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公開訓練、あるいは公開処刑

「はぁああああっ!!」


「――解析(アナライズ)


 第一手はビスタの突貫だった。

 訓練場で見た時よりも明らかに疾い、見れば脚と腕にそれぞれ敏捷性向上(アジリティ・ブースト)膂力向上(パワー・ブースト)の魔法を受けている。


「御指南っ! 頂きますっ!」


「上等っ!」


 中々どうして。

 ちゃんと魔法使いとの連携訓練は普段からしているんだろう、実に身体能力向上(バフ)へと慣れている。

 急激な身体の感覚変化に対応できているのがその証明だ、それも二つ同時に。


 ビスタに続くヤツはいるがまだ遠い。

 一人突出してきた形だ、こりゃ思い切った作戦をうってきたな。


 ……生粋の騎士剣術者であるビスタなら。


「チェストォオオッ!!」


 曲閃、って言ったか。

 剣閃を途中で曲げるなんて、いわゆるありえない技術を仕込んだV字斬り。


「ッ!?」


「読み抜けってやつだよ」


 間合いに入られるその少し前で。


 持っていたショートソードをぶん投げる。


「お、おおおおっ!?」


「遅い」


 振り上げていた腕を降ろして、俺が投げつけた剣を打ち下ろしたビスタではあったが、間合いの外へいた相手への対応は遅れる。


 そりゃそうだ、剣閃を曲げようがどうしようが、V字斬りは二手一組の剣技なんだから。


「ぐっ……ぅ」


「まず一人」


 ビスタの持ち手を蹴り、得物を手放させそのまま当身。


 残るは九人――っと。


「ひゅぅ……遠慮のない炎弾(ファイアボール)ですこと」


 崩れ落ちていくビスタの背後から飛んできたのはファイアボールの雨だ。

 しっかり中級から上級の威力を感じさせる辺り、思い切りが良いというか、ビスタ君捨て駒にされて可哀想というか。


「ち……」


 投げた剣は拾えない、そしてビスタに続いていた騎士たちが俺を囲むように位置を取ってきた。

 パーティ単位での動き方としては悪くないどころか、素晴らしいね。


 大剣を持つアーノイドさんは俺の目の前、左右に槍持ちが一人ずつ、後ろにショートソード持ちが一人。


 魔法使いの護衛、中衛抜きの布陣ってのは相当強気だが、なるほど後衛狙いにはいけねぇや。


「ふ、どうした? このままでは期待外れだぞ?」


「ビスタ君に後で謝っといた方が良いですよ?」


「一番槍の誉れというやつさ。かかれっ!」


 ったく、シンキングタイムは貰えないか。

 仕方ない、前後は牽制、本命は槍の交叉だろ? 


「ベルガ殿!」


「覚悟っ!」


 はい正解っ! 受けて立ってやるさ!


 左右の踏み込みは同時。

 当たり前に両方を一緒には見れないから音で判断、気配でヤマカン!


「っ!?」


「そうだよ、なぁっ! 利き手側からくるよなぁ!!」


「くおっ!?」


 ここだと身体を一歩退けば右側からの突き、槍の穂先が視界に入る。

 もちろん引かせてなんかやらない、腕を伸ばしきっていないのは流石だけど、ちょっとこの槍借りますよっと!


「ななっ!?」


「はぁい! 一名様ご案内っ!」


「なんっ――でぇ!?」


 右手で槍の刃元、口金という刃を固定するための部分を握って突きの勢いをそのままに、左側へと騎士君を投げ流す。


 槍、ゲットー!


「ショートソードマンくんおまたせっ!」


「ぬ、くっ!!」


 身体を翻して後ろのショートソードを持った騎士へと突貫じゃい!


 猶予は三手、それ以上はアーノイドさんがまずい。


「一つ!」


「ち、ぃっ!」


 間合い戦は槍のが強いぞ? けどお見事、中々良い受け流し。


 でも騎士剣術は受けたら弱いぞっとぉ!


「ふたぁつ!」


「なっ!?」


 一手目の突きから更に踏み込み、石突きを使って相手のショートソードをかち上げる。


「みっつ!」


「ぐふっ……」


 そのまま槍をお空にポイ捨てして回し蹴り、いい感じに決まったね。


 ギィンと音を立てて手元から上空へと離れたショートソードと槍を落ちる前にキャッチして。


「はぁい! 完全詠唱は頃合いか!? やらせねぇって! 爆発付与エンチャント・エクスプロージョン! 死ぬ気で避けろよ!! くらえぇええっ!」


「――っ!?」


 槍へと爆発効果を付与して魔法使いたちへとぶん投げる。


 おー……たーまやーっと。

 バカだなぁ、後衛だからって気を抜きすぎだよ。

 騎士たちをちょっとは見習った方が良いんじゃない?


「期待通り、でしょう?」


「あぁ……憎たらしいほどにな」


 さてさて仕切り直し。

 ダメージレポートはどうか、とりあえずビスタ君とショートソードの騎士くんはおねんね。

 魔法使いは……へぇ? 誰も起き上がらない? 確かに結構な魔力を注ぎ込んだけども。


「……いや」


 一人寝たふりしてやがる。

 こんな場にまで来て、よく勝負を汚そうなんて考えられるな。


 クソヤロウめが、好都合ってか? ろくでもないこと考えてんだろどうせ。

 寝たふりしながらバフでも撒くか? 身体能力向上の対象複数指定は高等技術だし魔法陣も浮くぞ? バレないわけが無いだろうに。


「まぁいいさ……乗っかったのは俺だし、最後まで付き合ってやるよ」


「そうしてもらおうか、剣聖殿」


 残るは、アーノイドさんと槍兵一名に無手の兵が一人。


「二人共下がれ」


「……はっ」


「へぇ? タイマン、ですか」


「無駄な損害は嫌いでね。ここからは、自分一人に付き合ってもらおうか」


 ……あぁ、嫌な気分なんて吹き飛んだ。


「やっぱ……アーノイドさん、強いわ」


「光栄だよ。以前の続きを、今ここで」


 感じるのは強者の気配。

 加えて何らかの覚悟が決まっている、こういう相手は実力以上のものを簡単に出してくる。


「ご指導、願おうかっ!」


「はっ! こちらこそだよ! アーノイド!」

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