表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/191

反省会

「それでは感想戦をしましょうか」


 模擬戦が終わって全員の呼吸が整ってから。

 改めてみんなを見渡せば中々に多くの表情が並んでいた。


 アーノイドさんはなんというかこの中で一番目を輝かせていたりする、納得のいく内容だったんだろう目を少年のように輝かせてくれていた。一番年上なのにね、強さの秘訣だよこれが。


 次いでわくわくしてる様子を抑えられないのはメルか。

 メルは多分ミラージュエッジのこととか聞きたいんだろうな。大丈夫? さっきの模擬戦内容覚えてる?


 カタリナは一際悔しそうだ。

 最後、相手にされなかったって点が一番引っかかってるんだろう。

 正直カタリナを相手にしてたら15分に間に合わなかったから、かなり存在感を示してくれたんだけどな。


 アルル様とトリアは……いや、そのこいつありえねーみたいな目をやめなさいっての。


「自分からいいだろうか」


「どうぞ」


「終わって振り返って考えるとベルガ殿は、強襲と暗殺を同時に設定していたんだなと思うのだが、これに違いはないか?」


「ええ、その通りです。具体的には城への強襲、どこかに追い詰めた上での不意打ちという設定でやってました」


 本筋としては暗闇からの広範囲魔法で強襲、乱戦を演出しながらミラージュエッジを利用した背後からの暗殺って筋書きを考えていたけど。

 見事に初手で返されたよね、そっちからブラインドって選択をしてくるとは考えてはいたけど本当にやってくるとは思わなかった。


「恐らく初手でベルガ殿の視界を奪ったのは正解の一手だったと思う。速攻を仕掛けたのも正しいと思う。だが、詰めきれなかった。何が不足していただろうか」


「そうですね、単純に手数が足りなかったと言えるでしょうか。あぁ、これは相手が俺でなくともです」


「手数って……でも、こっちで攻撃に回れる人は全員で向かったわよ? トリアはお姉様の直衛だったから無理だったけど。まさかトリアも攻撃になんて言わないわよね?」


 もちろんだ。

 視界が奪われていたとは言っても、トリアがアルル様から離れたらその瞬間終わりなのだから。


「この場合の正着から行きましょうか。正直に言えば視界を奪われた瞬間に負けたなって思いました」


「そ、それほどの一手だったのか?」


「ええ、だからこそ早くテレシアを抜剣したかった。そしてそれをさせないように動かれていたのも正解ですし、連携自体もお世辞抜きで見事の一言です。ですが、視界が晴れた時勝利を確信しました。その理由がアルル様がそこに居たということ」


「そこにいた……? え、あ、あのせんせ? もしかして」


「暗闇を初手に選んだ。ならばやるべきことは前衛と中衛、この場合はメルでしたが、三人で時間を稼ぎ、トリアが守りながらアルル様を戦闘範囲外にお連れすることが正解でしたね。その後トリアが戦闘に合流、四対一で俺の相手をするべきだったかと」


 そう言えば全員が口をぽかんと開けて呆気に取られた。


 気持ちはわからないでもないけど、だから二手足りないといったんだ。

 アルル様をどこかに隠すこと、トリアが攻撃に回れないことの二手があれば勝利条件は達成できただろうし、もしかしたら俺に勝てていたかもしれない。


「つまり、あのミラージュエッジ、でしたか? あのとんでも魔法に負けたわけじゃない、と」


「とんでも魔法って……いえ、そうですね、アルル様の仰る通りです。アルル様かトリアがあの戦闘を指揮する立場にいたのなら、攻める、守る以外の選択肢。相手にしないというものを選ぶべきでした。トリアは後で個別に反省会な」


「う、うぅ……はい。反省してお待ちしています……」


 アルル様がその場に残るという選択は非常に強気なものだ。

 時見の光景を軸にしたが故にとも言えるが、結果的に博打性が高いと言えるだろう。


「とはいえこれはそもそも論というものです。戦うと決めたのならもっと取るべき方法や、改善すべき点はあるでしょう。メル、たとえば何かわかりますか?」


「実験不足で一度応手を間違えちゃったことだよね?」


「いいえ。全体的に取るべき方法として、俺に張り合うのではなくブラックカーテンのように行動阻害系の魔法で攻めてきたほうがよかったでしょう。ブッシュファイアに関してはお見事の一言ですが、無属性魔法の選択肢を増やすべきですね」


「あ……そっか、そうだよね。あたしが決めなきゃなんて、なんで思っちゃったんだろ」


 それこそ気持ちはわかるというものだ。

 ついつい挑戦したくなるのはとても共感できる。


「カタリナは先を読みすぎましたね」


「土壁で邪魔されたとこと、フラッシュで見失っちゃったとこよね? 後から考えてもないなって思うもん、反省してる」


「であれば言うことはありません。しかし、アーノイドとの即席連携にしてもそうですが、強くなりましたね、カタリナ。先生としては鼻がものすごく高いです、ありがとう」


「そんっ!? い、いいのよ! もっと褒めなさい!? あぁちがっ! も、もうっ! もっと色々教えてほしいんだからね!?」


 おーおー顔を真っ赤にしちゃってまぁ。


「最後にアルル様」


「言わずともがな。自分を犠牲にしようとするな、ですわよね?」


「はい。そうすべき時、場面は存在するのでしょう。しかし、先の模擬戦はそれこそアーノイドやカタリナを犠牲にしてでも逃げるべき場面でした。胆力こそ素晴らしいと申し上げますが、心が強い選択とは言えません。どうか、意地汚くも生き延びようとしてください。でなくば守りがいがないというものです」


「……はい。その言葉、しかと胸に刻みますわ」


 であればよし。


「今はこうして前陛下が稽古の時間を作って下さってますが、やはり以前と比べると稽古の時間は減るでしょう。その分、密度の高いものにしたいと思いますので、各自今日の内容をもう一度振り返り、次に臨んでくださいね」


「はいっ!」


「では、今日はこれで終わりです。整理体操をして、お仕事に向かいましょう。ありがとうございました」


「ありがとうございました!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ