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ベルガ VS テレシア 前編

「ご主人様! こちらです!」


 久しぶりに一人で、と言えば案内してくれているテレシアに悪いか。


 最近マジックアイテムの作成に手持ちの素材を使いすぎたし、残ったものもアルル様の武器をってことでリアに渡してすっからかん。


 素材を収集すると許可を貰って、テレシアに感知を頼んでベロニカ国内をあっちにいったりこっちにいったりとまぁ忙しい。


「何の反応があった?」


「ハーブ類です! あ、美味しそうな野生動物もいますよ!」


「あいよ。じゃあ、ちょっと狩って来てもらっていいか? ハーブを余分に採っておくからメシにしよう」


「かしこまりましたっ! 行ってまいりますっ!」


 ものすごい勢いで狩りに向かったテレシアを見送って。


「ふぅ、元気なようで何よりだ」


 今日で三日目になるか。

 順調に素材集めは進んで、残るはメルの宝石剣に使う分を調達するくらいだ。


 テレシアは久しぶりの二人きりが嬉しいのか出発してから尻尾をずっと振っている。


 正直俺も嬉しい、というか。

 やっぱりずっと二人でいることが普通だったから、落ち着くというのが正しいか。

 今の暮らしを悪いものじゃないと思っているし、ベロニカで出来た色んな人との関係を煩わしく思っているわけじゃないのだけれど。


「贅沢な悩みを抱えるようになったもんだ」


 思わず自分に苦笑いしてしまう。

 煩わしくなんて遠回りな言い方をせずとも、一言気に入っているなんて言えばいいのに。


 賢者になるため旅をして、うっかりで剣聖なんて呼ばれるようになった男が、なんの因果か神様を名乗ることになった。


 あの人を超えられたらいい。

 そんな思いは今もこの胸にある。


 だと言うのに。

 仮にベロニカを滅ぼしてしまえば、あの人を超えられた証明となると言われても出来なくなった。


「弱くなった。そう思うのに、悪くないなんてな」


 空を見上げれば憎たらしいくらいの快晴で。


 テレシアといるからだろう、自分に染み付いた自分ってやつを思い出してしまうからだろう。


 ……あぁ、そうか、そうだな。


「ごっしゅじんさまぁ~! お待たせ致しました! 中々食いでが――」


「テレシア」


「――あぁ……愛して、頂けるのですね? うれしい……うれしゅう、ございます」


 どさりと地面に置かれたブタが一瞬で燃え尽きた。


 焔の奥に揺らめくテレシアの表情は、これ以上なく恍惚としていて。


「ヤろうか」


「はい……はいっ! 待ち遠しゅう、ございましたっ! ご主人様っ!!」


 すっかりご無沙汰だった殺し愛。


 今の俺が、強くなったのか、弱くなったのか。


 はっきりさせようじゃないか。




「あはぁっ」


 テレシアが爛々とストレージから取り出したのは……それから来るかの蛇腹剣。


「随分我慢させちまったようで」


「いいんです、いいのです……これからたっぷり、愛して、頂きますからぁっ!!」


「っ!」


 刃のついた鞭なんて言われる剣で、俺が再現できなかった剣。


 初手からそれを使ってくるなんて、大層溜まっていたらしい。


「ほら、ほらぁっ! ご主人様っ! コレ! 大好きですもんねぇっ!!」


「お前にしてもらうなら、なんでも大好きだよっ!」


「あははははっ!!」


 殺意マシマシの先端が向かってきた。


 蛇腹剣の回避は大きく避けるが基本だが、そうすると。


「だよなぁっ!!」


「ですよぉっ!!」


 ぐりんと避けた俺を追尾するように矛先を変えてくる。


拘束(バインド)!」


「っ!?」


 テレシアの顔色が変わる。

 ここでの最善は反射系の魔法を使って、蛇腹剣に伝わっている力の方向を変えることだが。


「そんな、ものっ!!」


 流石のテレシア、刃を絡め取ろうとする拘束の合間を縫うように刃を自在に操ってくる。


 あぁ、そうだな、そうすると、そうしてくれると信じていた。


「読み筋、ってな」


「ごしゅ――ちぃっ!」


「逃さねぇよ! 火柱(ブッシュファイア)!!」


「きゃあっ!」


 失態をワンテンポ遅く悟って飛び退こうとした先へと火柱を発生させる。


 抜けられるなら抜く。

 それはつまり蛇腹剣を使い続けるってこと。


 正解は、さっさと次の武器を持つことだったなテレシア。


「うおおおおっ!!」


「まだ、まだぁあっ!! こんなので、わたしは満足しませんよぉっ!」


 炎に巻かれたテレシアへと踏み込むが、鎮火させることなく燃えたままテレシアはストレージから。


「刀っ!?」


「教えて差し上げますっ! これが瞬閃ですっ!!」


 抜刀術の構え――くっ! と、まれっ!!


「てやぁあっ!」


「ち、ぃっ!!」


 いってぇ……右腕、がっつりいったぞこれ。


「はぁっ! はぁっ!」


「ぐ、いつ、つ……」


 プスプスと身体を焦げさせながら残心をこなすテレシアへと飛びかかりたいところだけど……やばい、右手に力、入んねぇ。


 回復するか? 攻撃するか?


 いや。


「遅いっ!!」


「っ!?」


 判断で負けた。

 テレシアが早かった、あいつ、刀をこっちに投げ――


「こっちですよ! ご主人様っ!!」


「な――」


 投げたと思ったら、すぐ間近で。


 こいつ、今のは瞬歩じゃねぇか!!

 あーもうっ! くそがっ!!


「最高すぎるよ! お前はぁっ!! 氷結壁(アイスブロック)!!」


 アイスブロックを自爆に近い状態で使った。


 テレシアに距離を取らせるには、これしかない。


 ……待て、これしかない?


「読み筋」


「や、べ――」


 テレシアが装備していたのはガントレット。


「腑抜けましたね、ご主人様」


 左手で氷の壁を砕き、そのまま右手が。


「が、はっ……」


 俺の腹に深く突き刺さった。

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