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天使ダニエルの憂鬱  作者: ササキハラウタヱ
ぺ天使ダニエルの憂鬱
1/3

1, ペ天使ダニエルの憂鬱

前回までのあらすじ!!

駅の西口に美味しい定食屋を発見したダニエルはスキップをしながら帰宅した。

しかしポストに投函されていた一枚のハガキが彼の運命を大きく変えてしまう。

天界(エンジェルランド)そこは天使たちの暮らす天上の楽園。

天使たちは気ままに暮らし、ららぽーとのカフェでお茶したり人間たちとさして変わない日常を送る。 






その天界でも一際目立つ白銀の塔、『七天の塔』。

天界の自治や管理、人類を導くなどの大義をもつ大いなる議会天界七天使(アークエンジェル)の象徴だ。


天使の中で主神に見い出され、選ばれた七柱の天使が今日、ついに七天の塔に揃っていた。




















自転車に鍵をかけただろうか、と思い出しながら私は七天の塔最上階の扉を開ける。


天使たちが無言で座しやや重苦しい雰囲気の中、空いている席を探す。


ちょうど一人の天使が席に座り、円卓の周りに用意された席は埋まった。


あれ?私の席ないんだけど…


それくらい用意してくれよなと思いながらも近くにあったパイプ椅子に座る。


「…全員、……集まったようだな」


全員が円卓の席につくと同時に閉じていた目を開け、そういったのは我らが大天使、翼天使ガブリエルだ。


「はい、では第5001期天界七天使(アークエンジェル)の顔合わせを始めましょう。司会はこの私、メタトロンがつとめさせていただきます」


全員が無言で頷き、物々しい空気で議会が始まる。


「じゃ、まずは順に自己紹介といくか。…俺はルシファーだ」


黒い翼と紫の髪が特徴の天使、ルシファーが立ち上がり、全員の顔を見渡す。


あれ?こないだニュースで主神に反逆して逮捕されてなかったかな。


気のせいかもしれん。わからん。


「我はガブリエルだ。前回に引き続き天界七天使(アークエンジェル)となった」


ガブリエルは水色の髪と爽やかなイケメンフェイスを持つ厳格な天使だ。


すごくかっこいい。机にからあげクンの容器が置いてさえいなければ。


「……サリエル」


サリエルは透過画像のように存在感のない天使だ。

白か灰色か透明か見分けのつかない髪色を持つ。


「僕はウリエルです。どうぞよろしくお願いします」


丁寧な挨拶をしたのは眼鏡が特徴のインテリ天使、ウリエルだ。

細身だが、存在感のある黒髪で、いつも分厚い本を持ち歩いている。重そう。


「ラファエルでーす、あたしは前回もいたからみんな知ってるよね~」


はい、かわいい。


ピンクの髪とグラマーな体の女性天使、ラファエル。

誰にも砕けた口調だが、愛想がいいので誰もに好かれる、そんな天使だ。


「私はミカエルです、精一杯頑張りますね」


こちらも女性天使、ブロンドの髪をショートにしているかわいらしい天使だ。


あれ?なんか全員が私を見ている。


なんかしたっけか?


あ、次は私か。


「あ、(わたくし)はダニエル、ダニエルです」


最後は私、天使ダニエルだ。

特徴という特徴のないなんの変哲もない天使だが、自分では筋肉がある方だと思う。


全員の自己紹介が終わり、視線がメタトロンに集まる。


「ではそうですね……まずは何を話し合いましょうか」


すかさずガブリエルが手をあげ、一人一人の顔を見つめる。


「一つ気になることが、ある」

「あたしもー」

「ええ、僕もです」


おそらくここにいる全員が気になっていることだろう。

それは私も例外ではない。


「………………多くない?」


無口なサリエルも困惑した表情でこの場を見渡す。


「………何故、8人いる」


ガブリエルの低い声で部屋に緊張が、走る。












「……つまりこの中に、主神から選ばれた訳ではない、偽者がいるということだな」


長い沈黙を破ったのはガブリエルだ。


「堂々とそんなことをできるなんて、ただのバカなのでは?」

「そういう貴様が偽者なのではないのか?ルシファー…いいや、堕天使ルシファーよ」

「なんだ翼天使様よ、前回も天界七天使(アークエンジェル)だったとは言えど、偽物はあんたかもしれないだろ?」


あらやだ、ギスギスしてます。ひょっとして彼らは不仲なのでしょうか?

あたふたしてるうちにルシファーとガブリエルの口論がヒートアップする。


いやいや、見ている場合ではない。


この状況において、私には一つだけわかることがある。


おそらく、おそらくだが天界七天使(アークエンジェル)ではないのは私だろう。


いや、どう考えたって場違いでしょう。


家のポストに入っていた大天使当選!のハガキは間違いだったのかもしれない。


ヒートアップする前に名乗り出ておいたほうが穏便に済むだろうと、発言のため手をあげる。


「…あのー」


「……もし偽者がいるのであれば、その者は死罪だろうな………どうしたダニエル?」


ガブリエルが眉を吊り上げ興味深そうに私を見る。


死罪。


あーね、なるほどね。


ははーん、


うん、死罪はいやだなぁ…


「あ、いや、なんでもないです、大丈夫です、大丈夫、はい」

「ほう、これは驚いた!ダニエル、ここに8人いても問題がないと?」


私の大丈夫、をどういうわけか間違って解釈したガブリエルが射殺さんばかりの目で睨む。


「しかしガブリエル様、噂に聞くダニエルのことです、なにか考えがあるのでは?」


ミカエルによればなにか噂をされているようです。

私にこれといった特徴はないのですが…

比較的あると思われるこの筋肉のことかな


「でも今回はたまたま8人だったんじゃない?そういうこともあるよ~」


とラファエル。


「前例が全てじゃないだろ」

「とは言えど、我らが主に確認をとる他なかろう」

「…………主神、話、聞かない」

「む、確かにそうだな……それは我も同意しよう」


ルシファーやガブリエル、サリエルも同意見にまとまった。


確かに天界七天使(アークエンジェル)を任命している主神に直接聞くのが一番良いのかもしれない。


が、サリエルの言うとおり主神は信じられないくらい大雑把な人で「よくわかんないけどいいんじゃない?」とか「いや、よくわからん。ワシに聞くな」と返答されるのがオチだ。

終いにはプロテインとかのおつかいを頼まれる。


そして私としては、主神に尋ね、「ダニエルに送ったのは手違いじゃ」と証言されてしまうのは避けたい。


なぜかって? 


死罪は嫌じゃん。


それはとても避けたい。痛そうだし。


嫌だなぁ、胃が痛い…帰ってちんすこうとか食べたい、もしくは寿司。スシロー行きたい。


「…ま、まあ、ここに8人いるということは、それこそが主神の意向なのだと思いますし、わざわざ主神のお手を煩わせるわけにはいかないと私は思いますし、ね?だいたい主神様がそんな間違いをするとも思えないというのが私の意見なのですけれども、ええ。はい」


焦りもあり早口でまくしたてたことで私は全員に注目される形になります。


まずいか…?


「…まあ、ダニエルの言うとおりではあるな」


ガブリエルの一言に全員が頷く。


「では8人制に反対意見がある方はいらっしゃいますか?」


メタトロンに反論する者はいない。

とりあえずは死罪にならなさそうだ。


あぶねえ。


「…じゃあ顔合わせは済みましたし、今日はひとまず解散しましょっか。みなさんまた明日からよろしくお願いしますね」



胃が痛すぎて全員が席を立つまで全く動けないまま時間が過ぎ、誰もいなくなってから帰路についた。




















「………じゃあそのまま8柱目の天界七天使(アークエンジェル)になったってこと!?」


解散後、私は行きつけの酒場、『天使のビッシュ』で友人と駄弁っていた。


「もう意味わからないよね。うん、私もぜんっぜんわからないもの」


彼の名前はクサハエル。下級天使だ。

(下級、と言っても人間界(ヒューマンテリトリー)における一般人である)

淡い灰色の髪をオールバックにしてるそばかすイケメンだが、あんまりモテない。かわいそう。


「じゃあダニーは下級天使じゃなくなるんだよね?異名は何になったんだよ」

「あー、そういえば聞いてませんでした」

「ダニーがあの『翼天使』様や『堕天使』様と同格なんて、笑っちゃうよなぁ」


天使には階級が存在する。

別に逆らえないとかでもなければそこまで格差もない。名前だけの名誉勲章だ。


下級天使は天使○○と呼ばれ、上級天使(天界七天使(アークエンジェル)や天界騎士団等)には天使の前に一文字付く。

私は一体何になるのでしょう。


「まあ筋肉はあるほうですし、筋天使とか力天使とかですかね」

「毎回筋肉はある方とか言ってるけど全然そんなことないからな?ダニーは割と細いくらいだぞ」

「ぶっちゃけなんでもええねん」

「そうだね、どうであれ君と僕は友達だから」


胃が痛い私に染みる優しい言葉です。


「ま、かっこいい二つ名になったら教えてやるよ」

「期待してないよ」

「ぬかせ」


そう言い放ち、私は酒場を後にした。





















「いや、ペ天使はおかしいやろがい」


後日、私の元に届いた書類には、驚くべきことが書かれていた。





『天使ダニエル、あなたを天界七天使(アークエンジェル)の一員とし、《ペ天使》の名を授ける。


主神より


PS.こないだダニエルが言ってた西口の定食屋、潰れたらしいよ、次の休みはやよい軒にしよう』




そう、あの定食屋が潰れてしまったのだ。


500円の定食でカツと明太ポテトサラダがつくお得な店なのだ。

カツは肉厚で実に食べ応えがあるし、鉱物のサラダなんていくらでも食べれる。

さらに味噌汁もつくのだ。これがインスタントではなく、しっかりこだわられている味噌汁で、豆腐にすら味が染みている。


ではなく、


ベ天使だ?ペテン師だろそれ、おかしいだろ。


私はおもむろにスマートフォンを取り出し、クサハエルに電話をかける。


「聞いてくださいクサハエル」

「どうしたのさ、ダニー」

「私、ペ天使だって」

「????」

「いやだから、ペ天使ダニエルになった」

「…?…うん?」

「わかった?意味わからんよね」

「ははは、ダニー、ドラッグはほどほどにね、僕は用事があるからこれで」


電話切られた。


錯乱してねえよ。

友人に対して酷いです。


「はぁ、まあ、明日から出勤ですね」


前の職場はある失敗でモチベーションが下がっていましたし、職替えには丁度いいです。


「ペテン師、ですか」


なんだかお前は天使の紛い物だ、と罵られているような気分です。


まるで学生のころに戻ったような、全部を否定されるような。


脳裏に母の最後の顔が浮かぶ。



「…頭を、冷やしましょうか」

「天界トピックス」

天使は勇者斡旋や転生者誘導と言ったら有名な仕事だけでなく、普通に飲食店や工場で働いているぞ!!!

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