます。
まあ彼らの話はまた今度。
「なんだか真面目に仕事をしようとする私が異端者みたいでなんだか窮屈です」
「じゃあさ、ダニー」
「なんですか?」
「主神様に相談してみれば?」
「それもそうで……!?」
私の言葉は大きな音によって遮られてしまいました。
「今の音は!?」
まるで大きなものが爆発物で吹き飛ばされたような音に私は戦慄を覚える。
テロなどの時間でしょうか。
天界七天使として、事件を見逃すことはできません。
「クサハエル、あなたはここで待っていてください!」
「ダニー!ちょっとま…」
怪我人がいないことを願いながら、私は音の方に駆け出した。
同刻、主神ビル。
200階を超える超絶高層ビル。
光を反射する黄金の素材で全体を彩ったこの建物は周囲住民からは非常に疎まれている。
日中、シンプルに眩しいから。
いやガチで。
その最上階のスイートルームに住むのが我らが主神、ゼセウス様。
主神の容姿を簡潔に説明するのであれば松崎し○るばりに黒いマッチョ。
もしかしたら松崎しげ○より黒いかもしれない。
なにも主神は別にビルの最上階に住みたいわけではない。
信じられないほど異常に隆起した全身の筋肉から発せられる加齢臭と熱気によって、基本的に誰も近寄れないから隔離されているだけの哀れな男なのだ。
そんなゼセウスは筋トレ中、何かを感じ取る。
彼は凄まじい直感を持ち、時間をいち早く察知できるのだ。
「……責任と面倒の予感がする」
そう、彼が嫌いな言葉は『責任』なのだ。
責任などという窮屈はごめんだ。
思い立ったが吉日。
ゼセウスは勢いよくダンベルを投げ捨て、その背中の翼を大きく広げ、窓から颯爽と飛び立ったのだ!!
否、大きすぎる肉体でビルの壁を粉砕し、彼は大空へと飛び立っていった。
目的地は魔界。
ソロモンとお茶してるとか誤魔化せば責任から逃げられるだろうという実に愚かで短絡的な思考で、だ。
彼は逃げたのだ!
崩壊したビルの瓦礫が200階から天界に降り注ぐのを尻目に。
「天界トピックス」
悪魔はいいやつしかいない




