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鉢合わせ

 何気に王都へ来てから街を散策するってのは初めてだ。

 というのも剣聖称号の授与式が終わってから始まった生活では、基本的に必要な買い物だなんだはシェリナがやってくれていたから、街を歩く機会ってのが登城と下城だけだったんだよな。


「王都西部は職人街、だったか?」


「はい、騎士団で使う装備なんかは店の人が運んでくれてましたし。ボクもあまり行ったことがないんですけど」


 王都は区分けというのか、西部は建造、建築、加工、鍛冶と言った仕事をする職人が住んでいる地区になっている。

 思えばこの石畳の道にしても、西部にある職人ギルドが一丸となって手掛けたもので、如何にして交通の便がよくなるかを追求されたもの。


「個人工房なんかはもう少ないって聞いたけど。リアって人は一人でやってるんだな」


「さっきの人の話を真に受ければそうですね。今の時代、大体の職人さんはギルドに加入されているものなのですが……気難しい人なのでしょうか?」


「どうかな? 武器屋のおっちゃん曰く、まだ若くて未熟って話だし。もしかしたらまだ認められてないだけかもしれないけど」


 そういいながらもそのセンは無さそうだと思っていたりする。


「でも、そんな未熟な人が作ったランスを買ってるじゃないですか。使うんですか?」


「馬を戦闘で乗りこなすことは出来ないし。騎兵ではなく歩兵としての立ち会いでランスなんて現実的じゃないからな。使うつもりはないよ」


「ほんとですか?」


「ほんとだって。何度か重さを活かして訓練に使えないかなって触ったことがあるけど、まともに使えた試しがない」


 だからその疑ってますって目をやめろ。お前の中で俺は一体どういう存在になってるんだ。


「ばけもの?」


「察して正直に言わなくていい。人間離れを自覚はしてるけど、辞めた覚えはないから」


 最初に会った時は俺を見ただけでカチンコチンになってたくせにこいつってやつは。


 構わないし、こっちのが楽だからいいんだけどさ、そういう態度が男だと勘違いさせたってのに……いかん、今日はお詫びの気持ちだぞ、そうとも俺が悪い。


「じゃあなんで買ったんです?」


「あぁ。ランスは見ての通り円錐型の槍だ。鋭く尖った先端から内側に反るように曲線を描いた傘のような形をしているわけだが、このランスの曲線。極めて完成度が高い」


 それこそベテランの鍛冶師どころか、今まで見たことのあるランスの中で一番と言えるほどに。


「刺しやすく、抜きやすい。これはランスの絶対条件にして一番重要と言える要素だ。全体を見れば先端の鋭さは甘く、重さのバランスも悪いがこれは逸品だぞ? 付与魔法で重さを整えてから、改めて練習し直してみようと思ってな」


「師匠がそこまで言うならすごい逸品なんですねコレ。でもやっぱり戦いには使わなくても勉強というか、嗜むことはするんですね」


 そりゃもう当たり前というか。

 剣ほど一生懸命になるつもりはないけれど、ランス以外にもメジャーな武器は触ってるし。


「まだ恐らくってだけだけど、剣を打つことよりも加工技術に優れているんだろうな。残り二本のマインゴーシュは完成度が高くいいものだけど、トリアには合っていない。だからこれを打ち直してもらえないかと思ってな。腕が確かなら専属の鍛冶師にか加工師になってもらえないかと交渉するつもりだよ」


「け、剣聖の専属をこんなついでみたいに決めようとしないでくださいよ……」


「俺の専属なんてトリアにいい武器探すついででいいんだよ」


「だからっ! もうっ! 返事に困ること言わないで下さいっ!」


 へーへー、朴念仁で申し訳ないですっと。

 でも朴念仁って無愛想な人の事を言うんだよな? 俺ってそんなに愛想ないかね? むむむ。




「っと、このあたりのはずだけど」


「あっ、師匠。あそこじゃないですか? ほら」


 お? どれどれ……確かに聞いた住所はあそこだけど。


「……工房?」


「い、一応煙突があります、し? 多分、ここだと」


 ほんとにぃ? なんて思わず訝しんでしまうほど、まぁってしまえば。


「ぼ、ぼろぼろ、だな?」


「は、はい……」


 ここでそんなこと言っちゃダメですよなんて一言を期待していたんだけど。


 取り繕うことが出来ないほどにボロだった。

 鍛冶工房なのに木造ってダメだろう、勝手に命がけの仕事にしちゃいかんでしょ。

 あぁむしろ換気に気を使っているの? その剥がれた壁は。炎の温度とか大丈夫?


「し、師匠……?」


「ま、まぁ見てくれはアレだけど、中はしっかりしてるのかもしれないし? と、とりあえすお邪魔してみるか?」


 一縷の望みをかけて近づいていけば。


「ありがとうございましたぁっ!」


「こちらこそお引き受け頂き感謝申し上げます。急ぎは致しませんので――って、あら?」


「え? カタリナ様?」


 先客が居たらしく中から建物とはまるっきり真逆の綺羅びやかなドレスを着たカタリナ様が出てきて。


「公務と仰られていましたよね? どうしてここに?」


「奇遇ですね二人共、御機嫌よう。どうしても何もここは――」


「あの、カタリナ様?」


「はい? どうされましたかベルガ様」


 色々疑問はあるんだけどとりあえず。


「やっぱりドレスよりも鎧姿のほうがお似合いですね?」


「どっ――どういう意味よっ!! ……はっ!?」


 あぁ良かったカタリナ様だ。

 なんか気持ち悪いくらい外面モードだったから不安になったよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 朴念仁というよりは、慇懃無礼気味?そうでもないか。 でも鈍感系主人公ではあると思いまする。
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