パーティ戦
「さて、それでは改めてパーティ戦についてのお勉強です。ではメル、以前お話したことを覚えていますか?」
「うん。パーティ戦にはセオリーがある、って話だよね? そのパーティならではの合理があるって」
「よくできました。そう、セオリーがある。あの時は私という一人の敵を皆で力を合わせて倒しましょうという形です。そして公開訓練の時も同じ形でした。今回は更に一歩踏み込んだものを学んで頂きます」
元々の授業内容は基礎トレーニングがメインだったが、折角の機会だからね。
アーノイドさんも居るし、形にすらならないってことはないだろう。
実際話し始めた瞬間にアーノイドさんはやることを察したのか、扱う戦力を確認し始めた。
「先生? 一歩踏み込んだものって、連携訓練をするの? 正直、まだやったことないし、どうすれば良いのかなんてわからないわ。座学でもまだ教えてもらってないし」
「その不安を持つことは素晴らしいことですよ、カタリナ。連携とは当たり前ですが一人で練習できるものではない、かと言って多く機会を持てるものでもない」
慣熟のための機会は中々作れないものだ。
騎士団や魔法兵団と言った組織同士で考えれば可能かもしれないが、それはある程度型にハメたものを学び確認すると言った意味合いを抜け出しにくいし、個と個の繋がりを高めるものにはならない。
「実際に起こり得ることとして、その場に集った者だけで即席のパーティと言える協力関係を結び、共闘することだってあります。その時に自分がいるから大丈夫なんて慢心は毒にしかなりません」
「う……先生? それって私を揶揄してる? ごめんなさい」
「そのようなことはありませんよ。しかし、カタリナはもう近衛兵団長です。改めてしっかり考え直す機会にはして下さいね」
「……うん。わかったわ、ありがとう」
ほんと素直になっちゃってくれてまぁ……先生、涙が出そうだよ。
いや、茶化している場合じゃないな。
「ではベルガ? 今から一体何をするのですか?」
「まずは一度体験して頂くことが手っ取り早い。今から勝利条件と敗北条件を定めた、私との模擬戦を行います」
「……その、邪推ではあるのですが。先程の仕返し?」
「そんなことありませんわ~」
「っ……もうっ!」
仕返しなんて思ってませんとも。
けどちょっと怖い目には合ってもらおうかなくらいには思ってる。
「師匠? それでその、条件っていうのは何ですか?」
「そうだな。そっちの敗北条件はアルル様がダメージを負うこと。勝利条件は一定時間……んー15分でいいか。15分間アルル様を守り切ることだ」
「守り切る……それは師匠の攻撃から、ですよね?」
「もちろんだ。心配しないでいい、万が一にも酷い怪我をさせるつもりはないから」
重ねていうが、怖い思いはしてもらうけどな! 安心してる場合じゃないぞ? トリア。
「委細了解した。作戦会議の時間を頂戴しても?」
「構いません。ですが、ちゃんと考えて下さいね?」
念を押してそう伝えると。
「無論だとも。正直、少し舐めていた気持ちがあったことを否定できない。ベルガ殿は……本気で皆様を強くしようとしているのだな」
なんて、引きつった顔をしながら言われてしまった。
当たり前だよなぁ? なんて思うと同時に、この模擬戦がどれだけ大変な物になるかをちゃんとわかってくれているようで一安心だ。流石のアーノイドさんである。
「アーノイドさんが居てくれて助かりますよ」
「一助になれたのなら幸いだ。しかし、自分もしっかり学ばせて貰うぞ」
言いながらアーノイドさんは皆を引き連れて離れていった。
さてさて、どんな話をするのかね。
「テレシア、顕現」
「はいっ! お呼びですかご主人様!」
離れきったのを確認して、テレシアを喚ぶ。
相変わらずニコニコ、しっぽブンブンと可愛いやつ。
「えへへ」
「――っは」
無意識に頭を撫でてしまっていたぞ? くそう、やっぱりこいつは魔性だよ。
「メルの調子は?」
「わたしのことだけをお話したいです! ご主人様!」
「今度沢山な。それで?」
「……はい。魔力の過剰消費は中々改善できておりませんが、それでも瞬間詠唱をご主人様とは別ルートで習得したかと」
今はマジだよとしっかり空気を読んでくれたテレシアが教えてくれる。
そっかぁ、第四の詠唱方法、見つけちゃったか。
「やっぱ鬼才って思ったのは間違いじゃなかったな」
「わたしも驚きました。ご主人様はあれから高速戦闘中における陣魔法の発動について教授されておりませんのに……自分で見つけるとは」
気になるのは別ルートって部分だけど、恐らくは。
「遺産魔法から着想を得たんだろうな。環境内に自己魔力を散布させるルートか」
「仰るとおりです。あるいは、先の魔人化で気づいた可能性も」
なるほどね。
最近やけにうずうずしていたのはそれを話したかったんだろうな。
「テレシア」
「はい」
じゃあ、仕方ない。
アーノイドさんがそれを作戦に組み込まないわけもないだろう。
「多分起動する。任せたからな」
「お任せ下さいっ! ご主人様っ!」
まったく、どいつもこいつも。
こっちの想像と想定を軽く超えてくれるよ、嬉しい限りだ。




