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ベルガ VS カタリナ 前編

「よろしくおねがいします!」


「よろしくおねがいします」


 向かい合って得物を構え合う。

 カタリナ様は当然レイピア、愛剣ではなく俺が渡した魔封じのもの。


 対する俺はショートソード。

 流石にテレシアを抜いてしまっては勝負にならない。


「もうちょっとリラックスして下さい」


「わ、わかってるわっ!」


 余計ガチガチにならないで下さいカタリナ様。


 気持ちはわからないでもないけどな、模擬戦はこれで二回目だ。

 一回目のヤツは存分に、わかってもらった形になったし、緊張しないわけがない。


「ふふ」


「な、何笑ってるのよ! おかしい!?」


「いえ、そう肩肘を張られるお姿を久しぶりに見たな、と」


「う……わ、悪かったと思ってるわよ」


 随分と素直になってくれたもんだと思う。


 緊張に身体を強張らせている相手に思うことじゃないかも知れないが、ちゃんと実力差を感じて、怯えられるようになったことは紛れもない成長であり進歩だ。


 もちろん、こうやって素直にそれを示してくれることも。


「良いですかカタリナ様。私はそうですね、3割の力でお相手します。魔法は使いませんし、利き手のみで攻撃します。足元に描いた円からもでませんし、自分から仕掛けもしません」


「わかってる」


「しかし、その中で全力を出します。胸を貸すとは言いません、今のカタリナ様なら少なくとも勝負になる条件ですからしっかり勝ちに来て下さい」


「わかってる……だから、緊張してるし、怖いの。先生の期待が、すごく伝わってくるもの」


 期待、期待な。

 まさしくその通りだ。

 簡単に乗り越えさせるつもりはないけど、乗り越えて欲しいと思っている。

 いつカタリナ様相手に本気の全力を出せる日が来るのか、少しでも掴める機会なのだから。


 見学しているトリアは、自分ではまだその域に至れていないことをちゃんと自覚し、その悔しさを乗り越えた表情で、この模擬戦を記憶に焼き付けようという意気を示しているし。


 メル様だって少しでも自分に活かそうと集中力を高めている。


 アルル様はぱっと見ならワクワクしてるって感じだけど、腹の中で何を考えておられるのやら。


「安心してもらえるだろう言葉は?」


「……要らないわ。期待を受けるなんて数え切れないほどあったけど、こんなにも応えたいと思ったのは初めてだから……ちゃんと、自分で乗り越える」


 話している内にカタリナ様の身体から余計な力が抜けていくのがわかる。


 いい集中力だ。

 やっぱりカタリナ様の武器、その一つに相応しいと思えるほど。


「トリア」


「はい。では両者尋常に勝負――始めっ!!」




「はぁっ!!」


 身体強化抜きのカタリナ様はまだ突進突きを使えない。

 とは言えショートステップからの突き入れはやはり目をみはるものがある。


「いい突きです」


「ありが、とっ!!」


 ショートソードの間合いギリギリを出入りしながらの連続突き。

 剣で弾くことはせず、なるべく身体に引きつけギリギリの位置で躱す。


「まずは基本を披露して頂けると」


「むしろ基本を教えつけられている気分よっ!」


 引きつけ、躱す。

 これはちゃんと相手の剣閃を捉えているという証拠だ。

 カタリナ様からすれば、対して対応に困っていないと言われているようなものだし、若干悔しそうな表情が伺える。


「応じましょうか?」


「応じさせるって言ってんの!」


 わかってる。

 選んで弾いた先に二の矢が待っていることくらい。


 でも手加減はしても、手を抜くつもりはないから。

 簡単には応じてあげる気はない。


「そこっ!」


「――っと」


 上半身に突きを集めて、不意にリズムを変えた上での軸足狙いの突き。


 セオリーといえばそうだが、それだけに応手が難しい。


「っ!?」


「俺じゃ無ければですがっ!」


 セオリーに反して踏み込みながら回避する。

 描いた円ギリギリまで入り込み、突きに突きを合わせる、が。


「それを待ってたのよ!!」


「おおっ!?」


 やるじゃんと思わず素で言いそうになった。

 突き返しを読んでいたんだろう、すっと腕を引きながら俺の突きを躱しながらカウンターに対するカウンター。


「読み筋っ!!」


「そのようでっ!」


 突き交わしという立派な技術だ。

 そう、技術として確立されたものである。

 トリアとこそこそやってたのはこれか? 良い着眼点――


「――でしたね!」


「嘘でしょっ!? っく!」


 伸び切った腕を払う。

 当然だ、確立されている技術には応手が必ず用意されるのだから。

 読み筋とは最後まで通してこその手筋だ。


「は、ぁ……はぁ」


「あと一歩、でしたね」


 あるいは後三手。

 しかしながら咄嗟に突き抜けへと切り替えたのは見事の一言。


 こちらからは仕掛けないと言った以上、俺はこの円から出られないから、距離を取るという仕切り直しは十分に正解と言える。


「ふ、ふぅ……そう、ね。ほんとはもう少し、詰められたんだけど。やっぱり、緊張してた」


「頭から吹っ飛んじゃいましたか」


「ええ、恥ずかしながら、ね」


 照れつつも悔しそうだ、ってことはほんとに考えてたな。

 正直に言えば、今の段階であの先を描けるってのは相当なんだけど。


「でも、ね」


「はい?」


 そこで。


「本当に、見せたかったのは……コレ、なのよ」


「っ……」


 空気がピシリと固まった。

 

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